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BTSのVにデビュー作を推薦され、一夜にして人生変わった?『家にいるのに家に帰りたい』著者インタビュー

昨年グラミー賞にノミネートされた人気K-POPグループ・BTSのメンバーであるVが、グラミー・ミュージアムでインタビューされた際に「最近本を読み始めました。その本は僕にたくさんの慰めと共感の言葉をくれました。でもまだ本の表紙しか読んでいません」と語り、日本でも話題をさらったエッセイ『家にいるのに家に帰りたい』(辰巳出版/&books)。上手く言葉にするのは難しいけど、誰もが心の中に抱えている思いが丁寧に綴られており、「私だけのために書いてくれたみたい……(感涙)」と日々の生活に追われお疲れ気味のアラサー・アラフォー女性を癒やしています。今回、著者のクォン・ラビンさんのインタビューが実現しました!

家にいても心安まる空間がないこと、ありますよね?

——タイトルの『家にいるのに家に帰りたい』に込めた意味とは?

クォン・ラビンさん(以下ラビン):『家にいるのに家に帰りたい』というタイトルは、文字通り、年齢に関係なく自分が落ち着き癒される空間である家のことを意味しています。一人暮らしや寮生活をする10代の学生や20代の社会人であれば誰もが、家族と暮らした幸せな家を懐かしく感じることでしょう。家にいても育児と家事で忙しくて休む空間がない主婦や、仕事が終わった後家事と育児に追われてひとりでゆっくりする時間がないワーキングマザーも、夢のように完璧な家を望んだことがあるのではないでしょうか。そんな思いをタイトルに投影しました。

家にいるのに家に帰りたい書影
『家にいるのに家に帰りたい』クォン・ラビン:著、チョンオ:絵、桑畑優香:訳(辰巳出版/&books)

——『家にいるのに家に帰りたい』の出版は、Instagramがきっかけと伺っていますが、Instagramをはじめたきっかけと、本を出版することになった経緯について教えてください。

ラビン:ずっと文章を書き続けるうちに、それを見た親しい作家の方たちから、「わたしがやっているみたいに、Instagramに投稿してみたら?」と提案され、Instagramを始めました。幼いころからいろいろな本を読み、小説を書きたいと思っていて、小説を書く前に自分の文章のが人々にどれぐらいの影響を与えるのか確かめてみたかった。そんな思いからわたしの人生をありのまま率直にさらけ出した『家にいるのに家に帰りたい』が生まれました。

BTSのVさまには、いつも心の中でお辞儀を

——BTSのVがグラミーミュージアムのインタビューで本を読んだことを聞いたときは、どんな風に感じましたか。

ラビン:不思議なことにその日は早起きして家の掃除やペットの散歩、入浴などを終え、しばらく休憩して仕事を始めようとしたときに出版社から連絡をいただきました。なんというか、その日にかぎってやるべきことがスムーズに進むなか、さらにうれしく良い知らせが届き、家の中で飛び跳ねながら声をあげました。BTSのVさまがどこにいらっしゃるのかわかりませんが、いつも心の中でお辞儀をしながら感謝の気持ちを表しています。身にあまる幸せです。宇宙の大スターがわたしの本について話をしてくださるとは……。ひたすらおそれいるばかりです。今でも、その気持ちは変わりません。いつか直接感謝の気持ちをお伝えしたいです。

——ご自身は、この本を書いて、どんなふうに考えや生き方が変わりましたか? また本書を出版してからラビンさんの生活や人生はどう変化しましたか?(または変化していない?)ご自身の変化、周囲の変化など教えてください。

ラビン:実は、執筆中から出版後半年までは、とてもつらかったです。環境的にも厳しく、うつ病の病状もよくなかったからです。でも、本を書きながら自分と向き合い、トラウマをひとつずつ克服していきました。苦しい人生の中でしばらく失っていた光を取りもどし、健康も回復するよう努力しています。SNSやメディアであまり顔を出さないので、周りに大きな変化はありません。わたしが作家だということを知っている人もごくわずかです。

「紫の月」のような作家として光を放ちたい

——韓国でのインタビューで、ご自身を「紫色の月」と表現しています。その言葉に込めた意味とは?

ラビン:紫色と月が好きなんです。InstagramのIDの@pm_rabinは「purple」の頭文字と、「午後(PM)のラビン」という意味で、「あなたの午後をわたしのエッセイで魅了したい」という思いが込められています。ラビンはペンネームで、本名はハングルで「月」という意味です。不思議なことに四柱推命で「月が見える」と言われたこともあります。世界に存在しなかった特別な紫の月のような作家として光を放つことができるように、「永遠の紫の月」といつも自己紹介しています。

クォン・ラビンさん
紫色の髪の毛が素敵なクォン・ラビンさん(写真:クォン・ラビンさん提供)

——本書の装幀や本文見出しが紫色をキーカラーにしていたり、本文中でも恋人からお好きな紫色のスターチスとともに愛の告白を受けたことに言及されていたり。Instagramでお顔写真を拝見してもヘアカラーの紫色がとても素敵ですが、改めてラビンさんにとって紫色とはどんな色ですか?

ラビン:紫には、「スペシャル」「尊さ」「神秘的」などの意味があります。そんな人、作家になりたいと願うわたしだけのパーソナルカラーであり、いろいろな空間を紫色に染めていきたいです。そして、紫は広大な宇宙の色。わたしの影響力も宇宙のように広がっていくよう望んでいます。考えが変わらないかぎり、これからもずっと髪をパープルに染めたままにしたいです。

ラビン流・自分の機嫌の取り方

——『家にいるのに家に帰りたい』は、自分の中のモヤモヤした言葉にできない気持ちが、とてもきれいに言語化されていることが印象的でした。気持ちを言葉にするということはその分自身の気持ちに向き合うことが必要になると思いますが、孤独やさみしさといったネガティブな感情にはどのようにして向き合っていますか?

ラビン:わたしはたいていの時は、本に書いてあるような憂うつな状態ではなく、とても明るく華やかでユニークな性格です。インスタライブをする時も、わたしが明るいので驚く人がたくさんいます。ポジティブな性格ですが、うつ病を患っているだけです。孤独と寂しさ、そしてネガティブな考えが襲ってくると、ひとりで布団をかぶってやり過ごしたり、気持ちをそのまま文章に書いたりします。ありのままの自分に向き合うことが難しい時には、面白いバラエティ番組や、ドラマ、映画を観たり、本の世界に浸ったりして、心を癒します。

クォン・ラビンさん
写真提供:クォン・ラビンさん

——「言葉の重み」や「みかん半分の愛」のように、だれもがきっと感じる日常のさりげない思いや出来事を上手に言語化されています。執筆のスタイルを教えてください。

ラビン:わたしは、日常のすべてと自分の人生、人との会話、それら全部がインタビューであると考えています。タクシーで運転手さんと話す内容、ラジオから流れてくるエピソード、街で偶然聴いた曲の歌詞、愛する人たちや読者との対話、本を読んでインスパイアされたこと。映画、ドラマなど。見る、聞く、感じる、すべてが私にインスピレーションを与えます。インスピレーションを得ると、スマートフォンにメモして文章にまとめたり。特にアイディアがわくのは、シャワーをしている時です。1日3~4回シャワーを浴びることもあります。周りの言葉を一つでも聞き逃さず観察し、分析するタイプで、テレビのCMを見た時も、メッセージを分析します。眠りに落ちて半分夢を見ているような状態の時も、夢の内容が気に入ったら、いつか小説を書く時のためにスマートフォンのメモに書き留めるほど……。ちょっと変わっているかもしれませんが、そんな毎日です。

日本の映画、小説、マンガが好き!

——日本でも翻訳出版のオファーが来たとき、どう思いましたか? そしてなぜ韓国だけでなく日本でもヒットしたと思いますか? もちろんBTSの影響もありますが、今やARMYではない読者も多数手に取っています。

ラビン:日本語版のオファーの知らせを聞いたときは、すごくうれしかったです。作家として初めての本ですし、自分の人生を盛りこんだ本が広く知られることを喜ばない人はいないでしょう。個人的な考えですが、ARMYではない方たちが読むのは、同じ東アジア文化圏だからかもしれません。日本と韓国は生活パターンも似ていますよね。子どもの頃に日本のマンガ、本、カルチャーによく触れていて、「似ているな」と思っていました。いまも日本の映画、小説、マンガが好きです。

クォン・ラビンさん
写真提供:クォン・ラビンさん

——日本の読者からは「普段は思わず(思わないように)過ごしていること心の中で願っていることが書かれていて、自分を抱きしめたくなった」「ネガティブな感情を隠さなくてもいいのだと気づいた」という感想も届いています。ラビンさんが一番うれしかった読者からのメッセージは何ですか。本書の読者からの反応・感想で、特に印象深いものを教えてください。

ラビン:本にも書いてありますが、「まるでこっそりわたしの心をのぞき込み、わたしのためだけに書いてくれたみたい」というコメントが届き、「自分の記憶を呼び覚ます、こんな文章を読みたかった」と明け方にメッセージを書き込んでくれた人もいました。「偶然読んだラビンさんの文章に癒された」というアメリカ在住の人もいます。私のエッセイを「常連の人だけが知っている隠れたバー(Bar)のようだ」というコメント、「母親がいなくても、十分幸せに暮らせる」というメッセージ。すごくたくさんのメッセージが届く中でも、特別なコメントは別の場所に大事に保存しています。読者のみなさんからのメッセージに、わたしも涙を流したり、笑顔になったり。親しい作家の方が「作家と読者はお互いを励ます関係」とおっしゃっていましたが、エッセイを書いて、その言葉の意味が理解できるようになりました。感想とコメントは全部見ています。返事も書くように努力しています。いつも感謝しています。

(翻訳/桑畑優香)

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