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LIFE

映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

斎藤工さんが妊娠?! 男女の立場逆転の『ヒヤマケンタロウの妊娠』で、斎藤さんと上野樹里さんが“気づいたこと”とは?!【Nerflixオリジナルドラマ】

  • 折田千鶴子

2022.04.19

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もしすべての男性が妊娠する可能性があったら!?

多くの人が、一度は考えたことがあるかもしれません。「男も妊娠すれば、妊娠・出産の大変さや、それが人生を変える大きな決断だと分かるのにな……」と。そんな密かな想像が、ドラマの中で実ってしまいました!

坂井恵理さんの原作コミックを、Netflix×テレビ東京がドラマ化したオリジナルシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』がそれ。“もしすべての男性が妊娠する可能性があったら!?”をテーマに、男女逆転生活やギャップが描かれ、“あるある”な共感と笑いが満載です。そこから社会に潜む諸問題を照射した、意義ある社会派コメディに主演された、斎藤工さん、上野樹里さんにお話をうかがいました。

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まずは充実のスタッフ陣に驚かされます。監督を務めるのは、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(19)で長編監督デビューした箱田優子さんと、『ハローグッバイ』『望郷』(ともに17)などの菊地健雄さん。

さらに脚本を、3人の気鋭のクリエイターたちが手掛けています。Netflixシリーズ「全裸監督」「新聞記者」などの脚本家・山田能龍さん、『あのこは貴族』(21/出演・水原希子さんインタビューはこちら)の監督・脚本の岨手由貴子さん、『ミセス・ノイズィ』(20/主演・篠原ゆき子さんのインタビューはこちら)の監督・脚本の天野千尋さん。

これからの日本のエンタメ界を背負っていく注目の才能が結集した、なるほど、こう来たかと膝を打つ、さすがの面白さです!

──原作コミックは読まれましたか?

斎藤「お話をいただいてから拝読しました。このコミックが発表された2013年に、もっと話題になっていてもおかしくなかったのにな、と思いました。それくらい、リアリティとコミカルさが絶妙な原作の世界観に夢中になり、引き込まれました」

上野「私も出演が決まってから読みましたが、“すべての男性が妊娠するとしたら”という着眼点にまず興味が湧きました。それを、今この時代にドラマ化するというのも新しい。私が演じた亜季は、原作では複数登場するヒロインのうちの一人で、年齢は40代前後。物語の後半に少し登場する亜季は、ヒヤマのパートナーではない印象です。そんな亜季をドラマではメインのヒロインとして描いていくという試みに意外性も感じました!」

斎藤「それも含めて、脚本が本当に素晴らしいんですよ!」

「ヒヤマケンタロウの妊娠」ってこんな物語

4月21日(木)Netflixにて全世界同時独占配信
©️坂井恵理・講談社/©️テレビ東京

独身を謳歌していたエリート、桧山健太郎は、ある日、自分が妊娠していると知る。プレイボーイの桧山は、時期的なことから母親であると確信した亜季に告白。驚いた亜季は、つい“え、それって私の子!?”と、“禁句”を吐いてしまう。桧山自身、親になる自信も自覚もなく産むかどうかに迷い、亜季もまた戸惑うばかり。しかし遂に、桧山は「産む」決意を、そして亜季はパートナーとして寄り添うことを決断する――。

──観ていて小気味よかったり、“あるある”と深く共感し、男女逆転したセリフに大爆笑したり…。ふわっとした原作とはテイストが異なり、ドラマはかなり攻めている印象を受けました。

斎藤「原作が発表された当時とは時代が変わったことにも拠るでしょうし、民放の中では攻めている前衛的なテレビ東京がNetflixとタッグを組むことに拠る“攻め具合”もあるように思いました。とにかく脚本が秀逸! 2人の監督と3人の脚本家のチームは、それこそ“日本映画の銀河系軍団”ですから(笑)。他のキャストの方々も含め、その(製作チームの)建付けが、プラスに働いたと思います」

上野「原作は、ドラマと違ってほのぼのとしたタッチですよね。妊娠や出産に対してヒヤマは前向きで、一人でも育てていくというマイペースで優しい男性。反対に結婚も子供も諦めていた気の強い姉御肌な亜季は、桧山によって棘みたいなものが徐々に和らいで癒され、本来の女性のあるべき姿を学ばせてもらうという印象。ドラマ化にあたっては、全8話通してヒヤマの唯一のパートナーとして亜季も何度も登場するので、新たに描いていく必要がありました。ヒヤマが妊娠に対して拒絶心から始まるドラマは、原作のテイストと真逆なので、より現代の余裕のなさを映し出した社会派なテイストになっています。また、男性の方にも亜季に共感する印象的な台詞を、監督やプロデューサーと丁寧に話し合える時間もあったので、作る楽しさとやりがいを感じました」

斎藤「脚本と原作の差異という部分に関しても、非常に上手く“今”を脚本に落とし込んだな、と。ドラマで桧山が広告業界で働いているという変更も含めて、今、この作品を作る意味が、とても脚本に込められていますよね」

上野「亜季自身についても、フリーランスのライターで、社会的にみて弱い立場であり、仕事で追い込まれている状況から心理的にとても結婚とか子育てなんて考えられない。そんな中、桧山が妊娠したことで向き合わざるを得ない状況に追い込まれ、亜季は桧山と共に今までの自分の価値観をアップデートしようと本気でぶつかり合っていく。そんな二人が喧嘩をしているのは観ていて嫌じゃないんですよね。日々、二人の成長を見守りたくなるというか。夫婦や家族なら、誰もがぶち当たるであろう場面を赤裸々に描いています」

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──それこそ2人が言い合いをしたり、桧山の妊娠に対する上司や同僚たちの反応が面白かったりします。演じる際、心がけたことは何かありましたか?

斎藤「既に“桧山が妊娠する”とタイトルに掲げられているので、そこにたどり着くまでに桧山の心が追いついているか、いかほどの葛藤があるのかなど、どれだけ距離を開けておけばいいのかをだいぶ考え、自分の中で仮説を立てたりしました。ところが実際に現場に入ったら、シーン一つ一つにおいて、いい意味でスタッフや共演者の方みんなが違う方向を向いていた、というか。確かに桧山の物語というより、桧山を取り巻く人たちや社会の在り方を描いた作品でもあるので、コンパスの軸が刺さった桧山健太郎を、監督や共演者の方たちが一緒になって作ってくださった、見事に他力本願で出来たキャラクターでした(笑)。だから内面的な葛藤云々でなく、実際に現場で僕が拠り所にしたのは、お腹のサイズ感と、例えば会議中に母乳が出てきてしまってトイレに駆け込む状況、などでした」

上野「原作の中では桧山に出会う周りの人たちが変わっていくという描き方ですが、妊娠に対して否定的に始まるドラマの中では、甘くない社会、妊娠したからといって何も変わってくれない社会を軽やかに、観やすく描いていると思います。それぞれの立場で物事を観たら、そうなるよな、っていうのが素直に演出されているので、心地いい。完璧な人間はいなくて、みんなどこかに歪みや歪みを抱えながらそれなりに前向きに生きている結果なので、笑わせる演出でなくても笑ってしまったり、何気ないシーンでもグッときたり。あるあるを沢山感じてもらえたらと思います」

妊娠時のリアルな大きさと重みのお腹

──実際にお腹の大きさ、重さをリアルに加えていったそうですね。大きなお腹を抱えてみた感想、感じたことを教えてください。

斎藤「臨月に至るまで4パターンくらい、サイズ別に型を取り、基本シリコンで作っていただきました。メタボリックな感じとも違う、妊娠したお腹をリアルに作っていただいたので、重みだけではなく、そのシルエットを含めて、明らかにそこに尊いものを感じながら演じることが出来ました。男性は普段ベルトをしていることが多いので、ウエストを締め付けないストレッチ素材のものなど、インナーも含めて衣装を作っていただいて。なるほど、女性の洋服のバリエーションがたくさんあるのは、こういうことかと合点がいったりもしました」

──先日、監督のお2人にお話を伺った時に、“桧山と亜季が何かと小競り合いをすることで、物語が進んでいく”とおっしゃられていて、なるほど、と思いました。2人の関係性が、絶妙に物語を押し進めていきますよね。

斎藤「桧山としても、亜季にぶつけたものが撥ね返って来て、化学反応みたいなものが生まれる瞬間がありました。そういう相互関係を含め登場するすべての人が、綺麗ごとでなく必然・必要だったと感じました」

上野「亜季はあまり笑わない印象ですが、それは冷たいとか暗い人というのとは違う。今ではなく少し先の未来を見ているから。反対に桧山は妊娠真っ只中で、日々大きくなっていくお腹と心境の変化でセンシティブになっているので、感情的になったりと、今にしかフォーカスできなくなってくる。たとえそんな二人が小競り合いしてぶつかってばかりでも、私は応援したくなるというか。プライベートに関しては、人間力を試されるような試練の数々に、まだまだ未熟で不器用な二人なんですよね。ただ、斎藤さんがヒヤマを演じてくれたからこそ、あの亜季としてそこに居られたと思っています」

斎藤「僕は逆に、この物語の主線は亜季の存在だと思っているんです。過去にも、マルチェロ・マストロヤンニが妊娠する男性を演じた『モン・パリ』や、シュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)が妊娠する『ジュニア』などがあって、僕はどちらも大好きな作品なんですが、本作は“男性が妊娠する”というキャッチーな状況から、さらに踏み込んだことを描いています。それがつまり、パートナーである亜季の存在であり、周りの人たちにどういう変化があるのか、ということであって。実は亜季と桧山のシーンは全体としてはさほど多くはないのですが、桧山が映っていない亜季だけのシーンでも、桧山が居るかのように、すごくその存在を想起させてくれています。それはまさに、上野樹里さんの懐の広さだなぁ、と思いました」

上野「いえいえいえ(笑)、斎藤工さんの存在感ゆえでしょう!」

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斎藤 工
1981年8月22日、東京都生まれ。高校生時代よりモデルとして活動し、パリ・コレクションにも出演。映画『時の香り~リメンバー・ミー~』(01)で俳優デビュー。主演を務める映画『シン・ウルトラマン』が5月13日に公開される。齊藤 工名義でFILM MAKERとしても活躍し、「Asian Academy Creative Awards 2020」で最優秀監督賞を日本人として初受賞。監督長編最新作、映画『スイート・マイホーム』(主演・窪田正孝)が来年公開予定。被災地や途上国の子供たちに映画を届ける移動映画館プロジェクト「cinéma bird」主宰や、俳優主導のミニシアター支援プラットフォーム「Mini Theater Park」の発起人など、活動は多岐にわたる。

──お互い、相手の役にはどんな印象を持たれましたか?

斎藤「桧山が亜季に中絶のためのサインをもらいにいく序盤のシーンが、僕らのファーストカットでした。そこで、“男女の立場が逆転した状況”になりますが、“でも亜季は女性だし”と。その“女性だし”の中に、こういう状況における“男性観”をすごく感じたんですね。そんな2人の掛け合いの中から、桧山の“女性性”というか“母性”みたいなものが出てきたというか。その最初のセッションで亜季の中に、瞬間的な“男性性”と“女性性”を感じたので、桧山の佇まいが決まっていきました。相手が上野さんじゃなかったら、この桧山健太郎には絶対にならなかったと強く感じました」

上野「そんなぁ(笑)。私は台本を読んだときから、斎藤さんが演じられる桧山を想像できたので、自分の役や役割も定まっていった気がします。エリートで女性にモテモテな桧山が、亜季を“ちょっと辛口な大人な女性”と解釈してるので、パートナーが妊娠したという話になっても、特にひるんだり逃げたりもせず、どうしようと一緒に考えていくのだな、と。目の前で妊娠した桧山が、急に甘いパンケーキをバクバク食べる描写は台詞がなくても本当に切羽詰まっているんだなって伝わりました。不謹慎だけど、桧山の素顔を知る亜季は、桧山が怒っていても少し可愛いと思ってしまったり。でもたまに可愛いと思えず本気でイラッとしたり(笑)。妊娠するって、パートナーになるって、こういうことも全て受け入れていくんだなと。リアリティをもって二人が存在できたのは、斎藤さんの無理のない自然な佇まいに合わせて行った結果です。ありがとうございます」

現代を生きる人物としての共感

──エリート男子の桧山、自立した女性の亜季。2人と共通する点も、自分の中に見いだしたりしましたか?

斎藤「冒頭のナレーションで、桧山が“スマートに生きよう。弊害を回避して”ということを言いますが、それって人間の本能だとも思うんです。でも、事の大小を問わず回避しきれない“まさか”が必ず起きる。普段は弊害を回避している自分が、 “まさか”の時に一瞬で崩れ落ちるように本性が現れ、“自分の素はこんな形だったのか”と気づかされて傷つく、というか。人生ってそんな簡単に攻略できるものではないから、“まさか”が訪れたときの慌て方を演じながら、他人事ではないと思いました。普段、摩擦を少なく省エネで生きようとしている自分は、一見スマートなようで、実は実体がないような生き方というか。心当たりがあるな、とハッとさせられました」

上野「私は、未だに自分でも自分が分からず、“自分って何?”という感じなんです。でも亜季は、魂を売らない人というか、“自分はこうだ”という信念をもっている人だな、と感じました。現実は理想通りには行かないけれど、必死に生きている感じがします。だから亜季はストレスが溜まるし、あんまり笑う瞬間もなくて。その感じは、自分に似ている気がします。私も普段、あれこれ考えている時間が長くて、あまり笑っていなかったりするので。もっと笑いたい、と思っています(笑)」

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上野 樹里
1986年5月24日、兵庫県生まれ。01年に「クレアラシル」の3代目イメージガールでデビュー。映画『スウィングガールズ』(04)でアカデミー賞新人俳優賞を受賞し、ドラマ「のだめカンタービレ」で一躍知名度を上げる。近年の代表作に、ドラマ「グッド・ドクター」(18)、「監察医 朝顔」シリーズ(19、20)、映画『お父さんと伊藤さん』(16)など。ドラマ「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」が4月より放送スタート。

──実際に桧山の妊娠によって、桧山自身、そして亜季の心の変遷をどう感じながら演じていましたか?

斎藤「先ほどの答えと重複しますが、桧山が存在しないところでの亜季の葛藤――でも桧山の前ではその葛藤を見せないという、その奥行きを想像しました。つまり亜季の葛藤が映し出すのは、桧山の変化でもあるというか。そこにも桧山と亜季は、色んな意味でパートナー関係にあると感じました。桧山を掘り下げることは、亜季をはじめ周囲の人たちが変化していくことに通じる。脚本にもちゃんと描き込まれているので、そういうヒントがたくさんありました」

上野「この先の二人の未来には、大変なことが待ち受けているんだろうな、と周りの男性妊夫の方々の実態を見ていて亜季はどこか冷めた目で世の中を読む必要があって。愛がある家族だからとか、綺麗事だけでは世の中は渡れない。共感も理解も示さない世界で、生まれてくる子供にとって私たちは、どうあるべきなのか。好きとか嫌いという話ではなく、周りに流されず守っていく覚悟や亜季が自身の親に対する概念を乗り越えて、前向きな気持ちで親になるんだという自覚が徐々に芽生えていく。そんな亜季は、当初の原作のさっぱりした性格や、強がりな姉御肌というより、外側と内側の折り合いを探しながら揺れる、そしてそれを他人に見せないという様々な人に共感していただけるようなキャラクターに感じてもらえるよう作っていけたと思います」



改めて気づかされたこと、そして未来へ

──本作には、視聴者も色んなことに気づかされます。2人が新たに気づかされたこと、改めて思ったことはどんなことでしょう?

斎藤「女性が子供を産むということに対して、“お母さん、大変だよね”という“大変” を前提に社会が構成されてしまっていると、改めて思いました。“大変だよね”ということに社会全体が乗っかって、それに対するホスピタリティがないまま、というか。そういうものだと、僕自身も勝手に捉えていた節もあったな、と。例えば、育児に追われている大変な方にこそ、月に1度か2度でも自分の好きな映画を観られる時間がもうけられたらいいのにな、と。そのために映画館が託児所を併設していればいいと思いますし、そういうために娯楽はあるんじゃないかな、と。それなのに実際には、育児をされている方とエンターテインメントが乖離してしまっている。“それどころじゃないでしょ、それが当たり前でしょ”と社会全体が思っているな、と如実に感じるようになりました」

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上野「ドラマの中に“そもそも相手がいないんで”ってセリフがありますが(笑)、心身のゆとりがないと結婚も難しい、子供を産むのはさらに難しい。そんな今を生きる亜季に現代の結婚観とか恋愛観を感じることができました。そして流されるがまま生きているとあっという間に年を重ねて…。過ぎてしまった時間は取り戻せないし、かといってなんとかできる事でもない。おまけに婦人科系の問題も背負いながら仕事をしていた亜季ですが、最終的には子供を可愛がって抱っこするようになれたことが良かったなって。きっとこの先亜季はもっと笑顔が増えて顔つきも明るく変化していくだろうと思います。改めて妊娠・出産は大変なことだとも思いましたが、今の自分が考えられない領域に押し上げてくれるものであり、とても豊かなことだなと思いました」

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──ちなみに本作を含め、撮影現場に託児所などを設けようとするなど、斎藤さんは以前より活動や働きかけをされています。そんな中で、日本の変化を少しは感じますか?

斎藤「以前から、女性の才能が出産と共に当たり前のように現場から失われていくことを散々見てきていて、そういうものだと自分の中でどこか折り合いをつけていたところもありますが、やっぱり海外のクルーに参加すると、少し日本が遅れているのを感じています。海外では、当たり前のようにスタッフキャストのプライベートが守られていて、乖離せずに現場で共存できている。特に今の日本は、遠慮の文化なんですよね。子供が現場にいたら迷惑をかけてしまうとか、つい遠慮してしまう。僕が子供の頃は、映像制作の仕事をしていた父に連れられて、よく現場に見学に行っていました。いい時代だったな、と。他の子供たちも来ていて、勝手に子供同士でコミュニケーションが生まれていたんです。それが、いつからかタブーになってきたんです。だから本当に小さな範囲ですが、自分の出来ることを色んな人の協力を得ながら少しずつやってきたら、この作品に出会いました。引き続きこの先も、出来ることをやり続けていきたいと思っています」

ドラマの中には、「堕ろすにしても産むにしても、リスクを背負うのは全部、俺なんだぞ!!」と切羽詰まった桧山が、亜季を責めるようにまくし立てるシーンがあったりします。そういう男女逆転のシーンや台詞に、「でしょ!? 少しは分かったか!!」みたいな、ちょっぴり男性に“してやったり”的な気持ち良さを感じてしまったり。色んなセリフに、思わずプッと吹き出しちゃったしますよ!! 個人的に好きなのは、ママ友ならぬ、宇野祥平さん演じる、桧山の“妊友”。彼の存在もまた、桧山を支えることになっていきます。

とはいえ実は私自身、3話までしか見られていないので、もう先が観たくて知りたくてウズウズ状態です。早く配信開始日が来ないかなぁ、と首を長~くして待っているのです。これまで社会が当たり前のように女性に押し付けて来たことを、桧山という男性が経験することによって、新たな気付きを与えてくれたり、誰にとっても明るい未来になるように変えていこう、という機運を高めてくれるようなドラマになっていると思います。

是非、みなさんも楽しみにご覧ください!

ヒヤマケンタロウの妊娠

4月21日(木)Netflixにて全世界同時独占配信

©️坂井恵理・講談社/©️テレビ東京


撮影/菅原有紀子

●斎藤工:ヘアメイク 赤塚修二 Shuji Akatsuka (メーキャップルーム)、スタイリスト 三田真一 Shinichi Miter (KiKi inc.)

●上野樹里:ヘア:Shotaro (SENSE OF HUMOUR)、メイク:Sada Ito for NARS cosmetics (donna)、スタイリスト:岡本純子 Junko Okamoto

●斎藤工 衣装
ジャケット¥292,600、シャツ¥108,900 、パンツ ¥162,800(以上全てTHE ROW/THE ROW JAPAN︎03-4400-2656) 、シューズ スタイリスト私物
お問い合わせ先:THE ROW JAPAN TEL:03-4400-2656

●上野樹里 衣装
トップス¥52,800/スカート¥63,800/ロキト(株式会社アルピニスム)
お問い合わせ先:株式会社アルピニスム TEL:03-6416-8845

(価格はすべて税込)

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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