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コロナ禍を機に毎朝の散歩と花生けが日課に。平井かずみさんの「意外にも充足した日々」

  • LEE編集部

2021.05.08

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私のウェルネスを探して 平井かずみさん【前編】

「私のウェルネスを探して」は、心身共に健やかに過ごしQOL、自分自身の人生の質を上げることの大切さにいち早く気づいて、様々な形で発信を始めた方々の「ウェルネスを探す旅」をたどるインタビュー新連載です。

「娘」「妻」「母」「社会人」など様々な顔を持ち、多忙な日々を送るLEE読者の皆さん。取材などを通じて読者の皆さんと接していると、気遣いができる頑張り屋さんがとても多いなと感じますが、ちゃんと自分自身をいたわってあげていますか? たまには立ち止まって、自分の内なる声に耳を澄まして、それに応えてあげませんか? 自分自身をいたわり、大切にすることによって、人間は初めて他人にも優しくなれるもの。本連載が皆さんのウェルネス向上のヒントとなれば幸いです。

記念すべき第1回のゲストは、LEE本誌の連載「平井かずみさんが尋ねる 私たちがここに暮らす理由」でもおなじみ、フラワースタイリストの平井かずみさんです。昨年のコロナ禍は平井さんにとっても、これまでの生活や働き方を見つめ直すターニングポイントになったそう。この1年間にあった様々なことを振り返り、新しいチャレンジ「Seed of Life」についても、たくさん語ってもらいました。(この記事は全2回の1回目です)

いつも身体が疲れていて、気力だけで乗り切っていた

平井かずみさん

取材開始と同時に開口一番「自分を大事にする、が今年のテーマなんです」と言う平井さん。花生けの教室「木曜会」の生徒さんは月に100名を超え、教室の合間には取材やワークショップ等で全国を飛び回る日々。どこに行っても平井さんに会いたい人、平井さんをもてなしたい人に囲まれ、そして人を喜ばせることが大好きな平井さんも全力で応えていました。

「色々な場所に行かせていただいて、色々な方と一緒にお仕事ができて、自分は本当に幸せだと当時は思っていました。でも今になって振り返ってみると、働き過ぎでしたね。人にも会い過ぎていましたし、とにかくいつも身体が疲れていて、でも楽しいので気力だけで乗り切っていました。出張先で食事中に寝落ちしてしまったことも(笑)。この2、3年は会う人会う人に『大丈夫? さすがに忙し過ぎない?』と心配されていましたけど、自分がなぜ心配されているのかも分かっていなかった。心身のバランスが取れてなかったんでしょうね。あのペースで働き続けていたら、今頃病気になっていたと思います」

平井かずみさんの鉱物コレクションの一部

平井さんの鉱物コレクションの一部。「この世界は、 相反する二つのもので成り立っていると感じることがあります。例えば、陰と陽、光と影など。植物と同じくらい好きな鉱物もその関係を考えると、『植物は地面から上に成長していくもの、鉱物は地面から下に向かっていくもの』という具合で、相反するもの同士だからこそ、強くそれぞれの魅力を感じているように思います」

コロナ禍でお花の教室が開催できなくなる

平井かずみさんのお花の教室

平井さんが図らずもそんな生活を改めるきっかけになったのが、昨年2月に日本にも上陸した新型コロナウィルス。3月には教室が開催できなくなってしまいます。

「私にとって教室は花の生け方を教えるだけの場ではなく、生徒さんとのキャッチボールの場。生徒さんの声を聞き、何を求められているのか、何をしたら喜ばれるのか、私も受け取らせてもらうかけがえのない場。なので、教室を開催できないことの影響は大きかったです」

予定されていた取材や撮影もほとんど中止に。先行きの見えない状況でしたが、いつまでも落ち込むことはなく「さて、私には何ができるのか?」と発想の転換をした平井さん。3月、春が訪れ、花が芽吹き、咲き始める時期でした。美しく咲き誇る花を見て「今が盛りの花を皆に見てもらいたい……そうだ、花を届けよう!」と思い立ちます。



意外にも心身ともに充足した日々

平井かずみさんのハーブティー「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」のドライハーブを自分でブレンドしたもの

取材中に平井さんが淹れてくださったハーブティー。大切な場所という「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」のドライハーブを自分でブレンドしたもの。

その場でアシスタントさんに「私、すごいひらめいちゃった!」と連絡、翌日には作戦開始。平井さんと長年交流のある那須の花農家さんの無農薬で露地栽培の花と、高知のまるふく農園の無農薬ハーブの花を、4月から3カ月にわたり「季節の花のお届け便」として配送することに。届いてからの花生けを楽しんでもらえるようにと、平井さん自ら花の種類と生け方を解説した動画も作成。準備に追われつつも、意外にも心身ともに充足した日々でした。

「季節の花のお届け便」動画

「季節の花のお届け便」動画

「季節の花のお届け便」動画。実は動画編集未経験だった平井さん。アシスタントさんがお子さんを撮るために買った一眼レフカメラを借りて撮影、手探り状態で編集したとは思えない出来映えはさすが!

「毎朝散歩に行き、植物に触れ、帰宅後は2時間くらいお風呂に入っていました。久しぶりに自分のためだけに花生けをしたのもこの頃。『お届け便』をしていたから花は必ず家にありましたし(笑)。好きな映画をいっぱい観たり、本をいっぱい読んだり、自分をリセットさせてもらう貴重な時間を過ごせました。『つらい』という感覚は全くなかったですね。これまで他人のために使っていた時間を自分のために使うようになり、今年になってようやく『今まで自己犠牲が過ぎていたな』と気づきました」

「手当」という言葉は文字通り「手を当てる」こと

平井かずみさん

この頃から平井さんの日課に、入浴後のオイルマッサージが加わります。スイートアーモンドオイルをキャリアオイルに、その時々の気分で選んだエッセンシャルオイルをブレンドした、自分のためだけに作ったオイルで全身をマッサージ。自分の身体に手を当て、なでることによって、身体のどこが具合が悪いのか「自分の身体に聞けるようになった」といいます。

「『手当』という言葉は文字通り『手を当てる』こと。自分の身体や心の状態を知ることに繋がるんです。オイルマッサージをするようになって、それまでじっくり見たことがなかった自分の裸を見るようになったので(笑)、体型作りにも役立っています」

コロナ禍の中、TVは一切観なかったという平井さん。確かな情報は何もないし、状況をただただ静観するしかない。平井さんの教室の生徒さんに医療従事者が多く、彼女たちの話を聞いて、ずっとステイホームしていた人との温度差を感じていたことも影響していた、と当時を振り返ります。

今こそ、花や絵の持つ「癒やし」の効果を伝えたい

平井かずみさんのインスタグラム(@hiraikazumi)より

平井かずみさんのインスタグラム(@hiraikazumi)より

「季節の花のお届け便」の準備が多忙を極める中、友人でイラストレーター・銅版画家の平澤まりこさんと、二人で今出来ることをやってみよう、ということに。花も絵も絶対必要なものではない、無くても死なない、でもあれば幸せを感じるもの。コロナ禍で不安な人々の心に安らぎを与えてくれる、花や絵の持つ「癒やし」の効果を二人で一緒に伝えたい。そんな思いから、4月の新月の日に「hirahira」を結成します。

平井かずみさんのインスタグラム(@hiraikazumi)より

平井かずみさんのインスタグラム(@hiraikazumi)より

母の日には平井さんの花束と平澤さんのイラストのセットを、6月末の夏至の日にはハーブの花冠をイメージしたリースと、植物のパワーを感じられるヒーリングスプレー、それと平澤さんが手がけたオラクルカートを届ける「hirahira便」を企画。ユニット名の「hirahira」は平井さんと平澤さんの名前の一部を拝借しただけではなく、「風の時代」の今、必要なものを届けて消える、風のようにひらひらと……という意味が込められています。

生まれて初めてオンライン展示会を主催する

INDUBITABLY online exhibition × ikanika

緊急事態宣言が解除された頃には季節も夏に移り変わり、街中に花を買いに行けるようになったので「季節の花のお届け便」は一段落することに。7月には平井さんの友人で、鹿児島在住の服飾作家の西ひろみさんが手がけるブランド・INDUBITABLYの展示販売会をikanikaで開催する予定でした。コロナ禍を考慮して翌年に延期すべきか迷ったものの「来年に延期したら今作ったものを今出せない、作品が放つ光が弱まってしまう」と思い、急遽オンライン展示を敢行することに。

そうは言っても、平井さんにとってオンライン展示会を主催するのは初めてのこと。とにかくまずはお手伝いをしてくれるスタッフを探すことから。偶然にもすぐに良い出会いがありコロナ休業中の若い会社員の男女2名を平井さんみずからスカウト。オンラインで西さんに全展示品についての思いをまる2日がかりで語ってもらい、スカウトした若いスタッフとの意識の統一を計りつつ、3週間でサイトを立ち上げました。展示販売会の開始と同時にほとんどの商品が売れ、翌朝起きたらソールドアウト! 期間中はInstagramでライブ配信も行い、好評を博しました。

「私に何か出来ないかな?」という使命感

平井かずみさんのインスタグラム(@hiraikazumi)より

平井かずみさんのインスタグラム(@hiraikazumi)より

4月に陶芸家の二階堂明弘さんの展示会で開催予定だった花生けのワークショップがオンラインに変更になってしまった際は、二階堂さんの器に合う花を平井さんがセレクトしてお届け、オンラインでのワークショップを。「季節の花のお届け便」でも、ハーブの花を提供してくれたまるふく農園さんに「イベント用にハーブコーディアルの瓶をたくさん買ったのに中止になってしまい、手元に持て余していて……」との話しを聞いて、急遽ハーブコーディアルと花をセット販売したことも。

「思いつくことは何でも実験! 夏までずっとそんな感じで、これまでとはまた違った感じで忙しかったかも。何か人の話を聞くと『私に何か出来ないかな?』と、使命感がウズウズとしてきて。そういうときこそ人は『命を使う』べきだと思いません?(笑)」

平井かずみさんのアトリエ

平井かずみさんの年表

21歳 映画配給・レコード会社に就職
25歳 園芸にはまり、造園業でアルバイト。
26歳 インテリアショップの立ち上げより携わる
31歳 フラワースタイリストのアシスタントに
33歳 独立、「ikanika花の会」を始める。独立して最初の10年は何もかも一人でこなす
34歳 家に飾った花の雑誌取材を初めて受ける
38歳 初の著書『いつも、花のこと。』(マーブルトロン)を出版
花の教室「ikanika花の会」や、全国でワークショップを開催、合間に雑誌・書籍の取材・撮影をこなし、多忙を極める
45歳 同業者に呼びかけ「虎ノ門フラワーマート」立ち上げ 監修
46歳 LEEの連載「平井かずみさんが尋ねる 私たちがここに暮らす理由」開始
48歳
2020年03月
コロナ禍で教室が開催できなくなる
48歳
2020年04月
「季節の花のお届け便」開始。「hirahira」結成
48歳
2020年07月
「INDUBITABLY」オンライン展示会を主催。教室再開
48歳
2020年12月
森岡書店にて「seed of life」刊行記念イベント
49歳
2021年01月
「seed」ウェブサイトをローンチする
49歳
2021年02月
立春の日、屋号を「木曜会」に変更する

 

後編に続く

伝えたいのは「花の生け方」より「植物と人との関わり」。
平井かずみさんのウェルネスを探す旅


撮影/高村瑞穂 取材・文/露木桃子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
ファッション、ビューティ、インテリア、料理、そして読者の本音や時代を切り取る読み物……。
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