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LIFE

TAKARAZUKA STAR|ココロの景色

【専科・瀬央ゆりあさん】「スペインで見た未完成のサグラダ・ファミリア」【宝塚スター|ココロの景色】

  • TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色

2024.11.21

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あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

文字:TAKARAZUKA Star Interview

専科

瀬央ゆりあさん

瀬央さんの忘れられない景色
「スペインで見た未完成のサグラダ・ファミリア」

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写真:ココロの景色・宝塚歌劇団専科・瀬央ゆりあさん

YURIA SEO・Profile

2009年、宝塚歌劇団に入団。星組に配属。実力はもちろん舞台への真摯な姿勢や人柄でも多くの人に愛される男役スターに。昨年、特定の組に所属せず活躍する専科へ異動。新たなフィールドでの活躍に注目が集まっている。

宝塚歌劇公式ウェブサイト>>


完璧ではないからこその美しさがある。
人間も建物も“未完成”に惹かれます

YURIA SEO

「以前から、サグラダ・ファミリアをこの目で見てみたいと思っていました。その魅力は“未完成の美”。140年以上も前から作り始めたのに完成していない、その歴史とロマンに私は惹かれたのですが、再来年には完成するというニュースを耳にして。これは今行くしかないと。実は先日、その目的を果たすためついにスペインに行ってきました

スペインではサグラダ・ファミリアの近くにホテルを予約。朝昼晩と時間とともに表情が変わる姿を楽しんだそう。「中でも、私の心に一番強く残ったのは日没直後のサグラダ・ファミリアでした。内側からの灯りが漏れ、薄闇の中でステンドグラスがやわらかく輝く姿は本当に美しかった」

夢をひとつ叶えたスペイン旅。しかし、「今回の旅の始まりはトラブルだらけでした」と瀬央さんは笑います。

「運悪く台風とバッティング。一緒に旅する予定だったメンバーの飛行機が遅れ、私だけがスペインに到着。初日は“人生初のひとり旅”を意図せず経験することに。最初は不安でホテルにこもろうかと考えたのですが、せっかくのスペインを楽しまないのはもったいないと。一人であちこち観光してまわり、最終的にはサッカー場で試合観戦。現地の方々とハイタッチしている私がいました(笑)

スペインだけでなく雪組公演『愛の不時着』への出演が決まった際には韓国へも。現地では『ベルサイユのばら』や『フランケンシュタイン』をはじめ、いくつかの舞台を観劇。ミュージカル三昧の旅を楽しんだそうです。

「先日はずっとやってみたかったアクションにも挑戦。専科に異動してからは時間に余裕ができて、今はいろんなことをインプットしながら毎日を過ごしている感じで、見える“景色”も変わってきた気がします。例えば、舞台観劇ひとつにしても“そのときに観て感じて終わり”ではなく、感想を噛み締める時間が今の私にはある分、より深く受け止めることができるようになりました」

新しい環境の中で、新しい世界に出会い、心も表現もどんどん変化していく。「サグラダ・ファミリアと同じ、自分もまだまだ未完成」と瀬央さんは笑います。

「私の心に刻み込まれている宝塚の景色といえば、新人公演『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に―』で目にした銀橋です。そこで私は初めて一人で歌いながら銀橋を渡る役をいただいたのですが、当時はそれが怖くて仕方なくて……。緊張で足を震わせながら渡った思い出は今も忘れることができません。今年で男役16年目、足を震わすことなく銀橋を渡れるようになりましたが、相変わらず目の前は課題だらけ。時間と経験を積み重ねたくさんのものを身につけてきましたが、今はその中から本当に必要なものを残すというか、削ぎ落とす段階を迎えていると感じています。男役の道に終わりなしとはよく言いますが、私にとっては男役もまた“未完成の美”。完璧ではないからこそ、足りないからこそ、努力や情熱や思いが輝く。その“過程”を豊かに彩り楽しみながら、この先も歩いていきたいです」

※=舞台客席側、オーケストラ・ピットを囲む弓状のステージ

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瀬央ゆりあさんに3つの質問!

1

瀬央さんの“お気に入りの場所”を教えてください

1

役作りに欠かせない“声楽教室”と、癒しと元気をもらえる“兄家族の家”

一つ目は宝塚歌劇団の稽古場にある“声楽教室”です。小さな部屋にグランドピアノが一台あり、その脇に机があったり、ドラムセットがあったり。その大きさも空間もすべてが私には“ちょうどよい”と言いますか。考えごとをしたいとき、イメージを膨らませたいとき、集中したいときによく利用します。私の役作りに手を貸してくれる大切な場所でもあるんです。

二つ目は“兄家族の家”です。そこでは可愛い6歳の甥っ子を愛でてパワーチャージ。そのお返しに「望みを全部叶えてあげる」勢いで甘やかしています(笑)。ちなみに、甥っ子はそんな私のことを友達だと思っているようで。先日も保育園で「友達のなおちゃん(瀬央さんのこと)が遊びにくるんだ」と言っていたそうです。そこで、兄嫁が「違うでしょ、お友達じゃないでしょ」と注意したところ、返ってきたのが「わかっているよ、パパの弟だよね」という言葉だったそうです(笑)。すぐに「あ、妹だった!」と間違いに気付いたようですか……なんだか混乱させてしまってごめん、甥っ子よ(笑)。

2

スマホの写真フォルダに入っている“お気に入りの写真”とは?

2

写真を撮るのは“本当に残しておきたい大切なもの”だけ

実は、普段はあまり写真を撮らないんです。美しいものは自分の目で見て心に刻み込みたいと思い、食事も写真を撮る時間があるなら美味しいうちにちゃんと舌で味わいたい……。というと、カッコよく聞こえますが、単純に面倒くさがりなんです(笑)。なので、スマホのカメラロールに並ぶのは、行きたい場所や乗換案内など、必要な情報を撮影したスクショだらけ。

その“あまり撮らない写真”を撮りまくったのがスペインです。朝日を浴びる姿、青空の下の姿、夜の闇の中でライトアップされる姿……時間とともに表情を変えるサグラダ・ファミリアの写真は何枚も撮りました。あとは、やっぱり甥っ子の写真ですね。スペインのお土産にバルセロナFCのユニフォームを買ったのですが、それを着た可愛い甥っ子の姿が、私がいちばん最近撮った一枚です(笑)。

3

瀬央さんの“旅のルール”を教えてください

3

その場所に立ったとき自分の心がどう動くのか、確認してから行き先を決めています

せっかく旅先で過ごすなら時間を無駄にしたくないので。「ここはバスで行って、あそこまではタクシーかな。夕食はあの店で食べたいから、その前にあの観光地に行こう」などと、わりと地図や路線図を見ながら綿密に予定を立てるタイプなんです。ただ、それをするのは現地を訪れてから。自分の心が何に反応しどう動くのかはその場所に行ってみないとわからないので、あらかじめ決めることはあまりしないんです。

明確な人生設計を立てたり、自分でレールを決めて進んだりせず、そのときそのときで心が動いた方向に進んでいく……。人生の進み方も同じかもしれません。今、私の心が向かっているのはやはり舞台、お客様にきちんと伝わるものをお届けするということです。舞台には素敵な瞬間がたくさんありますが、私がもっとも喜びを感じるのが、幕が降りる瞬間です。それはお客様にお届けして、伝わって、反応が返ってくる、そのキャッチボールに「。」を打つ瞬間。客席に向かいお客様のお顔を見ながら、「ああ、今日も気持ちが通じ合えたんだ」と思える自分でいられるように。この先も“伝える力”を磨いていきたいと思っています。

写真:瀬央ゆりあさん

NEXT STAGE


ミュージカル
『愛の不時着』

写真:ミュージカル『愛の不時着』原作tvNドラマ「愛の不時着」パク・ジウン執筆©STUDIO DRAGON by CJ ENM,ALL RIGHTS RESERVED. Writer:Park Ji eun
©宝塚歌劇団

北朝鮮のエリート将校とパラグライダーで北朝鮮に不時着した韓国令嬢との運命の恋。韓国の人気ドラマが宝塚の舞台に! 主演:朝美絢 夢白あや

原作tvNドラマ「愛の不時着」パク・ジウン執筆
©STUDIO DRAGON by CJ ENM,
ALL RIGHTS RESERVED. Writer:Park Ji eun

東京建物 Brillia HALL
11月30日〜12月15日

梅田芸術劇場メインホール
12月22日〜12月28日


Staff Credit

撮影/木村 敦(Ajoite) 取材・文/石井美輪
こちらは2024年LEE12月号(11/7発売)「ココロの景色 vol.3 瀬央ゆりあさん」に掲載の記事です。

▼ 「ココロの景色」連載一覧はこちら

文字:TAKARAZUKA Star Interview

TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色

宝塚歌劇団男役スターが登場する人気連載の第2弾! あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

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