連載
KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、石井さんが製作に携わったシェーカースタイルの家具からいち押しを。
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24.
[家具]Furniture

Brand:The Conran Shop
ザ・コンランショップ
Item:Ann Shaker Bench
アン シェーカー ベンチ
たとえ座らなくても、ベンチの存在感ひとつでくつろぎを感じる空間になります
19世紀を中心にアメリカで活動していたキリスト教徒の一派、シェーカー教徒。自給自足のシンプルな生活を送る彼らが作り出す家具はシェーカー家具と呼ばれ、その簡素を極めた実用的な美しさは世界中で長く愛され続けています。
もともと、この家具の美しさに強く惹かれていたところ、昨年、新たなシェーカー家具の製作に携わる機会を得ました。ザ・コンランショップからのお声がけで、長年シェーカースタイルの家具を手がけてきた広松木工と共作をさせていただけることに。追求したのは、今の時代になじみ、時を重ねても古びないスタイル。9アイテム製作した中でも、一番に紹介したいのが、こちらのベンチ。座るという本来の目的だけでなく、飾り台などさまざまな用途で使えるよう考え抜いたデザインです。
ベンチにしては座面の奥行きを狭く、その代わり、幅はかなり長めに仕上げました。ささいなようですが、絶妙な形状により、ベンチでありながら飾り棚などのほかの役割も無理なく兼ねられます。このサイズ感なら、廊下にも無理なく置けるはず。たとえ実際に座らなくても“ベンチ”というくつろぎを感じさせるアイテムがあることで、廊下が単なる通路にならず、安らいだ空気が漂うのです。
家具はシンプルなほど、使い道のイメージが広がります。実用面だけでなく、空間においてどんな役割を持たせたいか想像しながら家具を選ぶ。そんな一歩先の楽しみ方を、このベンチで実感できると思います。

脚はシェーカーの特徴的なデザイン。座面の角は丸く仕上げ、やわらかな印象に。「奥行きを狭めにしたので、廊下にも圧迫感なく置けます。本や雑貨をさりげなくのせて」(石井佳苗さん)

ベンチは低めに作られたものが多いけれど、こちらは一般的なダイニングテーブルに合う高さにしたのもこだわり。「スリムな座面ながら、安定して座れます。座る人数を限定しないベンチは、ひとつ持っておくと人を招く日にも重宝。使わないときは、他の用途に使えるのもいいですよね」(石井佳苗さん)
Designed by:
Hiromatsu Furniture & Kanae Ishii
Japan, 2024
古びないシェーカーのスタイルはそのままに今の家にフィットする形を追求

機能を過不足なく満たし、ただそこにあるだけで美しいものを目指して。「シェーカー家具は、ザ・コンランショップが掲げる『PLAIN SIMPLE USEFUL』の精神にふさわしい存在。現代の私たちらしい解釈で、新たなシェーカースタイルの家具を生み出せたことに、とても感謝しています」(石井佳苗さん)

Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2025年LEE5月号(4/7発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。

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