突然の病気やケガはもちろん、長引くコロナ禍で心の病気を患うケースも。30代・40代にも増えつつある「夫が働けない」事態。夫のことはもちろん心配。だけどいざというときのために、どんな準備や情報共有が必要? 経験者へのインタビューから対策を考えます。
うつ病が理由で、夫が働けない経験をしたイラストレーターの細川貂々さんにインタビュー。実体験に基づいた“気づき”は参考になるはず!
お話を伺ったのは
イラストレーター 細川貂々さん
漫画家、イラストレーター。大ヒットした『ツレがうつになりまして。』シリーズ(幻冬舎)のほか『空気が読めなくても それでいい。』(創元社)など多数の著書がある。
![『ツレがうつになりまして。』](https://lee.hpplus.jp/wp-content/uploads/2021/10/11/9fe93a1f1f7be84529e4c38a8bf2cca1.jpg)
幻冬舎 ¥605
突然うつ病になって病気と闘う夫と、ユーモアで支える妻を描いたコミックエッセイ。
話ができる状態ではない! 貯金額はわからないまま
著書『ツレがうつになりまして。』で知られる夫が、うつ病を発症したのは約17年前。当時、細川さんは漫画家としてデビューしたばかりで、夫から毎月決まった生活費を受け取って生活していたそう。
「当時はまったく情報共有ができておらず、私は毎月20万円の生活費を渡される以外、貯金額も保険も把握していなくて……。ツレはうつ病になって1カ月後に会社を辞めたのですが、少しの退職金と雇用保険が出るので、半年ぐらいはなんとかなるだろうと。うつ病になってからは、寝込んだり落ち込んだりする時間が長くてお金の話ができるような状態ではなく、しばらくは何もわからないままでした。
意識がなくなるような事故や病気ではなく、心の病気でもコミュニケーションはとりづらくなる。私もまさかこんな事態になるとは思わず、確認できるときに、面倒がらずにきちんと共有しておくべきだったなと痛感しました。
このとき、私が心がけたのは、ツレがうつ病になったと周りに話すこと。隠したりせずに『ツレがうつ病になったので助けてください』と親、友人、近所の人、仕事関係の人にも伝えました。みんなが力になってくれたので心強かったし、新たな仕事のきっかけになって収入面もプラスになりました」
最終的に、夫は約3年間は気持ちに波があり、薬を飲み続けることに。予定していた半年は乗り切ったものの、夫の病気がなかなか治らず細川さんにも焦りが。
「家計の心配はもちろん、半年が治療の目安だと聞いていたので、治らないことに不安を感じるようになりました。治ったと喜んだかと思うと、低気圧が苦手で台風が来ると寝込むの繰り返し。一緒になって一喜一憂していたら身がもたないと、まずは私の気持ちを切り替えました。ツレが病気でも、仕事や旅行など自分がやりたいことは遠慮せずにしたり、ツレが落ち込んだら部屋を出るなど物理的に距離をとったことも。私が自分中心に切り替えたことで、少し平静を取り戻しました」
“夫の病気のせい”だとつらい。自分の人生の転機ととらえる
今振り返ってみて、これまでの夫婦間のコミュニケーションで、発病後に大切だと感じたことは?
「普段からなんでもよく話して、会話は多い夫婦でした。会話を通して口ぐせや考え方を把握していたことは、夫の異変に気づくのに役立ちましたね。夫は昔から『自殺はあってはならないことだと思う』と言っていたのですが、そんな人が『死にたい』と口にしたときは明らかにおかしいと。また、人によってかけられてうれしい言葉、嫌な言葉は違うので、これまでの蓄積があると判断しやすいと思います。ごく日常的な夫婦のやりとりや会話が、すごく必要なことだったんだなと感じますね」
現在、夫は細川さんの会社の経理などを担当し、教育委員など地域の活動にも参加。「うつ病は家族が普通に、なごやかに暮らしていると少しずつよくなってくるのではないかな」と細川さんは言います。
「早く仕事に戻ってほしい、家事、育児をやってほしいと思う妻の気持ちはわかるし、プレッシャーをかけたくなることもある。でも、うつ病は自分をコントロールできなくなる状態なので、無理に仕事復帰することは難しいと思います。もしも専業主婦だったり、パート勤務などで心配な場合は、自分の人生の転換期が来たんだと思って、少しずつでいいので、妻が働き手を担ってみても。夫の影響で変わってしまうと思うのではなく、自分の人生をどう生きるかととらえると、気持ちが少し軽くなるような気がします」
読者にアドバイス
- 発病後の確認は困難! できるときに家計の情報共有
- うつ病を周りに隠さないことで助けられることも
- 日常的な夫婦の会話が異変に気づくきっかけに
【特集】お金のこと、子育てのこと、“情報共有”が大切だった!もしも夫が働けなくなったら……
詳しい内容は2021年LEE11月号(11/7発売)に掲載中です。
イラストレーション/二階堂ちはる 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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