【菅田将暉さん×岸善幸監督】映画『サンセット・サンライズ』脚本・宮藤官九郎の“照れで斜に構えた”表現と本音。笑って最後にホロリ、いや大号泣!
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折田千鶴子
2025.01.16
傑作『あゝ、荒野』の2人が再タッグ。別種の感動作が爆誕!
ザックリ胸に刺さり、忘れ難い衝撃を受けた『あゝ、荒野』の監督&主演のお2人が、再タッグを組んだ『サンセット・サンライズ』が、これまた新年から感動の波にザブ~ンと溺れさせてくれます。少々男臭い世界観だった『あゝ、荒野』とは、まるでテイストの違う『サンセット・サンライズ』は、軽やかに人生の悲喜劇を描き出し、どんなことがあっても自分らしく新たな一歩を踏み出す勇気をくれるような、LEE読者に是非ともお勧めしたい必見作です。
しかも脚本は、みんな大好き、宮藤官九郎さん! 楡周平さんの同名小説を、宮藤さんはどんな世界観に仕立てたのでしょう!? そして映画オリジナルのクライマックスの感動は、現場でいかに生み出されたのか、主演の菅田将暉さんと岸善幸監督に直接お聞きしました。
岸善幸(左)
1964年、山形県出身。映像制作会社テレビマンユニオンで、「世界ウルルン滞在記」や「情熱大陸」などバラエティやドキュメンタリー番組を手がける。その後、ドキュメンタリー・ドラマやドラマを演出。「開拓者たち」(12)「ラジオ」(13)などで数々の賞を受賞。『二重生活』(16)で劇場映画監督デビュー。その他の監督作に『あゝ、荒野』(17)、『前科者』(22)、『正欲』(23)など。
菅田将暉(右)
1993年、大阪府出身。2009年『仮面ライダーW』で俳優デビュー。主な出演作に、『共喰い』(13)、『あゝ、荒野』(17)、『花束みたいな恋をした』(21)、『君たちはどう生きるか』(声の出演)『ミステリと言う勿れ』(共に23)、『Cloud クラウド』(24)など。Netflix『グラスハート』が今年配信予定。また、アーティストとしても活動し、昨24年には3枚目のオリジナルアルバム「SPIN」をリリース。
2人は、『二重生活』『あゝ、荒野』に続き、映画で3度目の再々タッグです。資料によると、菅田さんが他のキャストとの間に入って監督の意向を説明されたそうですが、岸監督の演出は、どこか異色だったりするのでしょうか?
菅田 確かに特徴的ではあるかもしれません。いわゆるテストやドライ(現場での段取り確認など)をせずに撮影に入るのですが、それは他の現場でもあることなんです。ただやっぱり(カメラの)狙い方や(演技の)引き出し方が、「これぞ岸組だな」という感覚があります。今回は宮藤(官九郎)さんの脚本で、台本を読んだときに「これ、ドライはやらないな」と思ったら、やっぱりそうで(笑)。僕は撮影の今村さん(圭佑/菅田さん出演作では『帝一の國』『百花』の他、MV「ロングホープ・フィリア」でも撮影を担当)もよく知ってるので、きっと実現出来るだろうと思ってはいましたが、現場に入ったら、やっぱりみんなから、「テストしないの?」等々の問い合わせが僕のところに来ました(笑)。
岸 そうだったんだ(笑)!?
菅田 サービスセンターのように、「どうなってるんですか!?」と (笑)。その度に「すみません、岸組ではテストやドライはないんですよ」と。……なんて大層な話ではなく、単純に『あゝ、荒野』でご一緒したイメージが強いらしく、「あの時って、どんな感じだったの?」みたいなことを、よく聞かれました。
とはいえ本作は、『あゝ、荒野』とはかなり作品のテストが違います。となると、撮影の方法や演出も、かなり変わられたのでは?
菅田 確かに、今回は違う印象がありました。
岸 そもそも本作は、今までのやり方では出来ませんでした。まずは原作があり、それを宮藤官九郎さんと一緒に作っていくわけですから。宮藤さんのホン(脚本)で映像を撮るって、それだけで大きなプレッシャーなんです。でも、同時にとても光栄なことなので、しかも菅田さんの力を借りられるとあって、これまでの宮藤作品の中に加わるような新しい作品になればいいな、という思いがありました。
『サンセット・サンライズ』って、こんな映画
コロナ禍で世界中がロックダウンに追い込まれた2020年。東京の大企業に勤める釣り好きの晋作(菅田将暉)は、リモートワークに乗じて釣りが出来る場所の物件を探し始める。そして三陸の町・宇田濱の4LDK・家賃6万円の神物件に一目惚れし、これ幸いと“お試し移住”を開始。仕事の合間に海へ通っては釣り三昧の日々を嬉々として過ごし始めるが、町の人たちは東京から来たよそ者の存在が気になって仕方がない。しかも晋作が借りた物件の大家が、町のマドンナの百香(井上真央)だったから、人々の関心は高まるばかり。晋作は、遠慮知らずの地元民の距離感ゼロの交流に戸惑いながらも、いつしか溶け込んでいくーー。
原作にも既にクスッと笑えるユーモアが漂っていますが、そこに宮藤官九郎さんの笑いが1つ乗ることで、また少し違った形の笑いに進化しています。原作では晋作の“心の声”でクスッと笑わせますが、本作では言葉を使わずに表現されています。その辺りは、演じながらどんな風に感じていたのでしょうか。
菅田 確かに原作には“心の声”がたくさんありますが、本作では晋作が想いを口にすることは滅多にない。心情を吐露するのは、終盤の芋煮会ほか数える程度です。すべて行動で見せていくわけですが、その行動自体は台本に書いてあるので、僕はその通りやるだけ。そうすると宮藤さん的な笑いに繋がっていくんです。つまり、ギミックがまんまキャラクターを表してくださっている。例えば、いきなり「内見いいですか? もう来ちゃいました」と言って、(百香に)「え、来たんですか?」(という間に)早くも不法侵入していて。僕は何も考えずに台本通りにやるだけなんです。でもお客さんからすると、“すごいフットワークが軽くて、身勝手な奴だな”と思いますよね。僕がわざわざ身勝手なお芝居をしなくても。
菅田 その後、「来ちゃったなら仕方ない、(隔離期間は)出ずに家の中に居てね」と言われたのに、我慢できなくて釣りに行ってしまう。それだけで、“こいつ、我慢できないくらい釣りが好きなんだな”と分かる。宮藤さんや監督が作ってくれた台本の設計図の中に既にキャラクターがあるので、僕はその通りにやるだけなんです。
でも、その1つ1つのギミックの“キレ”が、やっぱり宮藤さんっぽい。例えば隔離生活をしていなかったとバレた時の「スイマセン」と謝るシーンでも、向こうが近づいてきたら、こっちは後ずさって。何、逃げてんだ!?となると、「いや、一応ディスタンスが……」と言い訳する面倒くささとか(笑)。そういう風に、1つのシーンにおいて複合的に涙も笑いも生活と共にある感じが、なるほど、やっぱり宮藤さんだなと感じていました。
ト書きは多いんですか?
岸 いや、少ない方だと思います。それこそ、菅田さんが言うところの、セリフにやっぱり含まれている。
菅田 そう、動きも含めて全部、見えるんです。ある種、演劇的なんですよね。群像シーンの、モモちゃん(百香)の幸せを祈る会の面々が集まる居酒屋・海幸で、みんなでご飯を食べながら喋っているシーンでも、台本通りにやろうとすると、みんな自然とああいう動きになっていく。その辺りが、やっぱり宮藤さんだなと思います。
岸 撮る方からしても、撮りやすいホンなんですが、どのタイミングにおいて、どのサイズを選ぶかは、特に海幸でのシーンは難しくて、撮影の今村さんとかなり話し合いました。セリフもふんだんにあるシーンなので、その分、色々とアングルを試したくなったりするんです。特に料理が映るシーンは、ちゃんと料理を綺麗に撮りたかったので。
菅田 料理のシーンは、“この旨さ、伝われ~!”と、みんなの愛情が込められたシーンですよね。映画を超えた(料理への)愛情があった気がします。
岸 だからこそ、菅田さんに本当に旨いものを食べさせないと、と思ってました(笑)。お芝居プラス、本当に「旨いっ!」というものを食べさせないと、と。今村さんやスタッフと行った居酒屋の地元料理があまりにも美味しかったので、宮藤さんに料理の内容を変えてもらったりしました。
確かに、菅田さんによる“食レポ”的な楽しさもありました。その辺りは、割に素の反応に近い感じでしたか?
菅田 素の反応に見えたら嬉しいですが、とはいえ撮影なので何回も何回もやって……。
岸 ハハハハ(笑)!
菅田 どうしても素の反応にはならないのですが、1発目に食べた感動は覚えているので、それを的確にやる感じでした。例えばハモニカ焼き(メカジキの背びれの付け根の塩焼き)を食べた時の、「これ、肉じゃん!!」という反応とか。本当に肉(の味)なんですよ。そういう素直な反応を出そうとは思っていました。下手くそな食レポでしたが……。
菅田さんのコメディセンスの秀逸さ!
台本通りにやるだけとはいえ、菅田さんの喜劇役者ぶりが最高でした。コッソリ抜け出そうとする動きも、リモート飲み会でのドヤ顔にしても、何度も噴き出しました。
岸 本当ですよ。白川和子さん(扮する近所のお婆ちゃん)との出会いの場面でも、どうやったらあの姿勢が生まれるのかな、って(笑)。声をかけられた瞬間、(グルっと身体を固定させたまま)振り向くのですが、その姿勢が可笑しくて。あの曲線は、どうしたら生まれるのか、と。
菅田 考えてやってませんが、ちょうど前の道がスロープになっていたので、絶妙なシルエットに映っているんですよ。でも確かに、シルエットは昔から意識しています。シルエットって大事ですよね!?
シルエットも演技の一種ということですよね?
菅田 だと思います。舞台などでは顕著ですが、映画でも、特に本作のようにちゃんと全身で撮ってくださる作品だと、表情が大事なように、やっぱりシルエットはとても大事で。多分、蜷川(幸雄)さんをはじめ舞台をやった時に、色々と厳しく言われてきたからかもしれないですね。
佇まいや姿勢なども、重要な表現だということですよね?
菅田 姿勢や佇まい、歩き方など。例えば、手もそうですね。
岸 そう! “手”はなかなか難しいんですよ。演技してます、って感じの俳優さんとかは、やっぱり手の動きを見れば分かります。手って、本当に難しいんですよね。
菅田 意識すると手持ち無沙汰で動かしたくなったり、ポケットに入れたくなったりするのですが、意外と目立つんですよね。
岸 そうなんです。「ここでは、そういう“手”じゃない」というような演出は、それこそ蜷川さんクラスでないと、なかなか付けられないですよ。セリフを言う技術と体が動く技術が、一緒になっていないと本当に困る……。菅田さんは、感情を表現する波がすべて同時に全身に行き渡っている感じなんです。
菅田 それこそ、まさに(百香の同僚役の)池脇千鶴さんですよ。「や~っと芋煮会らしくなってきた」っていう時の、(万歳のように手を挙げたままの)あの手、ですよね(笑)。座る時も、こう(手をついて)、「あ~、よいしょ」って、(手が)定まるまで、なかなかセリフを言ってくれない。長いんです(笑)。でも、やっぱり、そういうことなんだと思います。
岸 本当にそう(笑)! それこそト書きには何も書いていないから。
菅田 ですよね。あんな風にパ~ンって膝を叩いたりする動きなんて、どこにも書いてない。本当にスゴイ、素晴らしいと思いました。
そういう演技というのは、相当に自信や確信がないと出来ないですよね。確かに新人さんには絶対に無理ですよね。
菅田 最初から分かるわけないですよね。特にテレビドラマって寄り(のカット)が多いんです。つまり“表情”の芝居が多い。短い時間の中で的確に伝えなければならないし、CMも入るからそういう情報が濃くなる。でも、それだけやっていると、段々と首から上のお芝居に慣れていってしまう。僕も始めたばかりの頃はそうでした。その後、舞台をやる際に「手をブラブラさせるな!」とか「足音がうるさい!」と怒られて。舞台って、そういうものが全て目立つ。少しの動きや物音で、それがすべて芝居になってしまうから。舞台ではすごく鍛えられましたが、今回のようにテストやドライをせず、ずっと(カメラが)手持ちで追いかけてくれたりすると、手足から頭の先まで全て映るので、そういうことがやっぱり大事になってくるんです。
岸 現場で僕が演出し、今村さんが(カメラを)回し、そこに菅田さんが映っているものを後で編集するわけですが、僕が現場で感じたこと、体が震えたり、大笑いしたり、ホントに泣いたりしたことを、観客の皆さんにも見て感じてもらえるよう、どう編集し完成させるかは、かなり悩みながらの作業でした。特に今回は現場で笑いまくっていたので、そういうものが削がれてしまったら失敗するなあと、大きなプレッシャーがありました。
終盤の映画オリジナルシーンはもう号泣必至!
後半は、百香の幸せを祈る会の人々をはじめ、関係者がみな一堂に会した河原での“芋煮会”シーンも含め、映画オリジナルの展開が続きます 。映画としての打ち出しはそこにあると感じましたが、それらのシーンに込めた思いを教えてください。
岸 確かに河原での芋煮会が、本作の1番の核心でありクライマックスだと思っていました。晋作という東京から来た釣り好きのサラリーマンが、ある意味、閉鎖的だった宇田濱という町で暮らす人たちの気持ちを、いい意味でも悪い意味でも刺激していく。お酒が入ったせいもありますが、遂にモモちゃんに対する思いが爆発してしまう、というシーンです。
菅田 あれ、自爆ですよね (笑)。
岸 宮藤さんと最初に打ち合わせをした時に話したのが、東北人の気質で。ずっと胸に溜めてしまって吐露できない部分、特に恋の感情なども、お酒の力を借りて、みんなが吐露しあっていく。その中に本音があるんだよね、と。晋作が宇田濱に来たお陰で、彼らは吐露できなかった本音を確認し合い、確信を持つ。劇中でも描いたように、(東日本大)震災やらコロナやらをぶちまけ合うことは、人のコミュニケーションのために必要な衝突だった。そこを、ちゃんと描かないといけないと話し合いました。
菅田 もちろん僕も、芋煮会がいわゆるクライマックスになるだろうし、そこに向かって準備をしなければと、どこかで思っていました。ただ、きっと岸さんはそういう風(正面から)に撮るし、本作はそういう映画だと僕も思うけれど、宮藤さんは、ちょっと違う。もちろん岸さんも宮藤さんも、きちんと震災と向き合いたいし、同じことを描きたいのですが、腹を括って正面から描きたい岸さんに対し、宮藤さんは、ちょっと斜から語りたいというか。そのイタチごっこがすごい楽しみでした。台本からも、宮藤さんの正面から言わない良さ、照れが感じられて。でもそれは、役者として非常にありがたかったりもするんです。
菅田 シーンとしては正面からドンと撮るけれど、お芝居的には、正面から向き合い過ぎずにやる。それを正面から撮ってもらう、みたいな。例えば『あゝ、荒野』では僕も正面から演じ、それを正面から撮ってもらいましたが、今回の晋作は、半分、水に浸かりながら、つまり半分(気持ちを)隠しつつ、でも何か分からないまま気づいたら大自然に向かって“あれ(心の内)”を言ってしまう。そういうクライマックスになることが楽しみだったし、それが岸組で起こるんだな、と演じていても楽しかったです。
そのシーンも思わず噴き出しましたが、晋作の言葉にいきなり胸を突かれ、思わずブワッと涙がせり上がって来ました。“菅田さんにヤラれた”感、たっぷりでした。
菅田 あそこは、ノー・モーションで行きたいイメージがありました。振りかぶってバーンと打つのではなく、気づいたらスパ~ンって入っちゃった、というのは意識しました。(晋作)本人もそんなつもりなかったというか、状況によってそうなっちゃったんですよ。そうでなければ、「震災なんかどうでもいい!」なんて言えませんよね。
岸 確かにスゴイ台詞ですよね。
菅田 そう。前々から考えて言うわけない。やっぱり人間って、コミュニケーションが豊かだと。だから仲良くもなれた。そこが大事なポイントですよね。
その非常にエモーショナルなシーンは、一発OKでしたか。かなりの労力を要しますよね。
周囲のスタッフ (爆笑)!!
菅田 真正面カットに限れば、1~2テイクという感じかな。
岸 う~ん、本当にクライマックスだと思っていたので、あの場に居合わせた人の表情すべてを撮りたかったんです。晋作のセリフを聞いている表情を。つまり、そのリアクションを撮るため晋作はずっとあのセリフを言い続けました!
えっ!! 集っている人数分のテイクが必要だった⁉
岸 妥協がないのが、やっぱり菅田将暉のスゴさです。菅田さんが手を抜かないので、リアクションを撮られている人たちも、そりゃあ真剣に応えますよね。山々に囲まれ、川の音があり、菅田さんのセリフを全身で聞く――全エネルギーでそういう音が聞こえてくるから、どうしたってリアクションも、それに応える芝居になるわけです。
菅田 嬉しかったのは、戻った時に池脇千鶴さんが「今日も声、枯れちゃってるね」と声をかけてくれたこと。そう言う池脇さんも、目がパンパンに腫れていて。池脇さんも毎テイク毎テイク号泣していたんだなと、なんか嬉しかったです。もちろん井上真央さんもその他の方も、みんなそんな感じだったので、もう何度だって手を抜けなかったです。
伝わって欲しい本作発の“思い”
大震災やコロナ禍を経て、自分は何が変わったのか、世界にどう対峙していけばいいのかとモヤっとしていたものが、本作がある種、そういうものを総括してくれて、とても腑に落ちた感がありました。とても大事なことを伝えてもらったな、と。
菅田 僕が本当にいいなと思ったのは、人間の身勝手さです。晋作も百香も、(百香の父の)章男さん(中村雅俊)も、それぞれが自分の意思で「自分はこれがいい」と選択した結果が、ああなった、という。そうしたまとまり方って、意外とないし、なかなか出来ることじゃない。やっぱり誰かに気を遣って、本音を言えないことがほとんど。それが優しさでもあるわけですが、でも、まずはそれぞれが身勝手に意思を出し合い、その上で互いに気を遣えるのは、すごく良いコミュニケーションの取り方だな、と思いました。今の時代、自分の意見を言う=人を攻撃すると捉えられがちですが、一つの議論として感情を抜きに「自分はこれがいい」と言える、そして選択できるのは、やっぱり最良だと僕には思えます。
岸 本当にその通り。人はみんな、個性も考え方もバラバラですから。そのバラバラのまま、居られることが幸せだと思えたというか。震災やコロナを体験してきた人たちにも、それぞれに違う生き方があるように、あまたの生き方があるわけです。どの生き方を選ぶにしても何が必要かというと、やっぱり人と人が出会うことだと思うんです。子どもが生まれることと同じくらい、人と出会うことも大きな奇跡で。でも実は求めていけば、そういう奇跡ってたくさんあるハズなんですよ。
釣りが好きで東京から晋作が向かった場所に未来があったわけですが、そんなことは晋作自身も、受け入れる側も夢にも思わなかった。でもそこで出会い、ぶつかり合ったことで、何か新しいものが生まれた。それは人間が生きていく以上、永遠に起きることでもありますよね。そんなことが伝わればいいな、と思っています。
笑いが満載の『サンセット・サンライズ』ですが、笑っていると時折ちょっと胸が疼くような痛みや胸騒ぎをちょいちょい差し込んできます。そうして最後はもう、いきなり胸を突かれて、思わず嗚咽を漏らしてしまうハズです。
でも、それが本当に温かい。温かくてすごく強い。どんな困難が訪れようと、今年一年は軽く乗り越えられるような、そんな“強い想い”を抱かせてくれる本作。是非、劇場で笑って泣いて、最高の感動を心ゆくまで味わってください。
『サンセット・サンライズ』
全国ロードショー
Ⓒ楡周平/講談社 Ⓒ2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
1月17日(金)全国ロードショー
2024/日本/139分/配給:ワーナー・ブラザース映画
脚本 : 宮藤官九郎
監督 : 岸善幸
原作 : 楡周平『サンセット・サンライズ』(講談社文庫)
出演 : 菅田将暉、井上真央、中村雅俊、三宅健、池脇千鶴、竹原ピストル、山本浩司、好井まさお、小日向文世ほか
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写真:菅原有希子
ヘアメイク:木村一真(SKAVATI) Kazuma Kimura(SKAVATI)
スタイリスト:服部昌孝 Masataka Hattori
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。