子どもでもピルは飲める?性的同意とは?
【女の子ママの「性教育」】妊娠、避妊…優木まおみさんが産婦人科医・高橋幸子先生に聞く
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優木まおみ
2024.01.04
生理や妊娠・避妊、性的同意について、きちんと伝えられますか?
女の子ママが知りたい
心と体の性教育
反響が大きかった「男の子ママの性教育」特集の女の子編。同性だからこその気まずさや恥ずかしさがあり、また〝望まぬ妊娠〞というリスクも心配。
避妊や、最近よく聞く〝性的同意〞についてなど、伝え方が難しいことが盛りだくさん! 女の子ママである優木まおみさんと一緒に学びます。
4月号「男の子ママの性教育」特集に読者の反響大!
異性でわからないことが多い、男の子への性教育特集が大好評! 年齢別のおちんちんの成長についての図解や、「エッチな動画を検索していた!」などの読者のリアルなお悩みにも回答。
●同性でも子どもへの伝え方に悩む。女の子向けの特集もぜひ!(LEEメンバー トミーさん)
●辻元さんの質問や先生の回答がわかりやすく共感できた!(LEEメンバー さらさん)
●Q&Aがすべて目からウロコ。悩める親の頼りになる記事でした (LEEメンバー きくさん)
優木まおみさんの4つのギモンに高橋幸子先生が答えてくださいました!
質問したのは?
優木まおみさん
女の子2人のママ
1980年、佐賀県生まれ。9歳、6歳の2人の女の子の母。タレント、モデルとして人気を集め、LEEのファッションページでも活躍。また、産後にピラティスインストラクターの資格を取得。著書に『マオビクス 背骨から身体を変えるおうちピラティス』(リブレ)など。
答えてくれたのは?
高橋幸子さん
性教育の専門家
埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター産婦人科医。年間120回以上、全国の学校で講演。
高橋幸子先生は、著書や監修本も多数
好きな人の話題も、生理のことも。娘たちが何でも話せる親でいたいですね
優木まおみさん
『あなたの体は、あなたのもの』自分の心と体を尊重できる性教育を
高橋幸子さん
まおみのギモン①
娘たちに教えた“プライベートゾーン”。プールの更衣室で混乱も?
優木 わが家の娘たちは9歳と6歳。性教育をしたほうがいいんだろうなと思いつつ、何から始めたらいいのかわからず…。ただ、プライベートゾーンについては大切だと聞いて教えています。
高橋 いいですね。性教育でまず最初に伝えたいのがプライベートゾーン( ※1)について。胸、お尻、性器、口は他人に見せたり、触らせたりしないことは、ぜひ3歳頃から伝えてください。
優木 実は、私自身が幼児期に、小学校高学年ぐらいの男の子に体を触られた経験が。悪ふざけだったと思うのですが、そのシーンの残像や嫌な感覚は残っていて。当時は訳がわからず、誰にも伝えることができなかったのですが。
高橋 それは、つらい経験をされましたね。
優木 娘たちが私と同じ思いをしないように、何かあったら親に伝えてほしいから、プライベートゾーンについてはしっかり教えておく必要があるんじゃないかなと。繰り返し話していたら、最近では他人がいるところで着替えるときに、タオルで体を隠すように。
高橋 すごいですね! そういう感覚を、早くから身につけられると安心です。
優木 ただ少し気になることがあって、プールなどに行くと、女子更衣室でママと一緒に男の子が着替えていることがありますよね。娘たちに「プールや温泉で、家族ではない女性の前で裸になることは仕方ないけど、男の子には見せないのが普通だよ」と言いすぎて、「ここで着替えていいの?」と聞かれて困ることが。
高橋 公衆浴場などの混浴年齢は、多くの自治体で6歳までになっていますが、確かにプールなどの更衣室は明確な規定がない。大人の判断にゆだねられる部分が。
優木 もちろん、それぞれの家庭に事情があるし、男の子の被害の話も聞くので、ひとりで男性更衣室に入らせるのが心配な気持ちもわかるんですけどね…。
高橋 とはいえ、すべての危険から子どもを遠ざけることはできないので「触ってきたりする人がいたら逃げておいで」「大きな声を出して」など、いざというときのSOSの出し方は、男女ともに教えておいてあげたいですね。何か嫌なことがあっても話せるように、普段から性の話をタブーにしないことも大切。オープンな親子関係を目指したいですね。
女の子の性教育で知っておきたい 用語&トピック
※1 プライベートゾーン
性教育で、最初に子どもに教えてほしいのが、“プライベートゾーン”。他人に見せても触らせてもいけない、性に関係する体の大切な場所を指し、胸、お尻、性器、口が当てはまります。 「水着で隠れるところ」だと伝えるとわかりやすいはずです。 食事をする口も「命をつなぐ大切な場所」として、プライベートゾーンのひとつだとしっかり教えましょう。
まおみのギモン②
赤ちゃんがどうできるかファンタジーにとらえている様子。正しい知識を教えたほうがいい?
優木 先日娘たちが「なんで私たちはママのところに生まれたのか」という話をしていたんです。長女が「神様が選んで、このおうちに行きなさいって決めたんだよ」なんて言っていて、こんなふうにファンタジーにとらえているんだなと知りました。
高橋 絵本か何かで、そういうお話を読んだのかもしれませんね。
優木 その考え方も素敵だし、よく「パパとママが愛し合って生まれたんだよ」なんて言い方もするけれど、はたしてそれでいいのかなと。子どもができる過程や妊娠の仕組みなど、いずれは伝えなきゃと思うのですが、そのときはすぐにいい説明が浮かばなくて、うやむやになってしまいました。
高橋 お子さんから性の話や質問があったとき、なかなかとっさには答えられないですよね。でも、性教育について伝えるチャンスでもあるので「ちゃんと調べてママの口から伝えるから、少し待っててね」と言って、一度仕切り直しを。そのままにしてしまわず、自分なりに調べたら、必ず親から再度声をかけること。触れないと、性の話にふたをしてしまうことになり、子どもからも話してくれなくなってしまいます。
優木 そうなんですね! 確かに、インターネットなどでいろいろと知ってしまう前に、大事なことは親の言葉で伝えたいですね。
高橋 性教育のタイミングに悩む親は多いのですが、早いに越したことはないと思います。
優木 知り合いの息子さんが、小学1年生のときに好きな女の子がいて、あるとき「好きな女の子の名前+裸」で検索していたそうなんです! この年齢でも、好きな女の子の裸が見たいという感覚があるんだと、本当に驚きました。
高橋 性的なワードを検索しているエピソードは、女の子でもよく聞きますよ。
優木 うちの娘たちもそういう目で見られているかもしれないし、娘も好きな男の子がいたりするので、実は興味があるのかも。あと、長女は小3なのですが体の成長が早くて、そろそろ生理もくるかもしれないなと思っています。
高橋 第二次性徴についても、少しずつ話していきたいですね。
優木 私自身は親に丁寧に説明された記憶がなくて、世代的に生理の話を避ける家庭もありましたよね。そうではなくて、経血は赤ちゃんのベッドになるはずだったものだし、決して嫌なことじゃない。令和の時代は、正しく子どもたちに教えていきたいなと。
高橋 本当にそのとおりです。まずは、親が恥ずかしい、気まずいなどと気負いすぎないこと。ポジティブな言葉とコミュニケーションで伝えていきましょう。
まおみのギモン③
いつも好きな人がいる長女。恋愛に積極的な娘に、話しておきたいことは?
優木 長女はいつも好きな人がいてキュンキュンしていて(笑)。もう少し大きくなって彼氏ができたりしたら、娘の様子でわかるかなと思うのですが…。例えば、性的な経験をする年齢は、低くなったりしているのでしょうか?
高橋 高校生、大学生の性交経験率は下がっているのに、中学生は増えています。中学生女子の性交経験率は4・5%で、100人に4人だと考えると多いですよね。
優木 衝撃ですね…。
高橋 それなのに、学校の性教育では「はどめ規定(※2)」があり、妊娠に至る過程である性交については扱わず、避妊について教えるのは高校生になってから。避妊の知識がないままセックスを経験している女の子が少なからずいるんです。
今年度から、性被害について教える「生命(いのち)の安全教育(※3)」が始まりましたが、学校の性教育は十分とは言えない状況。
はどめ規定
学習指導要領にて、「〜は取り扱わないものとする」といった文言で、学習内容を限定した規定のこと。この規定のために、日本の学校教育では性交について教えることができないのが現状。小5で人間の誕生、中1で生殖、中3で性感染症予防のためのコンドームについて、高校で避妊については教えるものの、いずれも妊娠までの経過は取り扱わないため、学校での性教育の不足が指摘されています。
※3 生命(いのち)の安全教育
2023年4月から、子どもを性暴力の当事者にしないための「生命(いのち)の安全教育」が公立の小中高校でスタート。「性暴力とは何か」「被害を受けた人は決して悪くない。悪いのは加害者」といった考え方を教える画期的な試みであるものの、「性に関する指導ではない」とされており、道徳の授業扱い。実施内容も自治体や学校ごとに差があるのが現状。過去に自分が受けた被害に気づく子どもが増える可能性があり、二次被害がないよう、受け止める大人の適切な対処が求められます。
優木 特に避妊については、親から教えておきたい。ちなみに、子どもでもピルは服用できますか?
高橋 低用量ピルは、女性ホルモンのお薬で骨の一部の成長を止めてしまう副作用も。まだ身長を伸ばしたい場合はすすめませんが、月経が始まっていれば、思春期でも問題なし。
避妊は、男性ができるコンドームと女性のピル、両方使うのがベストではありますが、親から選択肢を提示して、子ども自身が選べるといいですね。性交後に飲むことで妊娠を防ぐ緊急避妊薬(アフターピル)(※4)の存在も話しておきたい。いざというときに、身を守ることができるはずです。
※4 緊急避妊薬(アフターピル)
避妊に失敗した、または、避妊せずに行った性交後、72時間以内に緊急的に用いる避妊薬のこと。手に入れるには、病院かオンライン診療で、医師の処方が必要。若い世代が薬局などで購入できるように市販化に向けて議論され、11月から試験的運用も始まります。
まおみのギモン④
性的同意、HPVワクチン…思春期前に親子で知っておくべきことは?
優木 ほかにも、思春期を前に伝えられることはありますか?
高橋 “性的同意”(※5)についてはぜひ教えてあげてほしいです。
優木 最近、社会にも浸透してきた感じがしますよね。若い世代だけじゃなくて、長い付き合いの夫婦間でも同意はずっと必要だと。
高橋 まさにそうですね。ベースとして言っておきたいのが 「あなたの体はあなたのもので、いつ誰に見せるか、触らせるかは自分で決めていい」ということ。
プライベートゾーンを教えるときに、他人に見せない、触らせないといった警戒心をあおるだけでなく「自分の体は自分のもの」ということも伝えられるといい。相手を尊重する気持ちにもつながります。
※5 性的同意
セックスをはじめ、手をつなぐなどその他すべての性的な行為に対して、その行為を積極的にしたいかどうか、お互いの意思を確認すること。初対面、カップル、夫婦など、どんな関係性でも毎回とるべきだと言われています。
優木 自分も相手を大切にする気持ちを育むために、子どもにしっかり愛情を伝えていきたいです。
高橋 そうですね。そして万が一、子どもの性的同意が尊重されず嫌な思いをしても、親は受け止める心の準備を。専門機関とつなぐことも大人の役目なので、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター「#8891」の電話番号は覚えておいてください。
優木 子どもがさらに傷つかないように気をつけたいですね。
高橋 また、思春期になったら、HPVワクチン(※6)の接種についても検討を。小6になると定期接種のお知らせが自治体から届き、14歳までなら2回の接種で終了。高校生までなら、3回の接種が必要に。
優木 ワクチンは子どもの体に入るものだから、話し合いながら進めたいと思います!
※6 HPVワクチン
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンで、HPV感染症や、子宮頸がんのリスクが減少。小6~高1の女の子が、定期接種の対象に。
次回は「SHELLYさん『性的同意』を子どもにどう教えればいい?」をご紹介。
Staff Credit
撮影/HAL KUZUYA ヘア&メイク/TOMIE(優木さん) スタイリスト/石上美津江(優木さん) イラストレーション/あべさん 取材・文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2023年LEE11月号(10/6発売)「女の子ママが知りたい! 『心と体の性教育』」に掲載の記事です。
※対談内のエピソードは、優木さんのご家族の許可を得て公開しています。
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