近頃、よく耳にするようになったSDGs。これは2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに達成したい17の国際目標のこと。地球を保護し、貧困に終止符を打ち、すべての人が平和と豊かさを享受でき、持続可能で多様性があり、一人ひとりが支え合う社会を目指す行動を呼びかけています。
2019年、世界のSDGs達成度ランキングで日本は162か国中15位。17の目標のうち、日本の達成度が遅れていると指摘されたものの中に、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」があります。
2019年のジャンダーギャップ指数で、日本が153位中121位と不名誉な順位を記録したのは記憶に新しいところ。ジェンダーギャップ指数でも指摘された女性の政治参加度の低さをはじめ、男女の賃金格差などが影響しています。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を是正するため、女性を輝かせるために働く女性たちによるトークイベントが行われました。
“ママじゃなきゃいけない”の呪縛に囚われず、仕事を手放さない
イベントを主催したのは、ジェンダー平等の実現に取り組む「kanatta」。女性が輝く仕組みとコミュニティを提供するクラウドファンディングサービスやエシカルな女子会「kanatta salon」、女性の視点からドローンを利用した様々なプロモーションに携わる「ドローンジョプラス」などを運営しています。
トークショーでは「kanatta」代表取締役社長の井口恵さんを司会に、子ども服のオンライン買取サービス「キャリーオン」代表取締役の長森真希さん、国際協力NGO「ジョイセフ」で働く小野美智代さんが参加。
最初に就職した企業が深夜3時まで働くのが当たり前で「ここでは長く働けない」と感じ、外資系企業に転職。女性も働きやすい企業だったものの、マネジメント層が全員男性だったことに違和感を覚え、仲間と「kanatta」を創業した井口さんが、まず二人に尋ねたのは女性が働くこと。特に長森さんと小野さんはママ。働くママが増えたとはいえ、最適化された環境とは言いづらい日本社会でママとして働くことについて。
長森 仕事と家庭の両立ってよく耳にしますが、両方うまく回すってかなり難易度が高く、私は両立しようと思ったことはありません。子どもが小さい時に起業したこともあり、“ママじゃなきゃいけない”“手作りじゃなきゃいけない”という呪縛で自分をがんじがらめにしないようにしました。人や機械、借りられる力は全部借りる感じでした。
小野 基本的に私も両立はできない派。でも仕事がだめな時に子どもからパワーをもらうこともあるし、その逆も然り。両方あるからこその私らしさだと考えています。
長森 やっと保育園や幼稚園に入れても保育料が高く、仕事を辞める人もいます。でも仕事を手放すことは自分の居場所を失うこと。絶対にあきらめてほしくないです。
男性経営層は古い価値観をアップデートしてほしい
職場の男女平等に関し、井口さんは「女性自身が諦めているのではないか」と指摘します。
小野 私もそうでしたが、多くの女性は大学まではあまり性差を感じていなかったと思います。でも社会に入った瞬間、男性上司の先入観を押し付けられる。それは“育児は女性がするもの”という古い価値観を“ママが育児をした方が子どもは喜ぶ”というやさしさを装いながら、男性に都合のいいように変換しているだけ。本来のやさしさとは、妊娠・出産した女性が、今後も働きたいのか、休みたいのか、それを女性自身に決めさせることだと思います。
長森 マネジメント層は圧倒的に男性。男性社会になってしまうのは仕方ない傾向があります。ただもう少し柔軟な働き方ができればいいのに、と考えて『キャリーオン』では積極的にママを採用。現在共同経営者以外の社員は全員女性です。生産性さえ落とさなければいいので、働きやすい時間にシフトを組むとか、お子さんの体調が悪いなら休んで振替出勤にするなどしています。
ジェンダー平等のための必要なことは?
長森 地球では何万年も男女がいて発展してきたのだから、男女ともにいないとダメ。一時キラキラママが流行りましたが、キラキラパパがいたっていいと思います。
小野 大学でジェンダーを専攻した当時は、「男性と闘う女性」のイメージがあって。でもジェンダーは対立構造ではなく、男女一緒に取り組まないといけない問題。例えば夫婦別姓だってそう。うちはお互いの気持ちを大切にしたら夫婦別姓という結論になり、事実婚です。他の国の人には日本は夫婦同姓を強いられるというと不思議がられます。日本がグローバル・スタンダードとだいぶ違っているんですね。日本ではマイノリティな存在かもしれませんが、私が楽しんで生きているからでしょうか、娘たちは「私も早く大人になりたい」と自立心強く育っています。日本は多様性を謳っているわりに、まだまだ画一的。小さい時から人権教育の場を設けて、様々な考えやライフスタイルがあることを広めていきたいです。
自分や周囲の働くママを見ていると、働くママとって最高の職場環境が一朝一夕に叶うとは思えません。でもお二人のように歩みを止めない働くママがいる限り、少しずつでもよい方向に進むのではないか。そう感じたトークショーでした。
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津島千佳 Tica Tsushima
ライター
1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。