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【ナチュラル系クリーナーでの正しい掃除法】重曹、セスキ、クエン酸……違いと使い方がわからないあなたへ
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藤原千秋
2024.09.26
スマホでぼーっとSNSのリール動画を見ていると流れてくる、重曹など「ナチュラル系クリーナー」(ナチュラルクリーナー、ナチュラル洗剤といった呼び方も)を使った掃除術。
梅雨時、かねてから気になっていた水回り汚れに「この粉が使える」と見れば、「アッこれだ!」と思って思わずリンク保存するものの、すでに夏が終わりそう……なんて”あるある”だったりしませんか?
重曹もクエン酸も全部白い粉で見分けもつかないし、どれに何が効くのか、何度聞いても組み合わせが覚えられないことも。
「ナチュラル系クリーナー」のいいところ
そもそも洗剤とどこが違うの? ナチュラル系クリーナーは、何がいいの?
ナチュラル系クリーナーの「いい点」としてよく挙げられるのが、「安全」で「安価」で「安パイ(無難)」といったところです。
「安全」というのは、重曹やクエン酸のような「食品添加物」としても使われるような素材なら、万が一子どもが少量口に入れても、すぐ死ぬような心配はないので、安心 ということ。
「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」「クエン酸」など単体では「界面活性剤」入りではないという点を最大のメリットとして挙げる場合もあります。界面活性剤を飲むと洗剤中毒(界面活性剤中毒)と言って、少量でも嘔気を催すなど誤飲が容易に命に関わりかねないからです。
「安価」というのは、例えば200グラム110円で100円ショップで入手したクエン酸を手作りスプレーとして水道水200mlに10gずつ溶かして使う場合、スプレー20本分になるので1本あたりのコストは5円程。市販の洗剤に比べてとてつもなくローコストということ。
「安パイ」というのは、洗剤と比べ劇的というほどではないけど。ただの水より汚れ落ちに効くので、いろいろ無難ということです。
デメリットも…「ひと手間」かけて穏やかに掃除したい人に最適
逆に、ナチュラル系クリーナーの「悪い点」もあります。
それは、考えたり工夫しながら使わなければいけないところ。「頭(気)」と「手」を使うところ。つまり必ずしも「お手軽」とは言えないところでしょうか。
それから、めちゃくちゃに汚れた箇所を、魔法のように劇的、強力かつ短時間でキレイにできるようなものでもない点もでしょう。
でも、普段からそれほど汚くない場所を維持するのには向いています。
安全で安く無難に。おだやかに。ゆっくりと。
実は、いわゆる「重曹とか」を使った掃除方法が世の中に知れ渡ってからの時間というのは、そう長いものではありません。
おばあちゃんの知恵として存在してはいたのですが、一大ブームになったのは2000年前後。
海外でも人気になった「スローライフ」の流れからでした。
そう、無難に。穏やかに。ゆっくりと。
頭と手を使って、「ひと手間」かけてじっくり掃除をしたい人には、うってつけの素材ではあるわけです。
重曹、セスキ、クエン酸の「大まかに覚えておきたい性質」
ところで「重曹もクエン酸も全部白い粉で見分けもつかないし、どれに何が効くのか何度聞いても組み合わせが覚えられない」場合、やってはいけないのが「買ってきたパッケージから、より見分けのつかない容器に入れ替えてしまうこと」です。
使い勝手より見栄えを重視するとやりがちなのですが、これは避けた方が無難。
そのうえで
・重曹
・セスキ炭酸ソーダ
この2つは性質が近く、水に溶かすと「(弱)アルカリ性」で、「油や脂やタンパク質のネトネト汚れに効果がある」ものだと覚えておきましょう。
一方、
・クエン酸
は、水に溶かすと「(弱)酸性」になり、「ゴリゴリに石化したミネラル汚れに効果する」のだと覚えておきましょう。
つまり、手垢汚れにクエン酸をかけても落ちませんし、風呂場の鏡のウロコ汚れに重曹水をかけても基本的には汚れ落ちしないということです。
まぁでも、力まかせにタワシでゴシゴシすれば、タワシの研磨力だけで落ちることもありますので、100%落ちないとは言えないのですが。
いずれにしてもナチュラル系クリーナーは、それ自体プラス何かの道具(スプレーボトルやブラシ等)を組み合わせて使うもの。
いわゆる「吹き付けておけば勝手に落ちる」というのは市販の強力な洗剤の仕事なわけで、さらにいえば「カビ落とし」や「漂白」「消毒」ができるものでもありません。その点も覚えておいてください。
(布に染み込んだ血液汚れに関しては、水に溶かしたセスキ炭酸ソーダ水の中で溶け出してくることなどはあります)
大丈夫? ナチュラル系クリーナーの「誰かが考えた最強の使い方」
さて、冒頭に挙げたようなリール動画など、近年さまざまなSNS経由でナチュラル系クリーナーの”誰かが考えた最強の使い方”的な掃除術が共有される機会が増えています。
泡を放置するとスッキリ落ちる!といったインパクトのある映像やワザがバズりやすい一方で、素直にそれを真似してしまうには危険な内容が含まれていることもあります。
短時間で中毒的に見やすい動画ほど、根拠にまで言及する尺がないものですし、見る人それぞれが、正しい情報かを判断するのは難しいと感じることもあります。
そもそも「ひと手間」かかるナチュラル系クリーナー。
市販の洗剤と掛け合わせるなどしたオリジナル使用法などについては、実行してみる前に、もう一度、ソースのしっかりしたサイトなどで調べる「ひと手間」も、どうかかけていただければと思います。
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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