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生瀬勝久さん 舞台『グッドバイ』は「僕が今持っているものづくりへの執念が詰まった作品です」

2019.12.28

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圧倒的な存在感と、奇想天外な役どころから市井の人まで幅広くこなす演技力の持ち主である俳優・生瀬勝久さん。映像作品に欠かせない俳優のひとりだが、もとは演劇畑の出身。最新舞台『グッドバイ』では出演だけでなく演出も担当。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の作品を、別の演出家の手で新たにつくり上げる「KERA CROSS」の企画で生瀬さんに声がかかった。

生瀬勝久さん「僕が今持っているものづくりへの執念が詰まった作品です」

「2015年にKERAさん演出の『グッドバイ』初演を観て、僕が観たナンバーワンのKERA作品だと思うほどおもしろかった。でも数年前に上演されたばかりの戯曲だし、無理かもと思いながら『グッドバイ』を演出したいと申し出てみたらOKが出たんです」

自分が実際に観ておもしろかった作品となると、演出するうえでプレッシャーも感じそう……。そう質問するとニカッと笑って「ワクワクしかない!」と生瀬さん。

「作品のクオリティを下げたらどうしようなんて思わない思わない! 僕は楽天家でポジティブな性格だから。上しか見ない(笑)」

演出家としても、俳優と同じくらいのキャリアを持つ。

「演出を始めたのは20代で劇団に入ってから。当時は脚本も演出も自分でやって出演もするのが当たり前だったので。演出のやり方は年々変わっていくけど、今はあえて言葉だけで動きを説明するのが僕の課題だと思ってます。僕は俳優だから自分でやって見せることもできるけど、演じる人に自分の頭で考えて動いてほしいので。もうひとつ理由として、器用にマネできない役者さんを落ち込ませたくないという気持ちもあります。言葉で理解してもらうには、僕自身の伝え方も重要ですが、役者と共通言語がないと成立しない。なので役者さんと共通言語があるかというのは、演出家として一番気にするところですね」

『グッドバイ』では、主人公の田島と妻との関係も見どころ。夫婦間でも共通言語があるかないかは夫婦円満のカギになりそう。過去にベストファーザー賞も受賞している生瀬さんのご夫婦の場合は?

「世間一般の常識にあてはめず、自分たちのルールでやっていくこと。仕事も家の大きさも抱えてる事情もみんな違うんだから。僕自身が心がけてるのは、お互い何か不満があったら、答えが見つかるまでとことん話し合うこと。それもなるべく不満が小さいうちに解決する! そうしないと同じことで何回もケンカするでしょ?」

夫婦も話し合いを重ねることで共通言語ができていくのかも。お子さんとは一緒に宿題をやることで共通言語を増やしているとか。

「昨日も歴史を一緒に勉強しました。自分にとっても勉強になるし、小学生のときから一緒にやってます。“それではクイズです!”って遊びっぽく問題を出すことも」

最後に、観劇経験がない人に向け、舞台の魅力を語ってもらった。

「ドラマや映画と違って、自分で観たいところにフォーカスしたり、聴きたい声に耳をそばだてたりできるのが舞台のおもしろさ。最初は戸惑うかもしれないけど、五感が研ぎ澄まされて、感性が磨かれます。ドラマなどから僕に少しでも興味を持ってくれたなら、ぜひ『グッドバイ』を観に来てください。僕が今持っているものづくりへの執念が詰まった作品です」

Profile
なませ・かつひさ●’60年10月13日、兵庫県生まれ。大学在学中に関西の人気劇団に入団。俳優、劇作家、演出家として活躍。最近はドラマ『あなたの番です』、映画『任俠学園』などに出演。『それって!?実際どうなの課』番組MCの顔も。’20年は舞台作品出演も続く。

KERA CROSS『グッドバイ』

ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品を才気あふれる演出家たちが手がける「KERA CROSS」シリーズ第2弾。雑誌編集者の田島(藤木直人)は東京に妻子を呼び寄せるため、愛人たちと縁を切ることを計画。怪力で大食いの美女・キヌ子(ソニン)との出会いから物語は思わぬ方向に。●2020年2月4~16日 シアタークリエ

シアタークリエ公演に関するお問い合わせ=☎03・3201・7777(東宝テレザーブ)

1月11〜13日かめありリリオホールをはじめ、山形、新潟、広島、大阪、香川、愛知、福島公演あり


撮影/斎藤大嗣 ヘア&メイク/光野ひとみ スタイリスト/中谷東一 取材・文/古川はる香

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