LIFE

生理とのポジティブな付き合い方

生理のイメージを変えたい!「エミリーウィーク」柿沼あき子さんがこめた想いとは

2020.02.11

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体調面でもメンタル面でも、なんとなく後ろ向きな気持ちになることが多い時期。

でも最近、生理を擬人化したコミックや、生理期をもっと快適に過ごすためのアイテムが話題だったり。生理をとりまく環境が少しずつオープンに、そして変わってきているように感じませんか?

そこで、女性の月のリズムに寄り添う商品を提案する、ブランドディレクターの柿沼あき子さんにお話をうかがいました。

生理とのポジティブな付き合い方01
気持ちを満たすアイテムで生理へのイメージを変えたい

PROFILE
「エミリーウィーク」コンセプター 柿沼あき子さん
美大卒業後、ベンチャー企業のwebディレクターを経て2014年にアパレルブランド「ベイクルーズ」に入社。女性のリズムに寄り添う「エミリーウィーク」のブランドを立ち上げ、商品設計や開発などを行う。

 

L EE読者の大半が、生理期に心身に何かしら不調や不快さを感じています。柿沼さんもまさしくLEE世代ですが、エミリーウィークを立ち上げたのはご自身の経験からですか?

「今の会社の前、web系企業でディレクターとして夢中で働いていました。でも入社2年目くらいから生理が重くなり、生理前の期間も含めた心身の不調がやり過ごせないほどになってきて……。
頭が痛く、体がつらくて動けないのに、でも職場ではそれを表に出すことができない。今、目の前にある仕事は言ってみれば最先端、なのに生理という原始的な体の営みでこんなに苦しまなければならないというギャップ……。なんだかアンバランスだな、って。

こうしたギャップをなんとか埋めようと、体質改善を開始しました。食べ物に気をつけて生活リズムを整えたり、肌にやさしい生理用品を選ぶようにしたり。
すると生理が少しずつ改善する実感があったんです。

それまではただ煩わしさしか感じず、早く過ぎ去ってくれるのを願うばかりだった生理でしたが、丁寧に自分の体と向き合い、体と心が喜ぶものを試すことで、もっと快適に乗り切れると感じました。
そんな中、同僚の女性と話していて同じように生理がつらくて“落ちて”しまう人が大勢いて、でもみんなガマンしていることを知りました。『生理期をもっと心地よい状態で、自分らしく過ごせるように』というエミリーウィークの構想は、その時点で出来上がりました。

自分がいいと思うデザインで布ナプキンを試作したり、細々と活動を開始したのですが、個人でブランドを立ち上げるのはハードルが高いと痛感しました。そこで、思いを実現するべく今の会社に転職し、3年目で社内の新規事業のコンペに応募して採用が決まり、2017年にブランドがスタートしたんです」(柿沼あき子さん)

生理をとりまく環境がポジティブに変化してきて

「エミリーウィーク」2019年秋冬のブランドイメージビジュアル。

こ数年、世界的にも日本でも女性を不自由から解放する運動やムーブメントが盛んです。生理についてもネガティブなイメージがだいぶ変わってきて、エミリーウィークも、そうした流れを作っているひとつといえそうですね。

「性被害に声を上げる『#MeToo』から始まり、ハイヒールの強制に抗議する『#KuToo』、生理ナプキン購入の際に、中身を見えなくするための紙袋をもらわない『#NoBagForMe』や、台湾の女性のための漢方ブランド『デイリリー』の誕生など、今、明らかに女性を取り巻く状況と、世の中の空気が変わってきていると感じます。

実は『#NoBagForMe』は、大学時代の友人もかかわっていたんです。こうやって、私たちの世代から同時多発的に女性の性にまつわるさまざまな動きが出てきたことは、時代の必然なのだと感じます。

女性が長時間働くことが一般的になり、でも女性であることを強いられたり、逆に隠したりしないといけないというジレンマ。そんな状況にみんなが『なんとかしたい』と声を上げ始めたってことなんだろうな、と」(柿沼あき子さん)

理をとりまく環境がポジティブに向かう一方、それでも隠したい人もいたり、生理痛やPMSの程度も人それぞれ。個人差が大きく、女性同士でも共感を得にくいという声が読者から聞かれました。

「生理ってセンシティブでとても個人的な問題。だから一律に『もっとオープンに!』とは言えない。店頭での接客の際も、そこは気をつけています。

でも、これだけは言えるのは、心地よさはみんなが求めているということ。『おしゃれである』ことはその要素のひとつとしてとても大切だと思うし、そうでないと多くの女性の心に響かない気がして。

エミリーウィークは、生理期間を軸に4週間のバイオリズムに寄り添ったアイテムを展開しています。アロマオイル、布製ライナー、インナーなどさまざまなものがありますが、中でもブランドの柱は、サニタリーショーツやブラなどのインナー類です」(柿沼あき子さん)

体を美しくヘルシーに見せるこだわりのアンダーウェア

『HIGH(er)magazine』編集長のharu.と、女性のためのライフ&カルチャーコミュニティ「Sheis」とのコラボインナー。気持ちが明るくなるビビッドな色。

オーガニックの「ビオリコットン」を使用したショーツとブラトップは定番人気。

「生理期は体がむくみバストサイズも変化します。ショーツはハイライズでおなかをしっかり包み込み、そけい部を締めつけず、ブラタンクは見返しをなくしてバストまわりにゆとりを持たせるようにしました。

お客様の声も取り入れながら着心地や生地の肌ざわりにもこだわって、毎シーズン試行錯誤をしながら作っています。身につけることで、ブルーに傾きがちな気持ちが上がればいいな、って」(柿沼あき子さん)

女性のひと月を4パターンに分け、それぞれの時期に寄り添うアロマも。エッセンシャルオイル、アロマスプレーなどが揃う。つらさをやわらげて幸福感を高めて。

者のアンケートを見ていても、親世代やまたずっとその上世代からの「あえてオープンにするべきものではない」「そういうものだし……」というなんとなくの刷り込みの影響も大きい気がします。

「インナーに特別な思い入れがあるのは、私自身の経験もベースにあります。初潮がきたとき、母はお赤飯を炊いてくれました。でも父や兄弟の前では『なぜ赤飯か』の理由を言葉に出して言わなかった。祝われているのか隠されているのか、なんだか微妙な空気だったのを覚えています(笑)。

母の世代は生理とはそういうものだったから、仕方がなかったのかもしれません。でも、時代とともに考え方や価値観は変わっていってもいい。お赤飯もいいですが、だったらおしゃれな生理用インナーのほうが私はうれしかったと思うし、生理に対してもっとポジティブな気持ちになれたはず。

エミリーウィークが、親から子どもへ、そういう考え方や感じ方を伝えるための選択肢にもなれたら、と思っています」(柿沼あき子さん)


撮影/フルフォード 海 取材・原文/遊佐信子

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