LEE世代には、生理前のPMS症状に悩んでいる人が多数。
読者アンケートをとると、身体的な不調に加え、家族にイライラをぶつけてしまうことが悩みだという切実な声が多くあがりました※。
また、夫側からも、妻のPMSにどう対応すればいいのか戸惑っているという本音も。
PMSについて理解するためには、まずは正しく知ることから。 あらためて夫婦で話し合って、お互いのコミュニケーションや生活習慣について一緒に見直してみませんか?
※2024年9月6日~9月12日、LEE100人隊46名がアンケート回答
LEE読者も「PMS」に悩んでいます…
あらためて…「PMS(月経前症候群)」って何?
月経前3~10日の間に続く、精神的または身体的な症状のこと。女性には「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つのホルモンの波が。排卵すると急にプロゲステロンが多くなり、生理前までの約2週間はその時期が継続します。このホルモンの急激な変化や波が、心身に不調をもたらすと言われています。
PMSの症状は200種類以上あると言われていますが、おもな症状は、以下。
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・手足のむくみ
・乳房の張りや痛み
・頭痛
・腰痛
・食欲の変化
・過食
・疲れ
・無気力
・意欲の減退
・いらだち
・睡眠障害 など
妻・さきさんのPMS悩み
「生理前はどうしてもイライラを家族にぶつけてしまい、そんな自分にも落ち込みます…」
LEE100人隊 No.054 さきさん&夫・マサさん
さきさん&夫のマサさんは、ともに38歳。9歳の娘さんとの3人家族。さきさんは専業主婦で、LEE100人隊として活動中。趣味は幼少期から続けているクラシックバレエ。
今回は、妻のPMS症状に悩みつつも、夫婦で協力して対策を講じているというLEE100人隊のご夫婦にお話を聞きました。
――まず、さきさんのPMS症状について教えてください。いつ頃からつらいと感じ始めましたか?
29歳で出産したのですが、その3年後の32歳頃から気になり始めました。3年間、ほぼワンオペで自宅で育児していたのが、娘がプレ幼稚園に通い出して、少し手が離れた頃で。イライラしたり、もともと慢性頭痛なのですが氷枕をしないと寝られないぐらい頭が痛いときがあったり。調べてみると、いつもちょうど生理前の時期だとわかり、PMSなんじゃないかと思うようになりました。
僕もわりと頻繁に気圧の変化などによる頭痛があるので、お互いに「今日はどう? 頭痛い?」などと確認し合うことが結構あったんです。でも、明らかに妻だけがつらい時期が増えて、これはただの頭痛じゃないのかもしれない、と思ったのが最初です。
――さきさんはどんな症状に悩むことが多いですか?
最もつらいのが「むくみ」。幼い頃からクラシックバレエを習っていて、出産前後はお休みしていたんですが、ちょうど32歳頃から再開して、定期的にレッスンに通っています。運動しているはずなのに、PMSの時期だけは明らかに脚がむくんでパンパンで、シューズがきつくて。長年やっているので、それなりにむくみに効くストレッチなどもわかっているはずなのに効果がなく、レッスンをしていても体の重さや動きにくさを感じるんです。
そばで見ていても、PMSとそれ以外の時期は体調が全然違うんだろうなと思います。
あとはやっぱり、PMSのときはイライラしてしまって。それも本当に小さなことで、例えば娘が金曜日に上履きを学校に忘れてしまったら、普段なら来週洗えばいいかと思えるのに、PMSの時期だと「どうするの? 洗わないと汚いよね?」とイライラ。
夫に対して、ついイラっとしてしまうことも。何度言っても使用済みタオルを持ってきてくれなかったり、靴下が裏返しで洗濯カゴに入っていたりすると、カチンときて……。
普段なら流してくれることも、PMSのときは絶対指摘されますね。正直、言い方がきついなと感じることもあります。
そうなんだよね、今なら笑い話にできるのに……。そのときは、自分で止められないほどカリカリ怒ってしまって、後から落ち込んだり、はたと気づいて夫や娘に謝ったりすることもあります。
ほかにも、普段から寝つきが悪いのですが、PMSの時期は「明日これしなきゃ」「娘の学校でこんなことがあったけど大丈夫かな」などと不安が募って眠れなくなることも。ほとんど寝られないまま朝が来てまた1日が始まり、昼寝をして何とか乗り切るなんてこともあって。
このようなPMSの症状に悩んで、一度婦人科で相談したこともありました。
――婦人科では、どのように相談されましたか?
定期検診でかかりつけの婦人科に行ったときに、先生に「生理前になるとしんどいんです」とお話ししました。早めに更年期の症状が出る人もいるからと、採血をして調べてもらい、まだ更年期ではなかったので「やはりPMSでしょう」と。「処方できる薬もあるけれど、PMSとは自分に合ったやり方で付き合っていくしかないから、ご家族とも相談して生活を見直してみて」とアドバイスをもらいました。
それから、なるべく体にいい食事を摂って、冷え対策もして。実は夫が健康志向で、前々からもっと気をつけたほうがいいよと言われていたのですが、私もようやく意識できるようになりました。
もともと健康には関心があって、本を読んだり検索したりと、情報収集をしているんです。できるだけゆで卵などで手軽にたんぱく質を摂ったり、冷え対策に生姜を料理に使ったり。
特に冷えには厳しくて、夫がわが家にウォーターサーバーを導入してくれたのですが、常温の水しか出ないタイプでびっくり(笑)。家族が体を冷やさないために、あえてそうしてくれたみたいです。 健康に意識を向けることで、PMS症状も少しでも改善したらいいなと思っています。
夫・マサさんのPMSとまどい
「妻と話したり、本を読んだりと正しい知識を持つために勉強中。もっと自分にできるサポートはある?」
――マサさんはさきさんのPMS症状が出ているとき、率直にどんなふうに感じていますか?
最初の頃は、きつい言い方をされると、正直グサッときていました。でも、すぐに妻との会話でPMSを知り、周期的に同じようなパターンでやってくるものなんだなと理解して。そういう時期だから仕方ないと受け入れようと思いました。本人もコントロールできないようだし、こちらが何か言っても仕方ないんだろうなと。
夫は関西人ということもあってか、変な意味ではなくちょっと茶化したり、笑いに変えたりするのがうまいんです。私が明らかにイラついていると「そろそろ生理来るんちゃう?」とあえて言ってみたり。それはそれで、PMS真っ最中はムッとしてしまうこともあるのですが(笑)、深刻にとらえすぎないでいてくれるのはありがたいなと。あと、本も読んでたよね。
女性の生理について漫画で描かれた『生理ちゃん』という本があると知って、読んでみました。どのぐらいつらいのかは男性には体感できないけれど、漫画の中で、生理の痛みがげっそりとした表情で表現されていて、可視化されていると理解しやすいなと。高温期になると、急激に体調が変化するというのも描かれていて興味深かったです。
――他にも、マサさんがしてくれたことで、さきさんが助けられたエピソードはありますか?
PMSで私がイライラしているとき、キッチンなどですれ違いざまに「病院送りにならない程度なら、たたいていいよ!」と言ってくれるので、たまに軽くパンチしたり(笑)。
物理的に発散したほうがスカッとするかなと思ってね(笑)。
あとは、私を気づかって子どもを連れて出かけたり、家の中でも子どもと一緒に2階に行って遊んでくれたり。物理的に距離ができると気持ちが落ち着くことも多いので、一人にさせてくれるのは、30分でも1時間でも助かります。
――マサさんの気づかいが素敵ですね。お二人のようにお互いを理解するためにも、夫婦のコミュニケーションで意識していることは?
普段からよく会話しています。夫が在宅勤務が多くて時間を取りやすいこともあるのですが、仕事の休憩時間に10分でも15分でも話したり。娘が寝てから、夜の落ち着いたタイミングでも会話して、抱えているモヤモヤや心配ごとはその日のうちにスッキリさせたいなと……。と言いつつ、私はPMSでしんどいときは自分からはあまり話せなくて、よくそっちから聞いてくれるよね。
表情を見れば何かあるんだろうなとわかるから、意図的に質問することはありますね。「今日はどんな1日だった?」とか。
この聞き方はすごくいいなと思っていて、今日あったことを話しやすいんですよ。PMSで体調が悪いときも、自然な流れで言えるんです。こちらのつらさやしんどさのすべてを理解できなくても、対話を重ねて想像しようとしてくれる姿勢が、本当にありがたいなと思います。
ただ、できるサポートはしたいなと思いつつ、なかなか具体的には思いつかないこともあって……。夫側ももっとPMSについて正しく知ると、できることが広がるかもしれないですね。
そんなさきさん夫婦が「PMSの対処法」について婦人科医に聞きました
戸越銀座レディースクリニック 院長 里井映利先生
専門分野は女性医学。思春期から更年期以降まで、多くの女性の体の変化や症状と向き合い、適切な診療を提供している。
私のようにPMSで悩む女性は増えているのでしょうか?
PMSの認知度が上がって、受診される方は以前より増えていると思います。ただ、PMSで悩む方は昔からいたと思うんですね。PMSだと気づかなかったり、病院に行くほどではないと思っていた方たちが、検索などで情報を集めて、きちんと治療を受けるようになっているという印象です。
妻は出産から数年後にPMSかなと思う症状が出始めたのですが、出産や加齢も影響しますか?
直接の因果関係はありませんが、産後の授乳中はオキシトシンという幸せホルモンが出ていてストレスを感じにくいケースも。授乳が終わって本来の女性ホルモンの姿が見えたときにPMSを自覚することがあって、さきさんはまさにそのケースかなと思います。
加齢も、年齢が上がったからPMS症状が出やすくなるというデータはないものの、PMS症状は脳内の神経伝達物質が影響すると言われているんです。
要するに、ストレスや環境に影響を受けやすいということ。ライフステージが上がると、家庭でも仕事でも20代ではなかったような負担が増えることが多いですよね。ホルモンの波に、自分でコントロールできないようなストレスがプラスされると、PMS症状を感じやすいのではないかと思います。
私も娘が幼稚園に通い出してから忙しくなってストレスが増えて、PMSの症状を感じやすくなったかも。
確かに。生活の変化も影響しているんですね。
年齢的に、PMSと更年期を間違えてしまわないか心配になるのですが…?
PMSと更年期の違いは、女性ホルモンが維持されているのか、減ってきているのかどうか。判断基準は「生理が定期的に来ているかどうか」に尽きると思います。「今月は生理がなかった」など生理周期が乱れてきたら、更年期ということですね。
わかりづらいときは、採血をして調べるとホルモン量がわかるので、クリニックを受診すると確認できます。
PMSの症状は、やはり妻のようにむくみや頭痛、イライラが多いですか?
身体症状は、さきさんと同じようにむくみが多く、他の身体症状も血流が悪くなると起こるもので、むくみに由来していると思います。頭痛も血管性と言われていますし、腰痛や肩こりなどもそうですよね。精神症状の出方はさまざまなのですが、多いのはイライラと落ち込みです。
PMS症状かどうか判断に迷う方は、PMSラボに掲載されている「PMSチェック」もあるので、ぜひ試してみてください。うちのクリニックでは受診された方に回答してもらっています。ご自身でも、どのぐらい症状が深刻なのか、病院に行くかどうかなどの参考になります。 PMSの中でも、精神症状が強いときは「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性も。その際は早めに受診してほしいですし、婦人科と心療内科で連携しながら治療をしていきます。
やっぱり、むくみは目立つ症状のひとつなんですね。自分だけじゃないんだと少し安心しました。
月経前のむくみとイライラには相関関係があるというデータも。閉経前の女性を対象にしたアンケート調査で、むくみの症状が強い人ほど、イライラなどの否定的な感情が強いことがわかりました。やはりむくみがベースになっているんですね。
まさに私です…!
データもあると聞くと、説得力がありますね。
私はこれらの症状がつらくて受診したとき、漢方薬をお試しで処方してもらったぐらいで特にその後の治療は受けなかったのですが、受診してPMSだとわかったら、どんな治療法があるんですか?
クリニックで処方しているのは、低用量ピルと漢方薬です。低用量ピルは現在8種類ほど種類があり、30〜40代でも合うものを処方しています。
低用量ピルに抵抗がある方にはセルフケアの一つとしてサプリメントもおすすめ。クリニックでは、生理前に手軽に始められるサプリメントも取り扱っています。
そういったものをうまく取り入れてみてもよさそうですね。ほかにできる対策はありますか?
基本的なセルフケアで言うと、十分な睡眠や、バランスのいい食事、軽い運動をすることは大切です。運動はジョギングやウォーキングなどの軽い有酸素運動を。体を温める入浴もいいですね。
カルシウムやマグネシウム、ビタミンB6はむくみ緩和に役立つ栄養素と言われているので、マルチビタミンのサプリを摂ることもおすすめしています。
また大豆油や米油などの植物油に多く含まれ、ビタミンEの一種であるγ(ガンマ)-トコフェロール、γ-トコトリエノールには、むくみを軽減してくれる働きがあることがわかっているので、PMS対策には注目の成分です。PMSラボにも詳しく掲載されています。
あとは、PMSについてよく知り、今は体調が悪かったり、イライラしやすい時期だと自覚することも必要。無理をせず、例えばマッサージなどリラックスできるごほうびタイムをPMSの時期に持ってくるとか。反対に、大変な仕事をPMSのときに入れないようにするといった配慮もできるといいと思います。
夫婦でもできることがあれば、ぜひ教えてください。
私のところにPMSの相談に来る患者さんのほとんどが「会社や外ではイライラを我慢できるけれど、家族に対しては抑えきれない」とおっしゃるんですね。それは仕方ないことでもあるので、家族に生理前1週間はイライラしがちな時期だときちんと伝えておく。やはり夫にも、また理解ができるようであればお子さんにも、PMSについて正しい知識を持っておいてもらうのは大切なことだと思います。
\ PMSとうまく付き合うため /
対談後、100人隊さきさんが、生活改善してみました!
むくみ解消のマッサージで、PMSの症状も少し軽く
今回、里井先生にお話を聞いて、「むくみとPMSのイライラに相関関係がある」と知って驚きました。むくみがPMS症状のベースにあるとのことだったので、むくみ改善につながる食材や栄養素を摂ったり、むくみ解消のマッサージやストレッチを重点的にしてみたところ、いつものPMSのときよりも症状が少し軽くなった気がします。
今後は、先生がおっしゃったようにカルシウムやマグネシウム、ビタミンB6やγ(ガンマ)-トコフェロールを積極的に摂る食事も意識してみようと思います。
夫とは普段からよく話してはいるのですが、今回PMSについてより深く話せて、コミュニケーションの重要性を実感。以前にも増して、夫婦の会話の時間を大事にしています。
●お問い合わせ先
大塚製薬株式会社
PMSラボ
https://www.otsuka.co.jp/pms-lab/
Staff Credit
撮影/メグミ(さきさん&マサさん) 田村伊吹(里井先生) イラストレーション/オカヤイヅミ 取材・文/野々山 幸(TAPE)