今回のゲストは、『LEE』プリント版でも度々登場いただいているエッセイスト、編集者の小川奈緒さんです。小川さんは12年前に古い日本家屋に引っ越し、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)、『直しながら住む家』(パイ インターナショナル)など、家にまつわる著書を多く出版してきました。現在は、執筆活動の傍ら、音声メディア「Voicy」で「小川奈緒の家が好きになるラジオ」のパーソナリティを務め、多くのリスナーから支持されています。また自宅を開放したワークショップを開催するなど活動の幅を広げています。
前半では、小川さんが「Voicy」のパーソナリティやワークショップを始めるようになったきっかけ、大きく変わった仕事観の変化、12月に出版した小川さん初のライフスタイル本『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)について話を聞きます。(この記事は全2回の1回目です)
「Voicy」配信は、毎日が発見と学びの連続
小川さんが「Voicy」をスタートさせたのは1年ほど前。ちょうど前著作『ただいま見直し中』(技術評論社) 発売を機に、ラジオ番組に出演したことが発端でした。その時に「音声で聞くのがとても新鮮でした」「ラジオをもっと聴きたいです」という感想が届き、知り合いのカメラマンから届いた年賀状にも「ラジオを聴いたよ。ポッドキャストを始めたらいいのに」と一言添えられていたことが、大きな後押しになりました。
「1月5日に『Voicy』のパーソナリティに応募して、3日後に審査が下りて。1月18日に配信をスタートさせました。“ラジオをやってほしい”と直接リクエストをくれたのは10人くらいでしたが、背景にはもっといるんじゃないかと思って。実は、それまでラジオは好きでしたが、『Voicy』のリスナーでもなく、軽い気持ちで始めてみたんです。でもそこには新しい世界があって、毎日が発見と学びの連続でした」
それまでの小川さんの読者は、著書やnoteを読んでくれている同世代が多かったのですが、「Voicy」のユーザーには30代~40代で小さな子を子育て中の方も多く、“手は忙しいが耳は空いている”という人が多かったそう。自分とは違った世代の人と交流できることも楽しみの一つだと言います。
自宅を開放してワークショップを行う理由
小川さんのもう一つの活動に、自宅を開放して行うワークショップ『Table Talk Gathering』があります。始めたきっかけは、著書を読んだ人から「家が見てみたい」「リノベーションの参考にしたい」という声があったこと。もう一つは娘さんが中学生になって家族でリビングで過ごす時間が少なくなり、「せっかくの場所をもっと活かせる方法はないか」と考えていたことから、「家が活用でき、古い家をリノベーションした空間の良さを自然に伝えられるワークショップがいいのでは」と思いつきました。
「ただ“おうちにどうぞ”では、こちらとしても不安がありますから、きちんと目的があり、ゲストと一定の距離感を保てるものを考えたら、ワークショップがちょうどいいのかもと思って。ワークショップとしては一見気軽な参加費ではなくても、来てみたら“満足感がある”“この価格と内容ならまた参加したい”と思えるような設定にしています。
人を招く前に家の掃除からお菓子の準備などをしっかりやります。特に大変なのが庭のお手入れ、丸1日はかかる大仕事なんですよ。ワークショップを、きちんと収益を生み出せる仕事にする。いい循環を生み出すことが出来れば、時間もパワーもかける意味があると思いました」
“自分のやりたいこと”から“人から求められること”へ
ワークショップのもてなしの精神や準備する心得は、それまでやっていた編集者の仕事に通じるものがあったそう。小川さんは大学卒業後、出版社に入り、ファッション誌の編集を手がけていました。編集業で行う“準備”や“気配り”が、その精神と同じだったと言います。
「編集者は、ページを取りまとめる以外にも実はいろいろな仕事をやっているんですよね。撮影現場で、スタッフがいかに気持ちよく仕事ができるか、スムーズに進めるためにはどんな準備をしたらいいか。その準備や心得が、ワークショップの運営にも通じるものがあるんです」
フリーランスになり、「毎年1冊著書を出す」を目標に続けてきました。しかし、今年始めた「Voicy」の活動やワークショップは、いずれも人から“やってほしい”と言われて始めたことでした。 “自分のやりたいこと”から“人から求められること”へ、仕事観の変化がこの1年の変化でもあったと振り返ります。
「“やりたいことはひと通りやったから、次は人から求められることをやろう”“人に喜んでもらえることをやろう”と、自然に思うようになったんです。これまで自由にさせてもらったから“恩返ししたい”、いつも私の文章を読んでくださる方と“一緒に楽しみたい”という思いも強くなっていたと思います」
忙しい日々を支える、毎朝続けているヨガ
その流れから生まれたのが、小川さん初のライフスタイル本『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』です。小川さんがこれまで出してきた本のテーマは家、旅、ファッションでした。当初は、エッセイを予定していましたが「編集者との対話から『Voicy』のファンも増えていることだし、これまで出していない“ライフスタイルをテーマに書いてみてはどうか”と提案いただいたことがきっかけです」
noteで綴ってきたエッセイをベースに大幅に加筆・修正、書き下ろしも収録しています。料理やお掃除、物選び、美容と健康、仕事、心、家族。小川さんがすこやかに暮らすために実践していることをひとつひとつ紹介しています。
本の中にも書かれていますが、小川さんの忙しい日々を支えているのが、毎日続けているヨガ。ヨガを続けることで筋肉をつけ、筋肉があれば、疲れにくい上、元気でいられるという考えです。「筋肉を鍛えることは良いことしかないんです。筋肉は裏切らない(笑)。何かしんどいことが起こった時にも、筋肉があれば乗り越えられるし、跳ね返せると思っています」。
家を居心地良くしたいから掃除し、月星座・風水を活用
毎日家を掃除する理由もシンプルです。「部屋が荒れてくると、心がザワザワして落ち着かない。部屋をきれいにする面倒さと、荒れた部屋を見て気分が落ちるのと、どっちがいいかを考えたら、“とりあえず掃除しよう”と思うんです」。小川さんは、月のサイクルに合わせて家のあらゆるところを掃除する“ムーンクリアリング”という掃除法を取り入れています。そこから月星座占星術や風水を勉強するようになりました。
自分の考えだけで行動を起こすのは意外と難しいもの。「あそこを片付けなきゃ」「掃除しなきゃ」といった面倒なことはなおさらです。だけど月星座占星術で「今日はどこを掃除すると運気が上がるか」をチェックすると、腰が上がるきっかけになると小川さんは言います。
「風水も全く同じですね。ワークショップも始めることだし、もっと家を心地よくしたいと学び始めたことですが、当たり前のことを学び直すことに近かったですね。玄関をきれいにしておくとか、寝室の場所はどこがいいとか。ちょっと気をつけるだけで、心が落ち着いたりするんですよね。月星座も風水も、どちらも睡眠の環境を重視するという考え方で、私が大切にしていることと重なったことも大きいと思います」
40代から50代、より“すこやかなほう”を選んで生きる
40代から50代、心も体も考え方も、さまざまな変化を迎える時期でもあります。そんな時に、より“すこやかなほう”を選んで生きる小川さんの本『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』は、私たちの指南書になってくれる一冊とも言えます。
「前半は、暮らしのお役立ち情報を実用的に、後半にかけて思考寄りの話になっていきます。ライフスタイル本と思って軽やかに読み始めたものの、最後読み終わったら、嫌じゃない重みが残るというか。ある意味、ずしっと人生について考えるような後味があると思うんです。読み始めと読み終わりで違う表情があるような、多面的に読める本になったのかなと思います」
(後半では、小川さんがどんな幼少期を過ごし編集者になったか、鬱々とした日々を過ごしていた高校時代を救った音楽、出産を経て千葉へUターンしたエピソードをお聞きします。お楽しみに!)
小川奈緒さんの年表
1972年 | 東京都に生まれる(4歳から千葉県で育つ) |
---|---|
18歳 | 早稲田大学第一文学部入学 |
22歳 | 早稲田大学卒業、出版社に入社 |
23歳 | 宝島社に入社。雑誌『CUTiE』などの編集を担当する |
29歳 | フリーランスに |
34歳 | 結婚 |
36歳 | 出産 |
38歳 | 実家のある千葉県に引っ越す |
41歳 | 『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)を発売 |
43歳 | 『おしゃれと人生。』(筑摩書房)を発売 |
44歳 | 『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)を発売 |
47歳 | 『直しながら住む家』(パイ インターナショナル)を発売 |
49歳 | 『ただいま見直し中』(技術評論社)を発売 |
50歳 | 音声メディア「Voicy」のパーソナリティをスタートし、自宅を開放したワークショップ「Table Talk Gathering」の運営をスタート。『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)を発売。12/23には、娘の幼少期時代の子育てブログを再編集し、電子書籍化してリリースする予定(詳細はHPへ https://www.tabletalk.store/) |
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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