LIFE

CULTURE NAVI「今月の人」

尾上菊之助さん、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』を5年かけて実現!「より深い世界観に触れてほしい」

2019.11.09

この記事をクリップする

伝統芸能を継承しながらも、蜷川幸雄が演出したシェイクスピア×歌舞伎『NINAGAWA 十二夜』など、新作歌舞伎にも意欲的に取り組み、新しい世界を切り拓いている尾上菊之助さん。令和元年に菊之助さんが生み出す新作は、宮崎駿、スタジオジブリ関連作品『風の谷のナウシカ』の歌舞伎舞台化。

尾上菊之助さん「国民的作品の歌舞伎舞台化。より深い世界観に触れてほしい」

「新作を作りたい……これは歌舞伎俳優として生きている者誰もが持っている夢なんです。今回は私から、ジブリさんにお話しさせていただき5年をかけて実現することができました」

戦争で破壊された産業文明。異形の生物と人間が共存する終末世界で生きるナウシカ。原作漫画全7巻分を昼夜通しで公演するのも話題で、国民的ヒロインの新しい魅力を歌舞伎が教えてくれそうだ。

「映画は原作の一部なので、舞台では映画で描かれた以降の話……腐海が作られた謎や巨神兵、王蟲の謎も。蟲たちがどうして生まれてきたのかなどにも触れるので、より深いナウシカの世界観に触れていただけることになると思います」

宮崎駿作品は、幼い頃に見て感じる感動と衝撃と、大人になって見て気付く問題提起、メッセージの深さがある。避けて通れない環境問題の現実を、『ナウシカ』を通して今、あらためて考えることに。

「そこなんですよね。ジブリ関連作品が時代を超えて大人から子どもまで愛されるエンターテインメントであるゆえんは。年齢を重ね、自分が成長すればするほど、見えてくる角度、深さが違ってくる」

すでに初舞台を踏んでいる長男と2人の娘のパパ。未来へ託す想いは親としてさらに深まる。

「私も親になったことで環境問題について自然と考えるようになってきています。子どもたちの未来のために意識せざるを得ない。時代を問わない、読む者観る者の世代を選ばないエンターテインメントである『ナウシカ』の物語は、普遍的なものを描いていて、古典となり得る魅力があります。愛されている作品だけにプレッシャーはありますが、作り込み甲斐のある戯曲ですので楽しみながら作っていきたいですね。背景で使う絵具もジブリらしい温かさ、懐かしさの色味で描かれると思いますし、衣裳もナウシカ、クシャナ感も大切にしながら、歌舞伎らしい豪華さも損ないたくないと、うまい折衷案を見計らっているところです」

ファンタジーでも、いわゆるアナログ手法で描くのが歌舞伎。スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』も人海戦術と伝統芸によってルフィの手はビヨーンと伸びた。

「人がつながって手が伸びましたもんね。人の持つ力、古典的な手法によってテクノロジーと同じ感動を感じていただけるのが歌舞伎のおもしろさだと思います」

ドラマにも出演中の忙しい日々。使いすぎの頭脳を休めるためにも、夏には家族と旅行へ。

「子どもが喜びますからね。今はアクティビティや施設が充実しているじゃないですか。子どもにかこつけて自分も楽しんでます(笑)。カヌーに乗って、“お父さん、こぐの上手”って褒められましたよ」

インスタグラムには、おいしそうな本格テールスープの写真も。

「今、ドラマでシェフを演じていますので、最近は特に料理をしています(笑)。煮込み料理はいいんですよ。台本読んで、鍋を見てアクを取って、また台本読んで……。いい気分転換になっていますね」

スーツ¥340000/イザイア ナポリ 東京ミッドタウン(イザイア) シャツ・タイ/スタイリスト私物

Profile
おのえ・きくのすけ●’77年8月1日生まれ、東京都出身。音羽屋。’96年『弁天娘女男白浪』ほかで五代目尾上菊之助を襲名。女方、立役ともに意欲的に取り組む。映像でも活躍しており、現在『グランメゾン東京』(TBS系列日曜21時〜)に出演中。

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』

産業文明は戦争で滅び、大地のほとんどは巨大な蟲が生き、有毒な瘴気を発する菌類の森、腐海におおわれた。戦乱の中、この世界の謎に迫るナウシカ(菊之助)。ナウシカと出会い目覚めていく皇女クシャナ(中村七之助)がたどり着く真実は!? 演出は新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』を手がけたG2。脚本は映画『借りぐらしのアリエッティ』を宮崎駿とともに手がけた丹羽圭子が担当する。新橋演舞場で12月6~25日まで。


撮影/菅原有紀子 ヘア&メイク/キクチ タダシ(LUCK HAIR) スタイリスト/中井綾子(crêpe) 取材・文/堀江純子

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる