個性も強いが、自然体で可憐。両立しにくいそれらが絶妙なバランスで融合した魅力の蒼井優さん。昨年もスクリーンで迸る才を見せつけたが、主演した『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督と約10年ぶりに再タッグを組んだのが、夫婦の10年にわたる愛の軌跡を描いた『ロマンスドール』だ。
蒼井 優さん「2人は日々いろんなものを抱え、こぼして生きている」
「約10年前に発表されたタナダさんの原作小説を当時読み、見事なまでに男女が同じ角度ですれ違っていく、直線の図が頭に思い浮かび、すごくおもしろいな、と思いました。いじらしいけど、人としての足りなさも似ている2人だな、と。それから10年の時を経てタナダさんからお話をいただき、今の私が演じられることがうれしかったです」
蒼井さんが演じるのは、ラブドール職人の哲雄が職業を偽ったまま結婚する園子。美人で気立てがよく、まさに理想の奥さんだ。
「私が演じたのは、実は園子そのものではなく、哲雄が語る園子。哲雄のナレーションで始まり終わる本作は、いわば哲雄の思い出話でしかない。だから生々しくならないよう、いろんなものを削いでいって。それもおもしろかったです」
力が抜けていながら毒もあるタナダユキ世界は、演じながらも独特のおもしろさを感じるそう。
「タナダさんのホン(脚本)って、読んでいるときと違う感覚になるんですよ。演じていると副音声のように、会話とは別の掛け合いをしているというか。一つの球でキャッチボールするのではなく、いろんな球を渡し合っている感じは、タナダさんならではのおもしろさ」
哲雄が園子に惚れて惚れて結婚したのに、日々の生活の中ですれ違ってしまう夫婦の現実に、“わかる~!!”と嘆息する人も多いはず。
「夫婦って、それぞれがオリジナルだから“うちは、こうでした”ってだけの話ですが(笑)。夫婦というより、人ってこうして日々いろんなものを抱え、いろんなものをこぼしていっているんだな、と。それは致し方のないことだし、それはそれで悪くない。2人だから抱えられるものも、2人だからこそこぼしていくものもある。そういうことを、客観的に優しくお届けする映画だと思います」
哲雄を演じるのは、高橋一生さん。『リリイ・シュシュのすべて』以来、18年ぶりの共演になる。
「当時ひな鳥状態だった私は、目にしたものはすべて親(笑)。一生さんにも勝手に安心感があり、今回もリラックスして胸を借りさせていただいた。素晴らしい役者さんなのに、“僕はポッと出と思われてるから”とかおっしゃる、自信のなさというか感覚が逆に素敵で」
夫婦の話と言えば、蒼井さん自身の結婚が昨年、ちまたで大きな話題をさらったのは記憶に新しい。
「うちは私も旦那さんもなんでも話すので、実は互いに秘密を抱える哲雄と園子がまったくわからない(笑)。何も考えずになんでも話せるので、すごく助かっています。ただ、それはあくまで現状で、この先どうなるかはわからない、という冷静さはありますよ(笑)!」
そんな蒼井さんの今の癒しは何か問うと「菊池亜希子ちゃんのインスタグラムで、娘さんの成長を見ること」とユニークな答え!
「モノを取ったらすぐ投げるだけじゃなくて、じ~っと見つめることを覚えたのかぁ、とか、日々勝手に感動して癒されています(笑)」
Profile
あおい・ゆう●’85年8月17日、福岡県生まれ。’01年、『リリイ・シュシュのすべて』のヒロイン役でデビュー。『フラガール』(’06年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(’17年)などで多数の賞を受賞。近年の主な出演作に『斬、』(’18年)、『長いお別れ』『宮本から君へ』(ともに’19年)など。
『ロマンスドール』
ラブドール職人の哲雄(高橋一生)は、目的を偽ってモデルになってもらった園子(蒼井優)に一目惚れ。衝動的に告白し、念願かなって職業を伏せたまま結婚する。しかし2人は少しずつすれ違っていき、やがて園子からある秘密を打ち明けられる……。『ふがいない僕は空を見た』などのタナダユキ監督が、自身の同名小説を映画化。1月24日(金)より全国ロードショー。
撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/石川智恵 スタイリスト/森上摂子(白山事務所) 取材・文/折田千鶴子
ニット¥42000/ヤエカ ホーム ストア(コンテンポ) スカート¥38000/ヤエカ(ヤエカ ライト) レザーストラップネックレス¥96000(マルコム ベッツ)・ネックレス¥18000(ヘルミーナアセン)/バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター
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