いざ、更年期症状が出たら? できるだけ軽く乗り切るには? 婦人科での治療やセルフケアを知り、準備できることは早いうちから取り組んで。
教えてくれたのは
産婦人科医 高尾美穂さん
女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。「すべての女性によりよい未来を」をモットーに、日々の診療を中心に、メディアやセミナー等でも活躍。『いちばん親切な更年期の教科書』(世界文化社)ほか著書多数。
Instagram:yoginidr_miho
Twitter:mippolin78
公式サイト:mihotakao.jp
婦人科で治療できること
漢方は主に精神の不調や不定愁訴に、症状にあわせて何種類かを組み合わせて用いることが多い。症状の改善が見られたら止めるのが基本で、HRTとの併用もできる。
治療の中心は漢方 or HRT。併用して乗り切るケースも
婦人科での治療は、主に漢方治療とホルモン補充療法(HRT)の2本柱。「まずは血液検査で女性ホルモン値を測定し、女性ホルモン値が正常範囲の場合は漢方、正常範囲より低ければHRTという治療が一般的(HRTの詳細は下記参照)。
「費用やライフスタイル、病歴などによって治療法も変わるため、不調が次々と起きてからあたふたするより、40歳を過ぎたら、かかりつけの婦人科を持っておくと安心です」(高尾美穂さん)
少量で改善効果大!
HRT(ホルモン補充療法)とは?
減少したエストロゲンを補う治療法。補う量はもともと体が作っていた1/3程度の少量で、HRTを2カ月継続すると約9割の症状が改善すると言われているほど効果的。飲み薬のほか、手軽なパッチやジェルなどの貼り薬、塗り薬タイプも。
閉経後も服用を続けることで、骨量の減少や腟委縮の軽減、生活習慣病予防など多大な健康効果が。ただし心筋梗塞や狭心症などのリスクを考えると、閉経後に始めるなら閉経から10年以内がベター。
がんなど持病・病歴によっては受けられないので注意!
女性ホルモンを補うHRTは病気の進行を促進してしまうリスクも。そのため治療の前には子宮がんや乳がんの検査が必要で、また罹患歴がある人も要注意。子宮の疾患、血栓症がある人などは受けられない。
費用の目安は?
更年期症状の治療が目的ならほとんどが保険適用で、費用は薬代のみで¥1000~¥3000/月程度(診察料、検査料などは別)。薬の種類や量は、年齢や症状、月経の有無、病歴などを総合的に医師と相談。
更年期に自分でできるケア
基本はやっぱりこの3つ!
睡眠
食事
運動
7時間は寝て、3食しっかり! 適度な運動でリフレッシュ
更年期症状に多い不眠やホットフラッシュ、倦怠感などは自律神経の乱れが大きな要因。改善するには、生活の基本である食事、睡眠、運動を見直すことが近道。「忙しい中でも睡眠はしっかり。成長ホルモンの分泌を促し生活習慣病の予防のためにも、寝入りばな3時間を深く眠り、合計7時間は確保を。
食事は糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン類をバランスよく、3食きちんと食べる。適度な運動は自律神経を整え、メンタル不調もやわらげる効果もあります」(高尾美穂さん)
エストロゲンに似た働きをする
「エクオール」の摂取は特に効果的!
「体内でエストロゲンと似た働きをするエクオール。体内で産生できるのは日本人の場合、2人に1人と言われています。検査キットで自分が産生できるか否かわかるので、調べてみるのもおすすめ。手軽にエクオールを摂取できるサプリもあります。また市販の更年期用の漢方薬もあるので、価格や飲みやすさなど、自分で継続しやすいものを探してみて」(高尾美穂さん)
産生能の検査キットとサプリメントも
(左)エクオール産生ができるか、採尿で簡単にわかる検査キット。(右)大豆イソフラボンから作った、安心なエクオールを配合したサプリ。
その他
市販の漢方薬も
(左)13種類の和漢生薬と各種ビタミンを配合。更年期の心身の不調を改善。(右)江戸時代から更年期症状の改善に使われていた漢方処方「連珠飲」に由来。のぼせや倦怠感などの改善に。
家族や職場の人…周囲に説明して理解を得ることも大切
更年期の心身の不調は、周りにわかってもらいにくく、自分からは言い出しにくいという人も。「我慢して無理を重ね、症状を悪化させてしまう人も多いのが現状。家族や、できれば職場の人にも、できるだけ状況を伝え、協力や理解を得られると、少し楽になるはず」(高尾美穂さん)
Dr.Takao’s Message
更年期を、自分を大切にする生活習慣へシフトする、よいきっかけにして
「『更年期だから仕方ない』『病気じゃないから』と我慢する時代では、もうありません。心身の変化を、生活習慣や考え方を見直すチャンスととらえ、ケアや治療も積極的に! 未来の自分の人生は、今の自分が作っていくものです」(高尾美穂さん)
【特集】備えあればうれいナシ!「更年期」徹底予習
詳しい内容は2022年LEE6月号(5/7発売)に掲載中です。
イラストレーション/黒猫まな子 取材・原文/遊佐信子
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