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【雪組・朝美 絢さん】成功の反対は失敗ではない。何も挑戦しないことだ【宝塚スター|ことばの力】

  • TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力

2023.02.16

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文字 :TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力 宝塚[雪組] 朝美 絢さん

気づきを与えた言葉、背中を押してくれた言葉、自分を鼓舞する言葉……。舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌが大切にしている言葉とは?

文字:今の自分を作ったことば「成功の反対は失敗ではない。何も挑戦しないことだ」

写真:ことばの力・宝塚歌劇団雪組男役スター朝美 絢さん・成功の反対は失敗ではない。挑戦しないことだ

Jun Asami

2009年、宝塚歌劇団に入団。月組に配属されたのち2017年に雪組へと組替え。すでに話題を呼んでいる『海辺のストルーエンセ』は3本目の単独主演作。その実力と華やかな存在感で注目を集め観客を惹きつける男役スター。
宝塚歌劇公式ウェブサイト>>

決して器用でない自分だけど、だからこそ手に入れたものがある

「海のそばで生まれ育った私が足しげく通ったのが近所の水族館でした。一番のお気に入りはお姉さんとイルカが会場のお客様を楽しませるショー。幼い頃からクラシックバレエを習っていた私はそれを見ながらいつも思っていたんです。“私も大好きなイルカと一緒に踊りたい!!”と(笑)」

物心ついた頃から心惹かれた華やかなステージ。なのに、いざそこに立つと恥ずかしさや戸惑いで固まってしまう……。バレエの発表会のたび、舞台袖にいる先生から「笑って!」「頑張って!」と言われ続けた朝美さんの幼少期。マイペースで、“はじめまして”の環境が苦手。新しい環境になじむのも、友達と仲よくなるのも、子どもの頃は何をするにも時間がかかるタイプだったそうです。

母からも“あなたは根がまじめだから時間がかかる”とよく言われました。だからこそ“焦らずゆっくりやりなさい”と。実はその性格は昔も今も変わらなくて。そんな自分を理解しているからこそ、焦らず、空回りせず、ゆとりを持ってコツコツと進むことを私は大切にしています

気持ちが急ぎそうなときは「落ち着け、落ち着け」と自分自身に声をかけながら地に足をつけて進む。その歩み方は宝塚音楽学校を受験したときからずっと同じです。1度目は不合格だったものの、コツコツと努力を積み重ね、2度目の受験で首席合格。「入学後はまた成績が落ちるのですが、そこでも焦らず努力を重ね、最後の試験は納得のいく成績で終わらせることができました」と語ります。

「入団後はお役を任せていただけるまで時間がかかりました。最初の頃は踊りやセリフを覚えるのも得意ではなかったと思います。自分の宝塚人生を振り返ると“時間がかかった”と思うことが多くて。だからこそ、何かひとつ成果を上げても喜ぶ前に身構えてしまうんです。“ここからまた長く苦しい戦いが始まるぞ”、と」

順調にスター街道を突き進んできたように見える朝美さんですが、その躍進の裏側には膨大な努力がありました。

「我ながら本当に不器用だなと思うのですが、そんな自分だからこそ手に入れたものも。できない、負けたくない、皆に追いつきたい、その気持ちはいつも自分を奮い立たせてくれました。そしてその思いを糧に、苦労を乗り越えた先には新しい自分が待っていることも知りました。だからこそ“目の前の壁は成長するチャンスだ”と何事も諦めず前向きな気持ちで挑める自分になれたように思います

そんな彼女が大切にしているのが、以前出会った「成功の反対は失敗ではない。挑戦しないことだ」という言葉。

「この言葉が教えてくれるのは目標に向かう“過程”の大切さです。たとえ結果が失敗に終わってもそこにたどり着くまでの経験は自分のもの。成功は手にできなくても、きっと違う何かを手にしている。失敗よりも怖いのは“どうせ無理だ”と挑戦すらしないこと。心が折れそうなときはいつもこの言葉を思い出し自分の背中を押すんです。“負けるな!! 挑め!! この経験が明日の自分を作るんだ!!”と」



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【朝美 絢さんに3つの質問!】

写真:ことばの力・宝塚歌劇団雪組男役スター朝美 絢さん アザーカット

Q1:
最近、何に興味を持っていますか?

実は、スポーツ観戦が大好きなんです。

実は私、スポーツ観戦するのが好きで。実際に観に行くのは難しいのですが、テレビで中継を見たり、結果だけでもニュースで見たり、日々チェックしています。最近、そんな私が夢中になったものといえば、昨年末のFIFAワールドカップ。深夜に放送される試合が気になって気になって……おかげで寝不足になりました(笑)。

野球も観るし、テニスも観るし、お相撲も大好き。私がスポーツの何に惹かれているのか、その答えはやっぱり“一回の勝負にかける情熱”なんだと思います。その情熱が伝わってくるからこそ、結果はどうあれ、勝負に向かうアスリートの方々の姿勢や目つき、ゴールを決めて泣いて喜ぶ姿、そのすべてに胸打たれるんです。

それと、プレッシャーを抱えながら国の代表としてフィールドに立つ、あの強靭なメンタルはどこからくるのか……。それもまた気になるところ。いつかその秘密をアスリートの皆さんに聞いてみたいです!

Q2:
朝美さんの美しさの秘密を教えてください。

身も心もヘルシーである。
それがきっと「美しい」ということ。

宝塚音楽学校時代は今よりも太っていたんです。下級生の頃、新人公演に出演したとき、(本公演で)同じ役を演じる上級生の衣装を着させていただきたいと思い、必死に体を絞った過去も。それをきっかけに体型はだいぶ変わったのですが、太りやすい体質は今も変わらず。

お休みの日はつい食べ過ぎてしまうこともあるので気をつけています。オートミールを主食にしたり、ドレッシングなど使わず味付けはオリーブオイルと塩で統一、ヘルシーな食生活を心がけています。そんな健康管理はもちろんですが、精神面もまたヘルシーであることが大事だと思っているので、なんでも楽しく幸せに、前向きに考えることを大切にしています。

例えば、なにか小さな失敗をしてしまったときは「これで大きな失敗を防ぐことができた」と考える。いつまでもネガティブな気持ちを引きずらない。私自身、心からの笑顔で笑う、太陽のような明るさで周りを照らす女性を「美しい」と感じるので、気持ちを常に明るく元気に保つよう心がけています。

Q3:
男役14年目。今、どんな時期にいると感じていますか?

男役1年目も、14年目の今も、
歩むペースは一歩一歩。

いろんな役に出合わせていただき、いろんな役に挑戦する、特に2022年はそんな一年だった気がします。それはまるで自分で自分を試しているような感覚で。そこで感じる気持ちは「苦し楽しい」。楽しいだけではなく、もちろんそこには苦しみも存在するのですが、この約14年の経験が、苦しみを乗り越えた場所に楽しみがあるということを私に教えてくれたので、私はその苦しみも決して嫌いではないんです。

男役14年目を迎えた今も、まだまだ自分は未熟だと思います。だからこそ、「もっと充実した男役になりたい」「もっと貫禄が欲しい」そんな思いが自分の中にたくさんあります。でも、それもまた苦労を乗り越えた先にあるもの。経験を積み重ねる中で、知らず知らずのうちに身についていくもの。

そこもまた「焦らず、ゆっくり、自分のペースで」。階段飛ばしをせずに一歩一歩、背中で語れる男役に近づいていきたいと思っています。

>>NEXT STAGE

ミュージカル・フォレルスケット
『海辺のストルーエンセ』

18世紀のデンマーク王国。保守的な医療を改革すべく奮闘する医師が、孤独な王妃に惹かれていく……。
● 主演:朝美 絢
● 2/3〜2/12 KAAT神奈川芸術劇場 2/24〜3/2 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ ※ライブ配信の予定あり

写真:宝塚歌劇団雪組公演海辺のストルーエンセのイメージ

©宝塚歌劇団


撮影/柴田フミコ 取材・原文/石井美輪
こちらは2023年LEE3月号(2/7発売)「ことばの力 vol.2 朝美 絢さん」に掲載の記事です。

TAKARAZUKA STAR INTERVIEW ことばの力

宝塚歌劇団の男役スターがLEEに登場! 舞台人として、一人の人として。“清く正しく美しく”輝くタカラジェンヌたちが大切にしている「ことば」をテーマにインタビュー。

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