引き続き、アスリートフード研究家の池田清子さんのインタビューをお届けします。プロマウンテンアスリートの夫と結婚し、アスリートフードマイスターの資格を取得。さらには自身がレースに出て優勝するアスリート並みの体力を持つ池田さんは、『LEE』でもおなじみのモデル浜島直子さんが所属するモデル事務所の社長でもありました。人との縁を大事にし、すぐ行動に移すフットワークの軽さ、女性の美の価値観の変化が、今の池田さんへと導きました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む)
料理と演劇が好きだった10代20代
山道を軽々と駆け抜けるパワフルな池田さんですが、幼少期は体も細く、食べるのが苦手な子だったそうですが、当時から好きだったのが料理。児童館の子供向け料理教室が好きで、小学2年生から皆勤賞だったと言います。
「料理って、作る過程も楽しいし、出来上がったらおいしく食べられて、作った相手も喜んでくれる。毎月の料理教室が本当に楽しみでした。小学校低学年生の時、オーストラリアから帰国した叔母にカレーを作ってあげたこともあります。冷蔵庫にお肉がなくて、油揚げを代わりに入れて作ったんですよ。当時からプラントベースの素質があったのかも(笑)」(池田さん)
中学時代はバスケットボール部、高校時代は軟式テニス部に所属するも補欠で、スポーツが得意ではなかったと言います。高校時代にはまったのが観劇、中でも演劇集団『キャラメルボックス』が好きで何度も劇場へ制服のまま通ったそう。大学進学後は自身も別の劇団に所属し、演劇に没頭します。卒業後は就職せず、劇団とバイト漬けの日々でした。
「劇団員=お金がないというイメージを持たれるのが嫌で、バイトや派遣で月60万円ほど稼いだ時も。公演が始まると働けなくなるので、朝7時から夜10時まで集中的に働きました。日々の楽しみになっていたのが、大学を卒業してから通っていた料理教室です。ABCクッキングスタジオに8年通いました。バイトを掛け持ちしながら通う料理教室がとにかく楽しくて、ストレス発散の時間でしたね」(池田さん)
マクロビとの出会い、高校の同級生だった夫との再会
25歳で劇団を辞め、お金を稼ぐためでなく「好きな仕事に就こう」と思った池田さん。ある日偶然丸ビルで行われていたモーニング娘。のイベントを見て、「オーラのある人と働きたい」と決意し、求人情報誌でモデル事務所のマネージャー募集を見つけ応募。浜島直子さんが当時所属していたモデル事務所に採用されます。その後、モデル事務所で働きながらマクロビオティックの教室に通い始めます。
「マクロビの教室もに行ってみない?と友人が誘ってくれました。最初は単発のイベントで参加しましたが、植物性の食材だけでこんなに美味しくなるんだ!と感動したのを覚えています。美や健康に意識が高いモデルさんに何かフィードバックできるかもしれないと習い始めました。2年通って、インストラクターの資格を取得しました」(池田さん)
仕事もプライベートも充実していた32歳、転機が訪れます。友人との会話で、高校の同級生だった池田祐樹さんの名前が出て「会いたいね」と盛り上がります。「高校時代、彼が私のことを好きだったんです(笑)」。そして祐樹さんと再会し、交際をスタート。翌年にはモデル事務所を退職し、33歳で結婚します。
「彼はアメリカに10年ほどいて、その間同窓会にも来なかったのでアスリートになっているとは知りませんでした。私自身もアスリートの妻になることは予想外でしたが、優しい性格は相変わらずで、夢を叶えた強さにも惹かれました。英語も喋れるし、いつか現役人生が終わった時も、彼と一緒なら頼もしいと思って結婚を決めました」(池田さん)
海外で女性の美への価値観を変えられた
結婚後、アメリカのチームに所属する祐樹さんの海外遠征に同行するように。あるときはアメリカからカナダ、再びアメリカへ戻って今度はモンゴル、そして韓国へと3〜4カ月間スーツケース一つで飛び回ります。海外のアスリートコミュニティで過ごす中、女性の美の価値観が大きく変わっていきます。
「それまでは、美しい女性=肌が白い、華奢というイメージでした。初めてアメリカに遠征した時、びっくりしたのを覚えています。ベビーカーを押しながらランニングする女性がいたり、日に焼けたブラトップ姿で筋トレをする女性がいたり。昼はアクティブでも夜はきちんとドレスアップして、そのギャップもかっこよくて。『鍛えている女性は、なんてかっこいいんだろう!』と思うようになり、理想の女性像が“守られる女性”から“強い女性”へと変化しました。それからは日焼けを恐れず外での運動にシフトしていきました。時間がある時は近所を走ったり、アメリカではビジターが気軽に参加できるトレイルレースも開催されていたので、レースに参加することもありました」(池田さん)
支える側から自身もアスリートへ
2015年に青梅マラソン30㎞の部に初挑戦し、完走。以降毎年参加し、2017年には青梅市民の上位に入り、女性選抜枠1名に選ばれ札幌マラソンへ招待されます。アスリートを支える立場から自身がアスリートへ、本人も気づかなかったポテンシャルを引き出したのは、まず行動するフットワークの軽さだったと振り返ります。
「もともとあまり考えずに行動するタイプでしたが、いいお手本(祐樹さん)が近くにいるから、『私もできるんじゃないか』『表彰台に乗れるんじゃないか』と、感覚が麻痺しちゃうんですよね(笑)。慎重になりすぎると出来なくなるので、とりあえずやってみる精神を大切に。フットワークを軽く、人との縁やタイミングを大事に行動してきました」(池田さん)
2016年にアスリートフードの研究や情報発信を行うビオトープ株式会社を設立。2017年には以前に勤めていたモデル事務所が閉業するのを機に、浜島直子さんら5人のモデルと一緒に新たなモデル事務所を設立します。アスリートの妻、モデル事務所の経営。一貫してサポート側に徹しているように見えますが、「どんな仕事も自分を輝かせることにつながっている」と言います。
「オーラがある人と仕事がしたい、この人たちを輝かせたいと夢中になっているうちに、自分が輝いていたように思います。支える側も支えられる側も、表も裏もない。モデルとマネージャー、夫と妻、どちらも替わりがいない対等な関係です。私がモデルのバッグを持ったり、傘をさしたりするのは、彼女たちが最高の笑顔でいられるためにやっていることです。夫に対しても同じで、現役人生が長ければ長いほど私にも返ってくる。すべてが自分につながることなんですよね」(池田さん)
自分も地球も健やかに。プラントベースで120歳まで生きる
モデル事務所は渡米のため昨年閉所、現在はアスリートフードやプラントベースを伝えるためのメディア活動やイベントへの登壇、レシピ監修や市区町村とサイクリスト向けメニューの開発など、忙しい日々を過ごしています。目標は、プラントフードの魅力を伝えながら、いかに健康寿命を伸ばしていくか。地球全体の健やかさを意識しながら生きることの必要性を夫婦で感じています。
「40歳を迎え、考え方が変わってきました。自分だけの美や健康を追求するのではなく、地球全体の健やかさが大切だと気づきました。地球が健康じゃないと、自分たちも健康になれない。自分も地球の一部であることを感じながら、地球や環境のために何をすべきか考えて日々過ごし、食事をすることが大切。買い物は投票と言いますが、何に投票するかを示したいし、近所の農家や無農薬の農家を応援したいです」(池田さん)
「グルテンフリーやグラスフェッド(牧草だけを餌に放牧して育てられた牛など)、様々な食生活を試みましたが、プラントベースが一番調子が良かったです。2018年からはプラントベース一筋です。食事を学ぶことはすべてに繋がります。自分の体に入れるものを勉強すると、それがどこから来たか知りたくなる。スケールが自分から世界、地球へと繋がり、自分だけの問題ではないと気づきます。環境や動物に与えるデメリットを減らすために食事で何ができるのか、それを考えるとライフスタイルも変わってきます」(夫・祐樹さん)
「プラントベースの食生活でも、健やかで元気に生きられることを多くの人に知って欲しいです。年齢を重ねるのは悪いことではないですが、できればいつまでも若々しく元気でいたいのも事実。今は健康寿命をいかに伸ばすかが課題で、理想は120歳になっても現役でいること。それを夫婦で実現したいです」(池田さん)
池田清子さんに聞きました
身体のウェルネスのためにしていること
スマートウォッチとアプリで睡眠の質を管理
「『ガーミン』のスマートウォッチとアプリで、ランニング中の心拍や呼吸数などのパフォーマンスをはじめ、睡眠の質をトータルで管理しています。毎日どれくらい深く眠れているかをチェックしています」
心のウェルネスのためにしていること
好きな香りで気分転換
「アロマやお香で気分をリフレッシュしています。午前中にトレーニングや仕事を終わらせ、午後にホッとしたい時やお出かけの時など、気分転換に香りは欠かせません」
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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akky