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【水原希子さん『あのこは貴族』インタビュー】「当時の気持ちにピタッときて、共感しかなかった」

2021.02.25

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水原希子さん

外国の写真集から抜け出してきたような、水原希子さんのエキゾチックな美貌に目がくぎづけ! そんな彼女が「私も東京に憧れて出てきた頃は、緊張して頑張っちゃって。だから共感しか覚えなかった」と意外なことを語るのは、映画『あのこは貴族』で演じた役。富山から上京して一流大学に進学するが、内部から進学してきた内部生との格差を思い知らされる美紀を、水原さんがオーラを消し、リアルに体現した。

水原希子さん「当時の気持ちにピタッときて、共感しかなかった」

水原希子さん

「当時の自分の気持ちにピタッときて。これまでのどの作品よりフラットな状態で、岨手由貴子監督と話し合いながら、ナチュラルに引き出してもらいました。ただ、リアルな日常会話で淡々と進んでいくので、シーンごとに、どこに着地させるかが難しかったです」

親からの仕送りが途絶え、大学を中退した美紀は、一度は夜の仕事をしながらも、持ち前のバイタリティでキャリアを積んでいく。

「自分の理想を追い求めたけれど、現実は厳しくて、どんどん崩れていってしまう。その中で葛藤しながらも軌道修正し、楽しいものを見つけようと前に進んでいく――。そんな美紀に、きっと多くの女性が共感すると思います」

逆境でも自棄にならず、自分の人生を立て直す美紀の強さは、どこからくるのだろうか。

「自分でどうにかしなければいけない環境が、強くしたと思います。落ち込んでいる暇がないというか。そこも、私と似ていて。私も自分で自分を養ってきた中で、もちろん嫌なこともあり、悩んだりもした。でもあまり自分の感情に固執せず、どこかケセラセラと流していかなければ生きていけない。必死ですよ、もう(笑)!」

美紀と温室育ちの華子。生まれ育った環境の異なる二人が、一人の男性を介して出会う中で映し出される女性の生き方や人生模様。

「美紀は本当に彼が好きだったし、ズルズル10年も一緒にいたのは、本人たちの中ではいいバランスで成立していたと思うんです。彼はズルいけれど、彼だけの問題ではなく、敷かれたレールに沿って生きるしかない環境にあるのは、少しかわいそうで……。そんな二人の関係は、本当に切なかったです。そういう目に見えない格差、女性の生きづらさや環境が強く提示されるわけではなく、当たり前のように描かれる。その中で強く生きていく女の子たちの姿を通して、すべてのメッセージがスーッと入ってくる仕上がりは、岨手さんの絶妙な演出の賜物!」

水原希子さん

何を聞いても、まっすぐ目を見て率直に語ってくれる水原さん。30歳になったばかりの彼女に、今後の展望を語ってもらった。

「10~20代は、周りの方に知らない自分を引き出してもらえた。でも30代は、自分は本当に何をしていきたいのか考えていて。与えていただくだけでなく、自分が好きなことを伸ばしていきたいな、と。これまで起業してブランドも立ち上げ、幅広くやってきましたが、あらためてファッション欲がフツフツ湧き上がってきたんです。これからのファッションは、どれだけ環境に負荷をかけないものを作っていけるか。その新たなミッションに私も加わっていきたい。でもお芝居のオファーも多数いただいているし、好きなことをどんなバランスでやっていくか。30になって、悩みが増えちゃいました(笑)」

Profile

みずはら・きこ●1990年10月15日、アメリカ合衆国テキサス州生まれ、神戸育ち。2003年よりモデルとして活動。’09年、映画『ノルウェイの森』で女優デビュー。代表作に『進撃の巨人』(’15年)、『信長協奏曲』(’16年)、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(’17年)。



『あのこは貴族』

Ⓒ山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会

東京の高級住宅街で生まれ育った箱入り娘の華子(門脇麦)は、20代後半になり結婚に焦り始める。見合い相手に失望を繰り返す中、良家の子息で弁護士の幸一郎(高良健吾)を紹介され、ついにとんとん拍子に結婚が決まる。しかし幸一郎に親密な女性・美紀(水原希子)がいることを知り――。山内マリコの同名小説の映画化。2月26日より全国ロードショー。


撮影/フルフォード 海 ヘア&メイク/白石りえ スタイリスト/小蔵昌子 取材・文/折田千鶴子

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