今年の賞レースを席巻した本作は、感動必至の物語はもちろんのこと、リアルで魅力的な人物像、役者の存在感と演技力、観るべきテーマ性、シリアスなテーマにかかわらずユーモアあふれる語り口と、どこを切っても賞賛しか思いつかない！ 『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』など、ヒットコメディ作品を多数手がけてきたファレリー兄弟の、兄ピーターの単独監督作というのも驚きだ。

差別が色濃く残る’62年。ニューヨークのナイトクラブで用心棒をするイタリア系のトニーは、腕っぷしが強く口達者で、周りからの信頼も厚い。クラブ改装の間、運転手の仕事を紹介されたトニーは、カーネギー・ホール上の高級マンションに面接に行く。雇い主は予想外にも天才黒人ピアニストのドクター・シャーリーだった。黒人に偏見を持つトニーは、ツアー中の世話もオファーされ“俺は召使いじゃない”と拒絶する。だが、黒人差別が最も激しい南部へのツアーを企てるシャーリーは、彼のトラブル解決の腕を見込み、希望条件をすべて飲んで雇うことに。出発の日、レコード会社からトニーに手渡されたのは、南部で黒人が利用できる施設を記した〈グリーンブック〉だった。

上品でインテリな黒人と、ガサツで無教養な白人の凸凹コンビが、各地で繰り広げる騒動に思わず噴き出したり、理不尽な差別に憤ったり。食べ物を噴き飛ばしてしゃべるトニーを、美男ヴィゴ・モーテンセンがだらしないビール腹へと肉体改造して体現。王のような気品漂うシャーリーに、『ムーンライト』でオスカーを受賞したマハーシャラ・アリ。憤りを押し殺し、尊厳を失わずにあろうとする姿、その繊細な表現力に脱帽！　

車中でのちぐはぐな会話にはじまり、シャーリーの奏でる旋律に聞き惚れ涙ぐむトニー、トニーの妻への無骨な手紙に素敵な言葉を足すシャーリーなど、信頼を築いていく様子に心が躍り、信念と勇気の尊さ、人同士の絆に胸が熱くなる。ちなみに幸せで満たされるこの物語、なんと実話！！
（TOHOシネマズ日比谷ほかにて公開中）
■グリーンブック 公式サイト

戦争好きな上官の無謀な指示により、アルベールは死にかけ、彼を助けようとした青年エドゥアールは顔に消えぬ重傷を負う。命からがら戦後パリに戻った2人は、すべてを奪った上官と国を相手に、壮大な復讐を仕掛けるが。名を捨て別人として生きるエドゥアールの、秘めた切ない思いに落涙！　
まるで魔術にかけられたように、魅惑の映像と予測不可能な展開に魅せられる。衝撃の結末まで一気見必至！
（TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中）
■天国でまた会おう 公式サイト