LIFE

TAKARAZUKA STAR|ココロの景色

【花組・聖乃あすかさん】「お客様の前にやっと立てたあの日、幕開きの景色」【宝塚スター|ココロの景色】

  • TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色

2024.07.18

この記事をクリップする

あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

新連載スタート!

文字:TAKARAZUKA Star Interview

花組

聖乃あすかさん

聖乃さんの忘れられない景色
お客様の前にやっと立てたあの日、幕開きの景色

ASUKA SEINO

写真:ココロの景色・宝塚歌劇団花組男役スター聖乃あすかさん

ASUKA SEINO・Profile

2014年、宝塚歌劇団に入団。花組に配属される。3度の新人公演の主演、2度のバウホール公演主演を務め、今年は初の東上公演主演も経験。確かな実力と眩いほどの美しさに磨きをかけ、多くの人を魅了する男役スター。

宝塚歌劇公式ウェブサイト>>


そこにある物語や人の思いが、
“美しい景色”を作り出すのだと思う

ASUKA SEINO

私の心に残っている景色といえば凱旋門の展望階から眺めたパリの街並みです。今、私が見ている景色はフランスの方々が必死に戦い守ってきたものなんだなと、その歴史に思いを馳せたときに目の前に広がる景色はより鮮やかさを増し、その美しさに鳥肌が立ったのを覚えています」

パリを訪れたのは舞台『アルカンシェル』がきっかけ。第二次世界大戦におけるナチスドイツの占領下、パリの音楽や舞台、自由を守るために立ち上がったレジスタンスの戦いを描くこの作品に出演することが決まったとき、「実際にこの目でパリの街を見てみたい」と思ったそうです。

「旅の目的地のひとつである『レジスタンス解放博物館』には、実際にレジスタンスの方々が身につけていた衣服や戦いに使った銃、暗号手紙のやり取りなどたくさんの貴重な展示が。そこには資料や文献を読むだけでは伝わってこない“リアル”が存在し、作品への思いがより高まりました」

実際に訪れることでわかることや感じることは必ずある。だからこそ「実話に基づく物語を演じるときは、その舞台となる土地をよく旅します」と聖乃さんは続けます。

「『CASANOVA』ではイタリアのヴェネツィアへ。サンマルコ広場の真ん中に立ち“ボンジョルノ、ボンジョルノ、新しい人生!”と仙名さん※1演じるベアトリーチェになりきり歌ったことも(笑)。『MESSIAH‒異聞・天草四郎‒』では自分が演じた徳川家綱のお墓参りをしたり、飛龍さん※2と一緒に熊本の天草や長崎の島原も旅しました。原城跡など、作品と縁のある場所を訪れたのですが……。台風の影響で船が続々と欠航に。“このままだと島に取り残されてしまう!”と慌てて港を回り、なんとか海を渡れたものの旅館に着いたのは深夜2時。楽しみにしていた温泉にも入れず、海鮮も食べられず、想定外だらけの珍道中に。でも、今となってはそれもまたいい思い出です(笑)」

台風による曇天の下、荒れ狂っていた天草の海でさえ「その歴史や背景を重ね眺めると美しく見えた」と笑います。

美しい景色とは物語や人の思いが存在してこそ作られるもの。それを感じたときに目の前の景色が特別なものになるような気がします。今まで、そんな景色をたくさん見てきましたが、やっぱり私が一番忘れられないのは宝塚大劇場で見た景色。コロナ禍の休演や無観客公演を経て、やっとお客様の前に立つことができた日、幕開きで目にした景色です。当時は客席を半分に減らしての公演でしたが、それを感じぬほど大きな拍手が湧き上がり、客席には涙するお客様の姿も。たとえ歓声がなくとも、その拍手が、眼差しが、“おかえりなさい、待っていたよ”と言ってくれているようで……その温かさに心が震えました。会場が満席となり日常が戻ってきた今も、私はあの光景をよく思い出します。舞台が自分一人でなくたくさんの人と思いに支えられていることを、この公演は決して当たり前ではないことを、舞台に立てる奇跡への感謝を忘れないように。あの心に響く大きな拍手を思い出しながら、私は舞台に立っています」

※1=花組元トップ娘役、仙名彩世さん ※2=花組元男役スター、飛龍つかささん

LEEweb限定!

聖乃あすかさんに3つの質問!

1

必ず持って行く“旅の必需品”とは?

1

必要なものがありすぎて…。旅の荷物はいつも巨大に(笑)

私は旅行が大好きなだけに、旅行グッズにも興味がありまして、YouTubeなどでもよくチェックするんです(笑)。先日のパリ旅行で活躍した『フライトフラップ』も旅系ユーチューバーさんが紹介していたもの。形を自由に変えることができるスマホホルダーなのですが、スマホにダウンロードした映画やドラマを機内で見るのにとても役立ちました。

そんな旅行グッズを始め、「あれも必要かもしれない」「これも必要かもしれない」と、次々とスーツケースに詰め込んでしまう、私の旅の荷物はいつもとても多いです。飛行機の預け入れ荷物の上限が23kgなら、私のスーツケースは行きからすでに20kg超え(笑)。もちろん、帰りは上限をオーバーしてしまいがちなので。「どれだけ手荷物で機内に持ち込むか」がいつも大きな課題に。パリの帰りの飛行機ではコートもニットも靴も、とにかく“一番重いもの”を身につけて、なんとか乗り切りました(笑)。

あれもこれもと荷物が増えてしまうのは、宝塚の全国ツアーでも同じです。寒暖差に備えてあらゆる洋服を詰め込み、普段ウォーミングアップに使っているアイテムも全て持って行くので、いつも私は巨大な海外旅行用のスーツケースになってしまうんです(笑)。

2

聖乃さんの“お気に入りの場所”はどこですか?

2

横浜の山下公園、氷川丸のすぐそばのベンチ

今、パッと頭に浮かんだのは横浜の山下公園です。横浜は私の地元なのですが、中でも山下公園は、学生時代に参加したダンスのイベントでよく訪れた場所でもあって。『横浜よさこい祭り』で踊ったり、たくさんの思い出が残っています。

宝塚歌劇団に入団してからは、全国ツアーなど神奈川での公演のときに立ち寄る場所に。朝の山下公園で花組のみんなとラジオ体操をしたこともあります。公園には氷川丸という大きな船が停泊しているのですが、その近くのベンチが私のお気に入りスポット。そこに座り、横浜の美しい景色を眺めながらぼーっとするのが好きなんです。

3

最近撮ったお気に入りの写真は?

3

パリのエッフェル塔をバックに、母と一緒に撮った写真

最近の一番のお気に入りの写真といえば、もうすぐ18歳になる愛犬・キャンディの後ろ姿です。私ではなく妹が撮った写真なのですが、哀愁漂う感じがたまらなく愛おしくて、ついつい何度も見てしまうのです。

私は普段からよく写真を撮るので、スマホの中には沢山のお気に入り写真が入っているのですが……その中から一枚選ぶならば、エッフェル塔をバックに撮った母とのツーショット写真でしょうか。実はパリ旅行は母との親子二人旅だったのですが、これまたかなりの珍道中でして(笑)。凱旋門では、ショッピングで疲れ果てた母が、「階段はもう登れない」とまさかのギブアップ。あの感動のパリの街並みは、母を地上に置いたまま展望階から一人で見た景色だったのです(笑)。

ちなみに、その旅では私の荷物の多さが母ゆずりであることも再確認。パリのホテルでは「これだと23キロを超えてしまう!」「重いものは身につけるのよ!」と親子で大騒ぎ。飛行機の預け入れ荷物の上限と戦いながら必死にパッキングしたのも、今ではいい思い出です(笑)。

写真:聖乃あすかさん

NEXT STAGE


ファンタジー・ホラロマン
『エンジェリックライ』

レヴュー グロリア
『Jubilee(ジュビリー)』

写真:ファンタジー・ホラロマン 『エンジェリックライ』 レヴュー グロリア 『Jubilee(ジュビリー)』
©宝塚歌劇団

素行の悪さから能力を封じられ人間界に堕ちた天使アザゼル。天界へ戻るためトレジャーハンターのエレナとともにソロモンの指輪を狙う。主演:永久輝せあ、星空美咲

宝塚大劇場
9月28日〜11月10日

東京宝塚劇場
12月7日〜2025年1月19日


Staff Credit

撮影/柴田フミコ 取材・文/石井美輪
こちらは2024年LEE8・9月合併号(7/5発売)「ココロの景色 vol.1 聖乃あすかさん」に掲載の記事です。

▼ 「ココロの景色」連載一覧はこちら

文字:TAKARAZUKA Star Interview

TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ココロの景色

宝塚歌劇団男役スターが登場する人気連載の第2弾! あのとき、あの瞬間、その目で見た、忘れることができない風景とは? そこから紐解く、タカラジェンヌの大切な思い出、美学、人生の歩み。

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる