【星組・暁 千星さん】自分の人生なんだから、自分のために生きたほうがいい【宝塚スター|ことばの力】
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TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力
2023.04.20 更新日:2023.11.09
気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?
「自分の人生なんだから、自分のために生きたほうがいい」
Chisei Akatsuki
2012年、宝塚歌劇団に入団。月組に配属される。長い手足を生かしたダイナミックなダンスと華やかな舞台姿で観客を魅了する男役スター。昨年、星組へと組替え。新しいステージでの活躍に、さらなる注目が集まっている。
宝塚歌劇公式ウェブサイト>>
自分らしく歩めるようになったとき、舞台に立つのがより楽しくなった
「バレエを習い始めたのは5歳の頃。知人のバレエの発表会を観に行ったときに客席でクルクルと踊っていたらしくて。それを見た母が習わせたみたいなんです」
子どもの頃から体を動かすのが大好きだった暁さん。
「ただ、体を動かすのは得意でも勉強は好きではなくて。今でも覚えているのが泣きながら勉強をしていたことです。幼い頃から私は大の負けず嫌いでもあって。やりたくないけど、負けたくないから、泣きながら机の前に座る、そんな私の姿を見るのがつらかったのでしょうか。普通は“勉強しなさい”と言われると思うのですが、わが家は逆で、“そんなに頑張らなくてもいいんだよ”と言われていました(笑)」
両親から言われたのは「悪口を言ってはいけません。優しく思いやりのある人になりなさい」だけで、「あとは基本的にのびのびと自由に育てられた」と暁さんは続けます。
「好きなことにはいくらでも熱量を注ぐことができる、この性格もそんな自由な環境の中で育った気がします」
そして、飛び込んだ大好きな宝塚の世界。暁さんはその性格をいかんなく発揮して努力を積み重ねます。音楽学校時代、皆が帰省する長期休暇には誰よりも早く学校に戻って一人で自主練を積み重ね、歌劇団入団後も早朝の誰もいない稽古場で踊り続けました。が、好きなことに打ち込むだけで楽しかった日々にやがて暗雲がかかり始めるように……。そのきっかけになったのが初めての新人公演でした。
「演じたのは二枚目ではなく三枚目寄りの役だったのですが、まだ芝居をよくわかっていなかった私には難しくて。演じるどころか大きな声を出すだけで終わってしまった。それが情けなくて恥ずかしくて……。その頃から、周りの人の目や評価が急に気になり始めてしまったんです」
周りからの「キラキラしている」「華がある」という褒め言葉も「当時は怖かった」と振り返ります。
「とてもありがたいことなのですが、キラキラや華は自分で意識して生み出しているものではなく、確たる実力とは違う曖昧なもののように感じてしまって。それがなくなってしまったら私には何が残るんだろう……と怖かったんです」
自信を失い芝居にも人に対しても臆病になり内にこもるように。そんな暁さんを変えたのが、月組トップスターの月城かなとさんが届けてくれた「自分の人生なんだから、自分のために生きたほうがいい」という言葉だったそうです。
「暁千星としての評価や他人の目ばかり気にして、自分自身をちゃんと見れていなかったんですよね。そこに気づけてからは、稽古場でも緊張しなくなりましたし、自分らしく振る舞えるようになり、それまで苦手意識があったコミュニケーションも積極的に取れるように。それがまた私の視野をグンと広げてくれました。役者としての技術だけに目を向けるのではなく、自分自身の経験や成長も大切にできるようになった今、とても楽しいです。昨年は月組から星組へと組替えになりました。そこでも、新しいことを経験しながら、毎日を大切に過ごしていきたいです」
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【暁 千星さんに3つの質問!】
Q1:
暁さんが“自分らしく”歩むために大事にしていることとは?
よいときも、悪いときも、どんな自分も受け入れること。
私は周りの方から「無邪気」や「天真爛漫」と言われることが多いのですが、最近はそんな自分の性格を隠さずに表に出せている気がしています。それだけでも十分に自分らしく過ごせていると思うのですが、心がけていることがあるとしたら「無理をしないこと」でしょうか。
その日によって、体調や気持ちは変わります。そんな自分も無理せず受け入れるというか。そこで「元気だ!」「できる!」と自分に嘘をついて頑張ることも、ときに必要な場合もありますが、それが続くといつか歪みが生まれてしまう。
また、その嘘は周りにいる人やお客様にも伝わってしまうと思うんです。“苦しい”から生まれてくる素晴らしいものも沢山ありますが、明るさや元気を届けるような素敵なものはきっと“楽しい”の中で生まれる。本気で舞台に挑むのは大前提、ただ、肩の力は入れすぎない。その時々、良い意味でリラックスして、楽しむことも忘れずに、前に進んでいきたいと思っています。
Q2:自分自身の“褒めてあげたいところ”と“叱りたいところ”を教えてください。
暁千星は「とても穏やか、だけど、面倒臭がり」な人間です(笑)。
褒めてあげたいのは“穏やかなところ”。自分の持っている気持ちは必ず周りに何かしらの影響を与える。だからこそ、穏やかでいたいと思っているのですが、もともと平和主義ですし、よい環境の中にいるので、怒ることがめったにないんです。
叱りたいのは“面倒くさがりなところ”ですね。好きなものにはウワッとのめり込むのですが、そうじゃないものにはまったく興味がない、基本的に私は“0か100か”の極端な性格なので。
掃除に関しても“まったくやらない”か“トコトンやる”かの二択しかなくて、“適当でもいいから毎日掃除する”という中間が存在しないんです。休日も同じ。やりたいことが沢山あるときは覚醒してウワッと予定を詰めて動き回ることもあるのですが、そうじゃないときは一日中リビングのソファの上。そこで寝転んだまま、日が暮れるまで、ゲームをやったり、漫画を読んだり、スマホで動画を見たり……。ダメダメな休日を過ごすこともあります(笑)。
Q3:
男役11年目、貫禄や色気をはじめとする大人の魅力がグンと増したと評判の暁さん。その秘密を教えてください。
コロナ禍で大量に見返した、宝塚歌劇団の過去作品の数々。
男役10年目を迎えたとき「もっと男役として、自分の中に確たる軸を作りたい」と思うようになりました。また、その時期がコロナ禍と重なり、意図せずできてしまった時間の中で、自分にとっての男役のヒントを探すべく、たくさんの先輩方のあらゆる作品を見返したんです。それはもう朝から晩まで何本もの作品を。そこで感じたたくさんの「かっこいい!!」が自分の引き出しの中に入ったのでしょうか、ありがたいことに、それ以降「男らしくなったね」と言っていただくことが増えました。
ちなみに、沢山の作品を見返したものの、芝居で迷ったり、男役としての自信がなくなったとき、見返す作品というのはずっと変わらなくて。それが、真矢みき(現・ミキ)さん率いる花組のショー『ダンディズム!』と、高嶺ふぶき(現・たかね吹々己)さん率いる雪組のショー『La Jeunesse!』なんです。『ダンディズム!』はハードボイルドの場面が痺れるほどにかっこよく、『La Jeunesse!』は黒燕尾の場面の途中で高嶺さんがセリフを言うのですが、そこが本当に素敵で。それを見ると「私もあんな男役になりたい!!」と気持ちが上がるので、開演前に楽屋で見ることもあるんです。お化粧をしながら「今、自分が感じているような気持ちを、お客様にも感じてもらえるような舞台にしたい」と。すると、準備が出来上がる頃には「よっしゃ! 男役やるぞ!」と気合が入るんです。
>>NEXT STAGE
三井住友VISAカード シアター
スペクタクル・ミュージカル
『1789 -バスティーユの恋人たち-』
革命前夜のフランスを舞台に、運命に翻弄されながらも愛と理想を追い求める若者たちを、フレンチ・ロックで紡ぐ大作ミュージカル。
● 主演:礼 真琴 舞空 瞳
● 2023年6/2〜7/2 宝塚大劇場 7/22〜8/27 東京宝塚劇場
撮影/柴田フミコ 取材・原文/石井美輪
こちらは2023年LEE5月号(4/7発売)「ことばの力 vol.4 暁 千星さん」に掲載の記事です。
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