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世界の見え方が変わる すごい! 天気の話

「空と天気の話」に今あらためてフォーカス!

気象予報士が教える【すごい「天気・気象」の話】天気に詳しくなると、どんないいことがありますか?

2024.07.07

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暮らしに役立つ! 子どもと盛り上がれる!

世界の見え方が変わる
すごい! 天気の話

私たちの生活に密接にかかわっている天気。空を見ない日はなく、挨拶代わりに天気の話をすることも多いけれど、実はまだまだ知らないこともたくさん。子どものセンスオブワンダーを刺激し、大人もためになる、「空と天気の話」に今あらためてフォーカス!

「天気」にまつわる書籍が、シリーズ累計50万部の大ヒット!

空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑
荒木健太郎 KADOKAWA ¥1375

『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎 KADOKAWA ¥1375

雲、雨、虹、風など身近な天気から珍しい気象現象まで、豊富な写真とイラストで詳細に解説。シリーズ3冊で累計50万部を売り上げる人気。

編集担当・川田央恵さんに聞きました

「天気の話」が今、こんなに盛り上がっているワケは?

“濃すぎる”内容が、子どもにも、大人にも刺さった!

『天気の図鑑』シリーズは、雲研究者である著者の『子どもたちに気象に興味を持ってほしい』という思いで作られました。でも開いてみると子ども向けという枠にとどまらず、解説は非常に専門的で驚くほどの情報量。壮大で美しい雲や空の写真も多く、目で見て楽しむこともできて、大人の知識欲も満たされる内容になっています。子ども向けだからと易しくしすぎなかったことが、かえって満足度を上げられたのかもしれません。

 

このシリーズを読むと、今まで“なんとなく”だった天気や気象について『実はこんな理由や仕組みがある』とわかり、新鮮な喜びや楽しさに出会えるのではないでしょうか。近年は、記録的な暑さや豪雨などもあり気象や気候に対する世の中の関心が以前より高まっているのを感じます。ここまで多くの方々が手に取って楽しんでくれているのは、そうした流れもあるように思います

川田央恵さん

イラスト あれ“にじ”じゃないんだよ!
佐々木恭子さん

今回天気のことを教えてくれるのは

佐々木恭子さん

気象予報士

テレビのバラエティ番組のディレクターを経て、2007年に気象予報士の資格を取得。現在は予報業務のほか、資格取得のためのスクールを主催。「天気の図鑑」シリーズの制作にも協力。



\佐々木さんに質問/

天気に詳しくなると、どんないいことがありますか?

いつもの風景が違って見えます

「知識があることによって、漠然と見たり感じたりしていた天気や現象が『こういうことか』とわかるように。目の前の景色が変わる、そういう新鮮な喜びがありますね。『天気の図鑑』にかかわってからは雲にも詳しくなり、以前より空をよく見るように。雲の形や色がくっきり見えたり、おもしろい現象を意識的に見つけたりできるようになって、暮らしが豊かになりました」(佐々木恭子さん)

気象予報士ってどんな資格?

さまざまなデータから気象を予測し、予報を作る

「気象庁が提供するものをはじめ、さまざまなデータを解析して気象を予測する国家資格です。これ自体は単に資格であり職業名ではありません。テレビの天気予報等で気象庁の予報をそのまま発表するなら資格は不要ですが、予測して天気予報を作るというのは、気象予報士の資格を持っている人だけができることです」(佐々木恭子さん)

気象予報士になろうと思ったきっかけは?

番組制作の仕事に生かしたいという思い

「テレビ番組のディレクターの仕事をしていたとき、撮影などのスケジューリングのために自分で天気予報ができないかと思ったのです。天気や気象が好きというより、仕事に生かせそうだと感じ気象予報士の資格を取得しました。でも『天気の図鑑』にかかわってより詳しくなると、気象っておもしろい!と心から思うように」(佐々木恭子さん)

気象にかかわる仕事って、どんなものがありますか?

予報業務のほか商品開発なども

「気象予報士の資格所有者は現在11000人以上いて、予測業務のほか、例えば保険やアプリなど商品やサービスの開発にもかかわることもあります。また気象予報士ではありませんが、気象データとビジネスデータを読み解き、企業のビジネス創出や課題解決をする『気象データアナリスト』という仕事も、今後ますます注目されそうです」(佐々木恭子さん)

知っているようで実は知らない

LEE100人隊が聞きたい! 天気・気象のなぜ・なに

気候変動、雨の予測、月の見え方……生活の中で感じるさまざまな空と気象の「?」に、佐々木さんが答えます!

イラスト Questions

LEE100人隊から

春や秋が短くなっている気が。このまま日本は夏と冬だけに?

No.087 ととさん

春と秋は短くなる可能性も。日本は気候変動の影響を受けやすい

「去年は10月に30℃の日があったり、秋はどこへ?という感じでしたね。おそらく四季がなくなることはないと思いますが、春や秋が短くなっていく可能性は考えられます。主な原因は地球規模の気候変動の影響と考えられますが、特に日本がある中緯度の地域は、世界の中でも気温上昇の幅が大きいといわれています」(佐々木恭子さん)

今年は暖冬でしたが、どんな理由で暖冬になるのでしょうか?

TB ミノリさん

偏西風や海面水温などの条件が、複雑に絡み合って決まります

イラスト 気象庁のサイトや報道発表をチェック

「暖冬か寒冬かをはじめ、日本の気候は偏西風や太平洋赤道域東部の海面水温など、複数の要素の複雑な絡み合いが影響します。気象庁では毎年、暖冬だったか、温暖化の影響があるのかなど季節の振り返りを、冬のまとめは2月25日、夏のまとめは9月25日頃に発表します。気象庁のサイトや報道発表をチェックしてみるのもおもしろいですよ」(佐々木恭子さん)

線状降水帯の発生で心配が増えました。予測はできるのでしょうか?

No.008 すずさん

正確な予測は難しい。段階的に精度を上げていく計画

「線状降水帯を含む集中豪雨の発生頻度は、直近45年で2倍に。7月に限定すると約4倍になっていて、温暖化が進むと極端な大雨や線状降水帯の発生頻度がさらに上がるといわれています。気象庁では、昨年から広域で半日前からの予測を発表していて、今年は県単位、5年後には市町村単位で予測を出せるように、予測精度を上げるべく研究を進めているそうです」(佐々木恭子さん)

鹿児島では「降灰予報」があります。ほかの場所でも「その土地ならでは」の予報ってありますか?

No.062 みきちきさん

「雪かき予報」や「雲海予報」なども

「気象庁発信ではありませんが、北海道放送(HBC)では雪かきが必要かどうかの『雪かき予報』というのがあるよう。降灰や雪かきは生活に密着した防災的な観点のものですが、観光やレジャー目的の予報も。北海道のトマムには雲海の予報、愛媛の肱川には川面を下る名物の霧『肱川あらし』を予報するユニークなものも」(佐々木恭子さん)

子どもたちから

虹はどこから見ても、同じ形ですか?

No.093 まいちさんの娘さん

虹は半円ではなく円形! 高い場所からだと円形に見えることも

イラスト 虹のイメージは、実は円形。太陽と観測者(自分)を結んだ延長上の位置(対日点)を中心にした円形を描いています

「虹は半円のイメージがありますが、実は円形。太陽と観測者(自分)を結んだ延長上の位置(対日点)を中心にした円形を描いています(上図参照)。虹には、内側のくっきりした『主虹』と、その外側にできるやや薄い『副虹』があり、主虹は対日点から42度の位置に、副虹は50度の位置に現れます。地上から見ると円の下半分は地平線の下に隠れてしまうため半円に見えることが多いですが高層ビルの上階や飛行機から見ると、きれいな円形が見えることも」(佐々木恭子さん)

天気予報を見ていると、小笠原諸島がいつも晴れでうらやましい。どうして?

No.013 ましゅさんの息子さん

太平洋高気圧におおわれやすいため

「太平洋の真ん中にできる温暖な高気圧を『太平洋高気圧』といいます。実際には小笠原諸島が毎日晴れというわけではありませんが、特に夏に晴れ間が多いのは、太平洋高気圧におおわれやすいためです。ただし小笠原諸島は台風の通り道ではあるので、時期によっては雨が続くこともあるようです」(佐々木恭子さん)

低いところにある月は赤いのに、高いところまで上ると、白っぽく変わるのはどうして?

No.097 バマさんの息子さん

目に届くまでの距離によって、届く光の種類が変わるから

「波長の短い青や紫の光は空気中で散乱して遠くまで届きにくく、波長の長い赤やオレンジの光は遠くまで届きやすいという特性が。上ったばかりで月が低い位置にあると、光が目に届くまでの距離が長くなり暖色系の光だけが残るため月が赤く見えます。高度が上がると地上までの距離が短くなるため、黄色の光が増え白っぽく見えるように。これは、太陽の高度が低い朝や夕方に空が焼ける仕組みと同じです」(佐々木恭子さん)

「猫が顔を洗うと雨が降る」って本当?

No.082 ひでみんさんの息子さん

残念ながら違います。関係があるのは湿度のよう

自然現象や生物の行動から天気を予測することを『観天望気』(かんてんぼうき)といいます

「自然現象や生物の行動から天気を予測することを『観天望気』(かんてんぼうき)といいます。『猫が顔を洗うと雨』『ツバメや蜂が低く飛ぶと雨』など、生物にまつわる観天望気はいろいろありますが、湿度と関係するものが多いよう。でも湿度の高さと雨が降るかは別なんですね。また『カエルが鳴くと雨』など、原因と結果が逆なものも。生物にまつわる観天望気は、残念ながら確実性は低いようです」(佐々木恭子さん)


Staff Credit

撮影/田村伊吹 イラストレーション/トミナガシンペイ 取材・原文/遊佐信子
こちらは2024年LEE5月号(4/6発売)「世界の見え方が変わる すごい! 天気の話」に掲載の記事です。

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