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映画『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』公開記念インタビュー

「ファンはメンバーの一人のようなもの。顔も大体覚えてます」純烈・酒井一圭さん×白川裕二郎さんが“推し”とファンの理想の関係を考える

  • 武田由紀子

2025.08.30

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純烈 白川裕二郎さん 酒井一圭さん

日本では知らない人はいない“スーパー銭湯アイドル”こと純烈。老若男女に“推し活”という言葉を定着させ、2018年にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たし、現在7年連続出場中。今年3月末にメンバーだった岩永洋昭さんが脱退し、現在は酒井一圭さん、白川裕二郎さん、後上翔太さんの3人で活動をしています。純烈初のドキュメンタリー映画『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』 が公開されます。公開に先立ちリーダーの酒井さんと白川さんにインタビュー。ご本人たちも驚いたという映画の内容や推し活をするファンの変化、“推し”とファンの理想の関係性について話を聞きました。またメジャーデビュー15年の節目ということで、お互いに成績をつけてもらいました。

『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』

9月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかにて期間限定公開

2024年11月25日。歌謡コーラスグループ・純烈は、初の武道館公演『純烈魂』を開催。売れない時代やメンバーの脱退加入など、数々の苦難を乗り越えて華やかな大舞台に辿り着いたメンバーたちに、彼らを支えてきた約8000人のファンが全国から駆けつけ熱い声援を送った。ドキュメンタリー映画『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』では、そんな武道館の舞台裏にカメラが密着。現メンバーや元メンバー、長年付き添ってきたスタッフから語られる純烈への思い。またその一方で、人生の試練を乗り越えてきたのは純烈だけではなくファンも同じだった。妊娠中に夫と死別した人、マルチ商法に手を出したパートナー、別れた夫が自殺、若い娘に全財産を奪われる……さまざまな過去を持つファンを映し出す。

知名度が上がり、紅白に行けるようになったのはファンのおかげ

映画を拝見して驚きました。メンバーに密着した映像もさることながら、ファンの方に密着した映像がふんだんに入った映画になっていました。

酒井「僕らも驚きましたよ、“ほとんど写ってないじゃん”って(笑)。ただ、あの映像を見ると内臓を握られるような感じもあって、この映画は純烈にしか作れないと思いました。僕らを紐解けば、紅白初出場の時にはファン50人約30人にステージ上まで来てもらいましたし、昨年の紅白出場時にはファンのお母さんの家に行って驚かせるサプライズをしました。ワイドショーで取り上げてもらう時はいつもお客さんが映りますし、僕らの知名度が上がり紅白に行けるようになったのはファンのおかげです。ファンはメンバーの1人のようなもので、最重要メンバーであるとも言えます。純烈の源でありガソリンでもある。そんなファンのみなさんが熱い推し活をしてくれるということを再認識できる映画だと思います」

純烈 酒井一圭さん
酒井一圭(さかい・かずよし)1975年生まれ、大阪府出身。「純烈」リーダー。プロデューサー、コーラス担当。メンバーカラーは紫。元子役、元プロレスラー、俳優、歌手、プロデューサー、作詞家。1985年、TVドラマ『逆転あばれはっちゃく』で子役デビュー。2001年、『百獣戦隊ガオレンジャー』に出演。以降、俳優、イベントプロデューサー、プロレスラーなどを経て2007年、「夢は紅白親孝行」を合言葉に元戦隊俳優や知り合いに声をかけ、「純烈」を結成。リーダーとして数々の苦難を迎えるも常に前向きな思いつきで乗り越え、2018年に紅白に初出場し夢を叶えた。生粋の競馬ファン。好きな映画は「『男はつらいよ』『ノーカントリー』人情モノと殺人鬼!」、映画館の思い出は「少年時代はどんな映画を観に行っても爆睡!!」。

劇中では、ライブ中にステージからファンの方とやり取りする瞬間も描かれていました。ファンの方の顔は覚えていたりするのでしょうか。

酒井「大体分かりますね。例えば今日取材してもらって、ライブ会場で一番前にあなたがいたりすると“『LEE』!”と覚えてるんだよね。中には“なんで覚えてるの? 怖!”と言われることもあるんですけど(笑)」
 
白川「覚えていることでますます好きになってくれる方もいます。僕の場合はうろ覚えで、お母さんと娘だと思っていたらお母さんと妹だったり、“久しぶり!”なんて言ったら、“昨日も来ました”なんてこともあったりして(笑)」

白川 裕二郎(しらかわ・ゆうじろう)1976年生まれ、神奈川県出身。「純烈」メンバー。メインボーカル担当。メンバーカラーは赤。2002年に『忍風戦隊ハリケンジャー』で俳優デビュー。以降、テレビドラマ、映画、舞台などで活動を続けながら「このままでいいのか」と自問自していた頃、戦隊モノの先輩である酒井とカラオケに行き、その歌声に目をつけられ、2007年、「純烈」に誘われ加入する。趣味は釣り、筋トレ。その鍛え抜かれた肉体と持ち前の美声美貌でファンの心を掴んで離さない。好きな映画は(昔の)ドラえもん、『STAND BY ME』、映画館の思い出は「『マイ・フレンド・フォーエバー』という映画で大号泣してしまい、見終わってから席を立つことがなかなかできなかった」。

酒井「余計なことは喋らないで欲しいですね(笑)」

ファンと共に年齢を重ね、病気や体調を気遣われるように

デビュー以降、推し活をするファンの姿をずっと見てきていると思いますが、ファンの方の変化はありますか。

酒井「最初は僕らが出てくると“ぎゃー!”と喜んでくれる人が多くて、紅白初出場の2017年ごろには“うぉー!”、スキャンダルがあった2018年ごろは“負けるな!”“信じてるから頑張れ”みたいな声が多かったです。メジャーデビューして15年を迎え純烈を知ってくれている人が多くなり、最初のファンも年齢が上がってきています。するとその娘さんが“お母さんを連れて行ってあげよう”とか“”孫と3人で行こう”とか、チケットを親子や3世代で買ってくれる人もいます。メンバーの結婚や脱退でファンが減ったりもしましたが、全体としては増えている印象ですね」

ファンが年齢を重ねることで家族が変化し、世代で楽しめるものに変化しているのですね。純烈のみなさんも一緒に年を重ねているわけですが、コミュニケーションの変化、やり取りでの変化は感じられますか。

 酒井「紅白初出場で盛り上がっていた頃は僕も40代前半でしたが、もう50歳です。純烈を始めた頃にファンになってくれた方の年齢に自分が近づいているわけですが、そうするとファンから“そろそろこういう病気に気をつけて”と病気リストが届きます(笑)。そういう年齢だから、お互いに優しくなるし支え合っている感じに近いですね。“大丈夫?”と聞いて“大丈夫”と返すみたいな。そこにステージだったり、音楽があるみたいな感じですね」
 
白川「2ショット撮影会の時に昔は“あれやって欲しい”“これやってください”が多かったんですけど、今は“普通でいいです、無理しないで”とか“お疲れでしょ?”とか。お互いが気遣い合ってるんですよね」

純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか
©2025 死ぬまで推すのか 製作委員会

ファンと共に歳を重ねる醍醐味とも言えますね。ちなみにタイトルの“死ぬまで推すのか”にはどのような意味が込められているのでしょうか。

酒井「監督とメンバーで決めましたが、ファンに“死ぬまで推しますか?”と聞いているようにも見えますが、僕たちはいつもファンの人や会場に来た人を押し倒すような気持ちで歌っています。お互いに推しつ推されつ成り立っている。僕らにも“どこまでやるの?”と問いかけられている部分もあったり、“死ぬまでやるのか”という課題を自分に与えている部分もある。いろいろなふうに捉えられるんです」

白川「僕は永遠とか一生という言葉が好きじゃないんです。絶対に永遠に続くもの、一生続くものってないんですよ。死ぬまで推すとは言っても、自分が大病をして続けられなくなったり、ファンの方のご家族に何かあったり、他に推しができてしまうこともある。そう考えると絶対や一生ということはないので。だけど自分がそれを実行することで嫌いな言葉を覆せたらいいなと思っています」

リーダーの成績は4.8。楽屋で競馬実況を大音量で流すのがうるさいので-0.2です(笑)

メジャーデビューして15年、グループを結成して18年。これまで何度かメンバーの脱退・加入がありましたが、ここで節目ということでお互いに成績をつけてもらえますか。5段階評価でお願いします。

酒井「やっぱり白川は5ですね。やっぱりここまで耐える、持ち堪えるのはすごいですよ。僕は小さい時から年不相応な遊びが好きなんです。ケガとか危険なこともいとわない遊び方が好きで今もそれを続けています。その最たるものが純烈で、人生を賭けてやっているのですが、そこで白川と後上は生き残っているから、2人は5しかないよね。小田井(涼平)さんは5、岩永(洋昭)は3、友井(雄亮)は4、(林田)達也は3かな」

白川「僕の人生でリーダー(酒井さん)に出会えたことは、ものすごく大きいんです。会えていなかったら、今どんな仕事をしていたのか想像できないくらいゾッとします。家族も喜んでくれていないだろうし、奥さんが好きなことができないだろうし、いろいろな面でプラスになっています。点数をつけるのはあまり好きじゃないのですが、4.8。残りの0.2は、酒井さんは競馬が大好きで楽屋で競馬の実況を大音量で流すんですよね(笑)。僕は楽屋で静かに過ごしたいタイプなのに。それが“うるさいな”と思っている-0.2です。だけどやめられないからしょうがない、グッと我慢しています」



距離が近い規模感だからこそ「優良なファン」を選ばせてもらえる

アイドルの結婚や熱愛のニュース報道を受けたSNSやファンの様子を見ると、アイドルがプライベートを充実させることや自由な生活をすることの難しさを感じます。一方純烈さんは、これまでにメンバーの結婚や親の介護などでメンバーの脱退もありましたが、以降も変わらずに活動を続けています。アイドルとファンの間で良い関係性を保つコツや気をつけていることがあれば教えてください。

酒井「変な話かもしれませんが、僕らはファンを選ばせてもらっていると思います。僕が目指しているのは、ショッピングモールのような巨大施設ではなく、普通の八百屋さん。八百屋さんで買い物をすると、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなんて買うとすぐに“カレーだな”と献立が見えて、夕飯が分かるじゃないですか。そうしたら“じゃがいもサービスしとくわ”ができる。家族の構成もなんとなく分かっていたりしますからね。

純烈 酒井一圭さん

世の中には“同担拒否”とか、お客さんがお客さんを潰そうとしたり、ファンレターやSNSで攻撃をしたりといろいろな人がいます。そういったやってほしくないことを“こうしてください”“こうしてくれると嬉しい”とこちらから全部誘導できるんです。それは距離が近いから、この規模感だからできることですが、優良なファンを選んでいくということが一番大事だと思います。

僕はグループのリーダーですが、ファンとの行事軍配役でもあります。人生を賭けて純烈をやりたいと思っているので、営利目的のプロダクション側でなく、プレイヤーであるメンバー側でもなく、僕自身のやるべきこととして責任を持ってやっていますから。お客さん同士が潰しあったり、攻撃しあったりしないように立ち振る舞う。嫌われて当然だし、リーダーが嫌われ役を買って出て、ちゃんとした場を作ろうとしているということが分からない方には申し訳ないけどお断りし、モラルがあって常識的に振る舞えるファンを大事にしたいんです。普通に応援してくれている方の環境をいかに守れるかを考えてずっとやってきています」

仕事、介護、結婚、出産…どんな状況でも”推し活”があれば生きていける

これから映画を観る人、推し活をしている人にメッセージをお願いします。

純烈 白河裕二郎さん 酒井一圭さん

酒井「みなさん一生懸命推している方がいると思います。だけど仕事だったり、介護だったり、結婚だったり、出産だったり、人生にはいろいろな局面があります。“推し活を続けていいのだろうか”“続けられるのだろうか”と、迷ったりネガティブに思うこともあるかもしれません。だけどこの映画を観ると、ファンの先輩たちがいろいろな環境や人生、状況にありながら推すことで必死に生きている姿が見られます。とてもパワフルに生きている。一旦立ち止まってもまた戻れるし逆に推し続けてもいい。そのままでいい、正しいと思えるような背中を押してくれるようなドキュメンタリーになっていると思います。純烈が好きかはさておき、今推し活や人生に悩んでいる人に見てもらえると良い発見が生まれるんじゃないかと思います」
 
白川「このドキュメンタリー映画は純烈に加えて、5組のファンの皆さんに協力していただきました。それぞれの人間模様が本当に深いところまで撮影されていますので、ぜひそこを見てもらいたいですし、見終わった後もきっとポジティブな気持ちになれると思います。純烈ファンの皆さんだけに限らず、純烈が初めての方も推し活をしている人にも楽しんでほしいです」

『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』

純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか

9月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかにて期間限定公開

【出演】
酒井一圭 白川裕二郎 後上翔太
岩永洋昭 林田達也 小田井涼平
スーパー・ササダンゴ・マシン 小池竹見
【ナレーション】
今林久弥
【プロデューサー】
高根順次 
【監督】
岩淵弘樹
【企画】
三角フィルムズ 
【配給】
NAKACHIKA PICTURES
2025年/日本/カラー/ビスタ/97分/DCP/映倫区分:G

Staff Credit

撮影/菅原有希子

武田由紀子 Yukiko Takeda

編集者・ライター

1978年、富山県生まれ。出版社や編集プロダクション勤務、WEBメディア運営を経てフリーに。子育て雑誌やブランドカタログの編集・ライティングほか、映画関連のインタビューやコラム執筆などを担当。夫、10歳娘&7歳息子の4人暮らし。

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