ジェンダー、女性差別、貧困、性教育、政治……と各分野に詳しい、ライターの堀越英美さんがおすすめ作品をセレクト。ストーリー性が高く、楽しみながら考えさせられる作品ばかりです。
ライター 堀越英美さん
『不道徳お義母さん講座』(河出書房新社)などの著書で、社会に根づく価値観について調査や分析を行う。最新作に『モヤモヤしている女の子のための読書案内』(河出書房新社)。
著書では、母親に求められる自己犠牲やジェンダー規範に疑問を投げかけている堀越英美さん。
「映画・ドラマでもステレオタイプから外れた母親像が描かれていると興味をひかれます。中年女性が魅力的に描かれていたり、ステレオタイプな人物に見せかけて複雑な内面があったりするのも、予想が裏切られておもしろいと感じますね」(堀越英美さん)
おすすめ作品のひとつ『バッド・ママ』の中にはこんな印象的なシーンが。
「主人公の母親が、PTAの会合に遅刻したからと役員を割り振られてしまう。『これ以上は何もできない』『無理よ、やめるわ』とタンカを切るところは、母親もこんなことを言っていいんだ!と勇気づけられました。フィクションにはさまざまなカテゴリーの人々の内面を描き出す力があると思います。ことさらアップデートしようとしなくても、作品を通して自分とは違う立場の人生を想像していけば、他人を踏みにじらずにすむのかも」(堀越英美さん)
映画 【バッド・ママ】
ワンオペや夫の浮気にブチ切れ! PTA会長に立候補して母親の解放を目指す
「仕事と家事、育児を1人でこなすワーキングマザーが、夫のネット浮気やムダなPTAの集まりにブチ切れ。ママ集団に仲間外れにされていた子だくさんママや遊び人のシングルマザーと本音で語り合ってはめを外す仲になり、PTA会長に立候補してほかの母親を解放しようとする物語。日本と同じ“母親の苦労あるある”に笑ってスカッとしながら、“母親はこうでなければならない”という縛りを解き放てるお話です」(堀越英美さん)
映画 【40歳の解釈:ラダの場合】
主人公は40歳目前の黒人女性。ステレオタイプを覆してくれて新鮮!
「“ヒロインは若くてスリムな色白美人”というステレオタイプに真っ向から殴り込みをかけるような、黒人女性の主人公が新鮮。主人公は40代にしてフリーランスの劇作家で生活費にも事欠き、崖っぷち状態からラッパーになろうとします。乾燥肌や更年期への不安をネタにするラップがかっこよくて、中年女性として勇気がわいてきます」(堀越英美さん)
【特集】映画・ドラマで価値観をアップデート
詳しい内容は2021年LEE7月号(6/7発売)に掲載中です。
撮影/フルフォード 海 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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