気に入ったお店は何度も足を運びメニューはもちろん、お店の雰囲気込みで、楽しんでいるというまさこさん。好きなお店は、どこも少し懐かしく至極真っ当に「おいしい」を追求している姿勢が共通しています。そんなまさこさんがリピート通いしている東京の名店の魅力をご紹介します!
昭和の文人たちも愛した
明治創業の鳥すきやき専門店「ぼたん」
まさこさんが「寒くなったら一度は来ないと」と毎年通う「ぼたん」は、創業以来、鶏1羽を丸ごといただける「鳥すきやき一筋」という老舗。
昭和4年に建てられたという風情あふれる店舗は、都の歴史的建造物に選定されており、鍋はガスを使わずに、備長炭と鉄鍋で加熱するのが特徴。和服姿の中居さんが目の前で、手際よく調理してくれます。
「海外に住む友人が帰国したときにも、よく一緒にこちらにお邪魔します。鳥すきやきを堪能した後、ぶらぶら歩いて『山の上ホテル』で一杯というのが定番コース。近所には『近江屋洋菓子店』やおそば屋の『まつや』もあって、『古きよき東京を味わえる』と、友人たちにも好評なんですよ」
鍋の具材は鶏肉と焼き豆腐、白滝、ねぎとシンプルですが、鶏のさまざまな部位の味わいや食感を楽しめるので、食べ飽きることがない。
「店内はお座席なので、ゆったりとしたスカートで来るのがおすめです」とまさこさん。
店内で毎朝さばくという鶏肉は、新鮮そのもの。むね肉、もも肉、砂肝、レバー、ハツ、つくねを、甘辛の割下と溶き卵でいただく。つくねのみ、少し成長した鶏の肉を使っているので、歯ごたえもありうま味も強い。
常連さんは、最後に残った割下に白飯を投入して卵でとじ、親子丼風にして食べる人も多いとか。
ぼたん
DATA
東京都千代田区神田須田町1の15
☎︎03・3251・0577
営/11:30~21:00(入店は20:00まで)
休/日曜・祝日
※11月3日まで臨時休業中。
「基礎から手作り」がモットー
下町の人気洋食店「洋食ヨシカミ」
炎の上がる厨房が眺められるカウンター席に、赤いギンガムチェックのクロスがかかるテーブル席。「ご近所の常連さんから地方から来る旅人まで、老若男女が気さくに集う、『街の洋食屋さん』という空気が何より好きなんです」。
名物メニューは数あれど、まさこさんが繰り返しオーダーするのは「ビーフシチュー」。毎朝仕込み始め、3日間煮っぱなしでうま味をぎゅっと凝縮させた、手間も原価もかかる正統派デミグラスソースがおいしさの秘密です。
肉はスプーンでもほろっと割れるやわらかさ、まろやかでコクのある味わいは、一度食べたらやみつきに。
「日本人の味覚に合うように」と、お米や日本酒の味にも合うような、どこか懐かしい味わいを工夫しているそう。昭和の頃は、「ヨシカミ」店内でカニサラダとステーキを食べ、お土産にカツサンドを買って帰るのが、「浅草の粋で大人な遊び方」といわれていたとか。
洋食ヨシカミ
DATA
東京都台東区浅草1の41の4
☎︎03・3841・1802
営/11:30~22:00(21:03LO)
休/木曜
http://www.yoshikami.co.jp/
餃子に、串焼きに……
ラムのおいしさを味わえる!「味坊」
中国・東北地方出身の梁宝璋さんが、「故郷の郷土料理を知ってほしい」と2000年に開店させた「味坊」は、中華好きの間では知る人ぞ知る名店。
まさこさんのお目当てはラム肉料理、とりわけ焼き餃子がお気に入り。あんの肉は、中華包丁で手切りしているため独特の食感で、中身は玉ねぎ、キャベツ、葉にんにく、塩、しょうゆ、ごま油とごくシンプルですが、毎日その日の分を手作りしているので、常に軽やかで新鮮な味わいに。
「いつ訪れてもたくさんのお客さんでにぎわっていて、スタッフも元気、まるでアジアに旅したような気分になれます」
ビオワインのラインナップが豊富なのも、人気の理由のひとつ。冷蔵庫からボトルを自由に選び、セルフで取り出すスタイル。今年から通販がスタートし、スパイスがたっぷりかかったラム肉の串焼きや、焼き餃子、水餃子などもお取り寄せできるように。
味坊
DATA
東京都千代田区鍛冶町2の11の20
☎︎03・5296・3386
営/11:00~14:30(ランチ・月〜土曜)、17:00~23:00(ディナー・22:30LO・月〜土曜)、13:00〜22:00(21:30LO・日曜・祝日)
休/不定休
http://www.ajibo.jp/
フランス旅で出会った
思い出のまかないメニュー「KUCHIBUE」
まさこさんの友人で料理家の坂田阿希子さんが営む人気洋食店「KUCHIBUE」。
定番メニュー「ミロトン」は、坂田さんがフランス・トゥールーズのレストランで研修をしたとき、まかないとして出会った料理がベースになっています。「ブイヨンをとった後のだしがら肉に、キャラメリゼした玉ねぎやトマト、ビネガーなどを入れて煮込んだ料理で、『日本のハヤシライスに似ている!』と感動して。にんじんごはんと組み合わせたのは私流で、甘味と酸味の組み合わせが絶妙なんですよ」と坂田さん。
脂ののった雌の黒毛和牛を使用、肉のおいしさもしっかり感じられます。
まさこさんと「肉友」でもある坂田さん。会えば「おいしいお肉料理」の情報交換も。「娘も大好きで、ここ最近はテイクアウトにもお世話に。どのメニューも必ずおいしいという安心感があって、家庭では絶対に作れない上質なプロの味が楽しめます」
KUCHIBUE
DATA
東京都渋谷区猿楽町29の10ヒルサイドテラスC棟15号
☎︎03・5422・3028
営/11:30~16:00(ランチ・15:00LO)、18:00~21:00(ディナー・金・土曜のみ・19:30LO)
休/月~木曜(2020年10月現在)
https://kuchibue.tokyo/
ほどよく脂がのった
ジューシーなステーキを堪能!「CHACO あめみや」
まさこさんが「今日は、ひたすら肉」と決めた日に、足を運ぶステーキハウス。パンとライスはパス、サイドメニューはサラダくらいにしてじっくり肉と向き合うのだそう。
店内にある炭火の暖炉窯で炎が上がるシーンは圧巻。高温でさっと焼くことでうま味を閉じ込めるとともに脂がほどよく落ち、炭火の香りが肉に移ります。
ステーキはハンバーグ、ヒレ、サーロインと4種類ありますが、リブロースは脂身が一番多いものの、肉質がいいのでしつこさは皆無。かたすぎずやわらかすぎず、「肉好き」からの評価も高いとか。
山梨県出身だったという先代からのつながりで、オリジナルワインは勝沼町の「ルバイヤート」のもの。軽やかだけど、お店のお肉に合う味わいを選んでいるそう。’70年代に開店してから当時のままの店内は、古きよき昭和の香りが漂う落ち着いた空間。
CHACO あめみや
DATA
東京都渋谷区千駄ヶ谷1の7の12
☎︎03・3402・6066
営/11:30~14:00(ランチ・火~金曜)、17:00~22:00(ディナー・火~土曜)~21:00(日曜・祝日)
休/月曜
http://chacoamemiya.com/
伊藤まさこさん
暮らしまわりのスタイリストとして幅広く活躍する。「ほぼ日」でネットのお店「weeksdays」を開店中。10月に『母のレシピノートから』の新装版が筑摩書房から発売予定。インスタグラムは(masakoito29)。
【特集】伊藤まさこさんの「やっぱり肉が好き!」
詳しい内容は2020年LEE11月号(10/7発売)に掲載中です。
撮影/松村隆史 取材・原文/田中のり子
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