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山﨑賢人さん「表現者としての複雑な揺れ。弱さや人間らしさに共感した」

2020.04.16

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近年ますます幅を広げ、多才な演技力を見せつけている山﨑賢人さん。さらに“味ある本格派”と冠をつけたくなる飛躍を感じさせるのが、又吉直樹さんの同名原作を映画化した『劇場』だ。恋愛純文学として異例のベストセラーになっている作品を、『世界の中心で、愛をさけぶ』など、恋愛映画の名手と言われる行定勲監督が手掛けた。だが山﨑さんは、最初“恋愛映画とは思わなかった”と語る。

山﨑賢人さん
「表現者としての複雑な揺れ。弱さや人間らしさに共感した」

シャツ¥105000/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ)

「今はちゃんと“恋愛映画”と認識していますが、原作も台本もすごくおもしろく、かつ重厚で。僕が演じた永田の、ちょっと弱い部分や、自分のことで一杯一杯になり人を傷つけたり嫉妬したりする部分に、まず目が行って。そういう人間らしさに魅力を感じたし、表現者として、すごく共感しました」

素直に“共感した”と口にすることからも、山﨑さんの正直さや率直さがうかがえる。というのも永田という男は、かなり身勝手で嫌味な奴だったりするのだ。自分の劇団がうまくいかないと、周りを見下すことで防御したり、恋人の沙希を傷つけることでプライドを保ったり、束縛したり……。

「たまに息苦しさも感じましたが、“人間ってそんなきれいなもんじゃないでしょ”と思いながら演じるのは、おもしろかったです。本当はムカついて恋人のバイクを壊したのに、正直に言うと別れられるから、“事故った”と言ってしまう弱さは、自分でも映画を観て笑っちゃって(笑)。僕自身、正しいことだけが正しいとは思わないし、間違ったりうまくいかなかったりすることを経験した人間のほうが、よくなれると思う。そういう意味でも、永田が好きなんですよね」

嫌味な奴なのに、憎みきれない。そんな微妙な魅力の永田を、見事に体現した山﨑さんに脱帽!

「やりすぎると嘘くさくなるので、さじ加減はとても考えました。ここまで人間の弱さや醜さ、どうしようもなさを演じたのは初めてなので、それを恋愛映画としてやれて、すごくよかったです」

ボサボサの長い髪に無精ひげ。そんな姿の山﨑さんも初めて見るが、そのヤサグレ加減がセクシーだったりするから、侮れない。

「永田は自己主張が強く、ボロい服すら演出。“どうだ、こんな俺は”というアイデンティティの表出というか。行定監督が提案してくださった髪とひげで、だいぶ気持ちも変わりました。男の象徴とも言える“ひげ”にずっと憧れていたので、撮影が終わって剃るのは寂しかったです。しばらくしたらまた伸ばしたいな」

永田を全肯定し、支え続ける恋人の沙希を“理想”とも語る。

「あえて仕事の話をせず、神様みたいにすべてを受け入れてくれる沙希みたいな優しい人、最高ですよ(笑)! しかも自由にさせてくれてますから」

最後、まさか“ゲス男”だと思っていた永田にここまで泣かされるとは!! 不器用な2人の恋の行方、その結末に酔いしれてほしい。さて、才能のあるなしに苦悩し続けた永田を演じた今、山㟢さんが思うこととは──。

「もちろんもともと備わった能力や環境に、少なからず左右されるとは思います。でも、どんなことも練習すれば絶対にうまくなれる。だから僕は、やり続けることが一番大事だと思うし、好きであり続けることを大事にしたい。それこそが僕は才能だと思っています」

Profile

やまざき・けんと●1994年9月7日、東京都生まれ。2010年に俳優デビュー。以降、さまざまな作品で主演を務める。近年の主演作に『キングダム』(’19年)、『ヲタクに恋は難しい』(’20年)。『今際の国のアリス』がNETFLIXで配信予定。

CINEMA
『劇場』

©2020「劇場」製作委員会

友人と旗揚げし、脚本兼演出を担う劇団が酷評され、客足も伸びず、永田(山﨑賢人)は現実と理想の狭間で揺れている。ある日、自分と同じスニーカーを履く沙希(松岡茉優)に衝動的に声を掛け、なんとなく付き合うことに。金のない永田は、ほどなく沙希の部屋に転がり込むが。又吉直樹の同名小説を行定勲が映画化。4月17日より全国ロードショー。


撮影/菅原有希子 ヘア&メイク/永瀬多壱(ヴァニテ) スタイリスト/伊藤省吾(sitor) 取材・文/折田千鶴子

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