連載
KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、デンマークが誇る名作“Yチェア”の素晴らしさを、新たな気持ちで。
石井佳苗さん
Kanae Ishii
スタイリスト
「カッシーナ・イクスシー」にて10年間勤務後、独立。雑誌や書籍、広告など多分野にわたり活躍。石井さんがデンマーク・コペンハーゲンを訪ねた特集も要チェック!
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08.
[椅子]Chair
Brand:Carl Hansen & Søn
カール・ハンセン&サン
Item:CH24
CCH24(Yチェア)
実際に座り、立ち上がり、眺めて。この椅子の素晴らしさは、想像以上です
ハンス J.ウェグナーによってデザインされた、CH24。通称“Yチェア”として愛されるこの椅子は、インテリアに興味のある方には、すでにおなじみかもしれません。それでもやはり、あらためて私の言葉で紹介したい。今回は、そんなふうに考えています。
以前、年を重ねた両親へ椅子を贈ろうと考えていたときに、真っ先に思いついたのが、このYチェアでした。数ある中から選んだ理由は、デザインの美しさのみならず、暮らしの中でのさりげない動きに、ストレスを感じさせないから。背もたれと一体になったアームに、ゆったりと腕を預けて座れる安心感。それでいて、立ち上がるときには、そのアームが邪魔にならず、スムーズに動ける軽快さ。言葉にすると当たり前のようですが、この条件をクリアする椅子は、実はなかなか希少なのです。
今回、縁あって製造現場を訪ねましたが、驚いたのは、いまだ職人による手作業が多いこと。ペーパーコードの座面を張るのはもちろん、組み立ても磨きも手で一つずつ確かめるように進めます。それはまさに、デンマークのクラフトマンシップの真髄を感じる光景でした。
唯一無二の存在感を守りながら、素材やカラーの新たなバリエーションも近年発表されているYチェア。進化をやめないカール・ハンセン&サンの柔軟性も相まって、発表から70年以上の時を経ても魅力が色あせず、私たちの“今”の暮らしに寄り添ってくれるのだと思うのです。
同シリーズのフットスツールCH53とのセット使いも、石井さんのおすすめ。「両親には、脚を伸ばして1人がけソファ感覚でくつろげるよう一緒に贈りました」(石井佳苗さん)。独立したスツールとしても活躍
発表当時、画期的であると賞賛を浴びた、背もたれとアームが一体となったデザイン。それにより、ゆったり斜めに座れるのも魅力。「ウェグナーの写真を見ると、こんな角度で座っていることが多いんです。彼自身の暮らしの中から生まれたデザインなんですね」(石井佳苗さん)
Designer:
Hans J. Wegner
Denmark, 1949
どの角度から見ても、美しい姿。長く愛せる名作を、まずは1脚からでも
アームと背もたれを一体化した斬新な構造は、ウェグナーが中国明朝の椅子にヒントを得てデザインしたもの。日本で有名な“Yチェア”の愛称は背面の形状が由来。幸福を呼ぶとされる鳥の胸骨に似ていることから“Wishbone chair”の別名も。CH24(ビーチ材、ソープ仕上げ、ナチュラルペーパーコード・W55×D51×H76×SH45㎝)¥91300、上記掲載のフットスツール CH53(W50×D38×H48×SH43㎝)¥78100〜/カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア東京
Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2023年LEE10月号(9/7発売)『スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」』に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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