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ドラマは「脚本家」で見るともっとおもしろい!

ドラマは「脚本家」で見るともっとおもしろい! なかはら・ももたさん×木俣冬さん「私たちがあの脚本家を推す理由」

2019.11.17

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家事や育児の息抜きに、私たちを楽しませてくれるテレビドラマ。脚本家それぞれの作家性や隠れた名作を知ることで、おもしろさの幅が広がっていくんです。今、ドラマ界で最も熱い人物&情報を凝縮してお届け!

仕事としてもかかわりながら、プライベートでも、日々のドラマの感想をネットで発信しているお二人。日本でも屈指のマニアたちが、脚本家で見るドラマの魅力を語ります!

(左)漫画家 なかはら・ももたさん
少女漫画家。’18年に放送された朝ドラ『半分、青い。』では、ヒロインの劇中絵を担当した。ノベライズのイラストも手がけるほか、趣味でドラマ絵をネット上にアップ中!

(右)フリーライター 木俣 冬さん
ライター・ドラマ評論家。著書に『みんなの朝ドラ』(講談社)など。仕事とは関係なく現在再放送中の『おしん』の感想をつぶやくなど、朝から晩までドラマ漬けの日々

ドラマを脚本家で見る理由は信頼感とファン心にあり! 

──数々のドラマ評論を手がけ、ノベライズの仕事も多い木俣さんと、少女漫画家で、ドラマのスピンオフ作品も発表しているなかはらさん。二人が仲よくなったのも、一緒に仕事をした『あまちゃん』ファンブックの打ち上げ旅行というドラマつながりだったとか。

木俣「もともと私は演劇好きだったんです。うんと若い頃は『“劇”といえば演劇だろ!』と思ってました(笑)」

なかはら「え、なんか意外!」

木俣「完全にドラマを好きになった転機は’99 年。堤幸彦さんが演出を手がけて、西荻弓絵さんが脚本を書かれた『ケイゾク』です。小劇場系俳優のキャスティングのセンスがよかったんですよね。そもそも数多くの名優、脚本家の方々が、テレビドラマに貢献してきた歴史がある、『もしやドラマって侮れないのでは?』と(笑)」

なかはら「そうだったんですね。私は幼い頃からドラマ好き。小学生のときは『パパはニュースキャスター』『うちの子にかぎって…』みたいな、モンスター系の親(笑)としっかり者の子どもたちのドタバタ劇が好きでしたね~」

──そんなお二人にとって、ドラマを脚本家で見る魅力とは何でしょう?

なかはら「私は“信頼感”かな。たくさんのヒット作を書いている井上由美子さんは、男と男のディープな関係性を描いてくれる。その“由美子節の濃さ”を信頼して見ちゃうんですよ」

木俣「作家性への信頼、ありますよね。昔から映画で語られる理論に、大切なのは①筋(脚本)②抜き(演出)③動作(役者)というものがあって。一番は脚本だと言われるくらいで、私はいいドラマにはいい脚本家が不可欠と思っています。それと小説や漫画だと好きな作家ができると、その人の新作も過去作も読みたくなりますよね。ドラマも同じようにファンになった脚本家の作品を追っていくのは楽しい!」

なかはら「うんうん!」

木俣「印象に残っている脚本家やドラマってあります? 私がドラマに目覚めた『ケイゾク』以前は、北川悦吏子さん、坂元裕二さんといった脚本家の世界観で見せる作品が中心でしたよね」

なかはら「私は野島伸司さんですね。特に『ひとつ屋根の下』は大好きで……。野島さんの脚本の、かわいそうにかわいそうを重ねる展開から目が離せず。多作な方なので悲惨な話だけでもないのですが、私はどの野島ワールドも受け入れています(笑)」

木俣「愛ですね(笑)。私は三谷幸喜さんや宮藤官九郎さんといった演劇出身で、ご自分で演出もできる独自の世界を持った方々が好きなんですよ」

なかはら「最近の方はどうですか?」

木俣「演劇出身ではないですが、『リーガル・ハイ』など論理的な脚本に定評がある古沢良太さんは、目が離せないです」

なかはら「古沢さんの話、難しい!」

木俣「(笑)。難しくなくひたすら笑えるドラマなら福田雄一さん。今の人気脚本家のお一人です。なんといっても『逃げ恥』の脚本で一躍注目を浴びた野木亜紀子さんの登場は、大きかったかな。原作でも、オリジナルでも確固たる世界を持っている脚本家です。優しさの中に、心に響くセリフを織り交ぜる安達奈緒子さんも活躍してますね」

なかはら「『きのう何食べた?』、漫画原作ものですけどよかったですよね」

木俣「今は、社会問題などの深いことをやわらかく書ける人が人気な気がします。それが今っぽさかも」

なかはら「そうかもしれません。私はエグい話も好きですけどね(笑)」

木俣「あとは登場人物たちがわちゃわちゃ会話するドラマ。楽しそうに集う場が多いと、こちらも盛り上がります」

なかはら「主人公が会社帰りにカッコいいバーに寄り、ひとりごちる、みたいなのじゃなくて(笑)。『あまちゃん』の喫茶リアスみたいなね。そういう場があると、主役以外のいろいろなキャラにも思い入れができますよね」

木俣「役者さんたちも本当に楽しそう、と思わせる場の描写力は大事ですね」

なかはら「それにしても脚本家はすごい仕事だと思います。漫画は、自分の世界を一人で動かせるでしょ? ドラマは、世の中のしがらみや要求にこたえなきゃいけないじゃないですか(笑)」

木俣「臨機応変さが必要だから、ある程度年齢を重ねた方が活躍されるのかもしれません。ただ個人的には、少し若い方の作品も見たいかなあ」

なかはら「そうなんです。クドカンが『池袋ウエストゲートパーク』でドラマ界に颯爽と現れたときの、猛烈な若さと勢いみたいなものを感じたい!」

木俣「『モトカレマニア』を書いている坪田文さん、いいですよ。中堅作家ですが、近年連ドラのメインライターに昇格してきました。オリジナル脚本が書ける、20代の新鮮な才能が登場してくるのを期待しています!」

木俣さんの「この脚本家がすごい!」
優しさの中に鋭いセリフが光る 安達奈緒子さん

「恋愛ものから社会派ドラマまで幅広い安達さん。ジャンルは違えど、繊細なストーリー展開の中にちょこちょこっと入ってくるセリフに、今を生きている私たちの心をえぐる、何かがある気がするんです。やわらかさと鋭さの塩梅が上手な方だと思いますね」

初期の隠れた名作。情緒ある恋物語
『大切なことはすべて君が教えてくれた』

「"主人公の婚約者が浮気した"と、設定こそ恋愛ドラマっぽさ満点なのですが、派手な展開は少なく、登場人物たちの心の機微を丁寧に描いている初期の名作。新しいタイプの脚本家が登場したと思いました」。DVDで視聴可能。

男同士の関係描写に魅せられる
『リッチマン、プアウーマン』

「同じ恋愛ものでもポップ路線。ヒロインの相手役の小栗旬さんと、彼の共同経営者役である井浦新さん、二人の男の友情の描き方が上手。安達さんは人間関係の描写力にも優れていると思います」。DVD、配信で視聴可能。

現在放送中!
『G線上のあなたと私』

(C)TBS

いくえみ綾さんの漫画を安達さんが脚本化。「人生に傷ついた主人公の気持ちが、どう動くのか。安達さんならではの繊細な描写と今後の展開が楽しみ!」。TBS系・火曜22時より放送中。

これも安達さん脚本

  • 『失恋ショコラティエ』
  • 『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-3rd season』
  • 『透明なゆりかご』
  • 『きのう何食べた?』

なかはらさんの「この脚本家がすごい!」
男のエロさとエグさを書き切る 井上由美子さん

「’90年代初頭にデビューされ、NHKの朝ドラの執筆経験もあり、現在も一線で活躍中の大御所です。どの作品にも、私が"由美子節"と呼んでいる(笑)、男と男のエロいくらいの愛が描かれていて、それがなんともたまらない魅力。信頼して見ている脚本家さんです」

男のゆがんだ愛憎を堪能できる
『白い巨塔』

「天才かつ野心家の財前(唐沢寿明さん)と、人間愛にあふれた里見(江口洋介さん)。対照的な医師二人の、憎しみと愛に満ちた関係性に没入してしまいます! 20話以上ある大作ドラマですが、DVDボックスセットを100回以上は見返してるはず」。DVD、配信で視聴可能。

斎藤工さんの役の輝かせ方がすごい
『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』

「ヒロインは上戸彩さん。彼女の役も魅せてくれるものの、このドラマは斎藤工さんの役にうっとりできるところがいいんですよ! 彼の素敵っぷりに、私が敬愛する"由美子節"が詰まってます!」。DVD、配信で視聴可能。

現在放送中!
『シャーロック』

(C)フジテレビ

「犯罪捜査専門のコンサルタント役のディーン・フジオカさんと、警部役の佐々木蔵之介さん。個人的にはこの二人をよりディープに絡ませてほしい」。フジテレビ系・月曜21時より放送中。

これも井上さん脚本

  • 『連続テレビ小説 ひまわり』
  • 『きらきらひかる』
  • 『GOOD LUCK!!』
  • 『緊急取調室』

木俣さん、なかはらさんの「この脚本家がすごい!」続きはLEE12月号で!


※今回の特集内の情報は、10月15日時点のものです。

撮影/齊藤晴香 イラストレーション/鈴木あり 取材・文/石井絵里

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