二階堂ふみさん&GACKTさんがまさかの男子高校生役 映画『翔んで埼玉』で華麗に熱演!
-
折田千鶴子
2019.02.21
原作は69万部を売り上げた未完の伝説的コミック!
既にテレビやネットのニュースなどでご存知の方も多いと思いますが、ものすごい豪華&これ以上考えられない絶妙なキャストが集結し、30年の時を経てセンセーションを起こした未完のコミック「翔んで埼玉」が実写映画化されました!!
「パタリロ」などで知られる鬼才・魔夜峰央氏が1982年に発表した“禁断の埼玉ディス”コミックは、86年に未完のまま単行本化され、何と15年に復刊。大反響を呼び、なんと69万部の大ヒットを飛ばしてしまった、まさに“伝説のコミック”なのです。
果たして映画は……正直、どんなコトになっているのだろう、一歩間違えると……なんて半信半疑で鑑賞したのですが、これがどうして、メッチャ面白い!! 素直に爆笑&クックと横腹がよじれるような可笑しさ満載です。いやぁ、ここまでとは、と感服させられました。
LEE読者の中にはギャグ作品やナンセンスコメディはあまり……という方もいらっしゃるかもしれませんが、これは見なきゃ損! さすがは『テルマエ・ロマエ』シリーズの武内英樹監督です。
そこで主演のお2人、壇ノ浦百美役の二階堂ふみさん、麻実麗役のGACKTさんに、現場裏話をはじめ興味津々のお話を語っていただきました。
未完の漫画だからこそ“翔べた”作品
<こんな映画>
埼玉県人が東京都民から激しい迫害を受け、通行手形がないと東京に入ることすら認められない――。そんな架空の日本を舞台に、エリート都民で都内の名門私立校の生徒会長をする壇ノ浦百美が、転校生の麻実麗と出会うことで、埼玉解放を目指す闘いに身を投じる――という物語。埼玉と千葉が敵対していたり、群馬が秘境の地となっていたり、あるあるな関東ディス(でも愛もある)満載で、思わず噴き出し必至です!!
――未完の漫画が、ラストに大きなカタルシスももたらす壮大な映画作品として完結されていて、本当に素晴らしかったです!!
二階堂「実写化にあたり、監督と魔夜先生がとても友好な関係を築いてらっしゃったと思います。現場にいらっしゃった魔夜先生に、映画で完結することに対する期待のような空気を感じました。また未完だからこその自由度も大きく、だからこそ見せられる世界観も織り込まれていたので、私自身も最初から期待が大きかったです」
GACKT「魔夜先生が物語そのものに余白を残しておいてくれた、とも言える。その隙がなければ、“スペクタクル・クリエーター”武内監督の、ぶっ飛んだ感性が入り込めなかっただろうから。魔夜先生が“自分が想像したとおりの結末だよ”とおっしゃった時は、“本当か?”と思ったけど(笑)、それくらい上手くケミストリーしたんじゃないかな」
二階堂さん初の男性役、そして2人とも高校生!!
――二階堂さんが演じられた壇ノ浦百美は、なんと男子高生ですね。
二階堂「男性の役は初めてで。圧倒的に完成されたビジュアルとキャラクター性がある役なので、説得力がなくなることは避けたい、ほんの少しの自尊心ですべて壊れてしまうことだけは避けたいと思いました。まずは、見た目から構築していった感じです。男の子なのであまりフワっとしていない方がいいとも思い、少し痩せておこうかな、と。逆にそれ以外、何をしていいのか分からなかったので。答えはもう原作の中に出ているので、そこにどう近づけていくか、ということだけでした」
――GACKTさんが演じられた麻実麗も高校生。最初は即答で断ったということですが。
GACKT「……高校生役か、と(笑)。そもそも、こんなムッキムキでバッキバキに出来上がった身体の高校生がいるわけはない(笑)。もしボクが原作に近づけるために線を細くしちゃったら、阿久津翔役の伊勢谷(友介)君や埼玉デューク役の京本(政樹)さんとのバランスが壊れていたんじゃないかな。これで良かったかもしれないな、とは思ってる」
――お互いの存在が力になったところ、影響され合ったことはありますか?
二階堂「キャラクターを変に小細工したり、作り込んだりして自分の中で緻密にやるよりは、現場でどう生きるか、どういう空気感でいるか、という説得力の方が大事だな、と勉強させていただきました。。現場でGACKTさんとご一緒して、気づかされることが本当に多かったです」
GACKT「衣装を纏っているときのふみちゃんの、すごく細やかな気配り――例えば履いているパンツの皺を毎回毎回、自分で一生懸命にキュッキュと直していて。衣装だけじゃなくて、本人の心の持ちようというか、心配りがすごいんだよ」
絶妙な笑いの作り方は!?
――それこそ“激しい埼玉ディス”に満ちているのに、気持ちよく爆笑できてしまう、その“笑い”が現場でどのように生まれていったのか、すごく興味をそそられます。
二階堂「そこは、すべて監督が仕掛けていました。役者が笑わせようとしたらイヤらしくなるので、下心なしでやる、というのがとても大事な現場でした。最初の1週間くらいで、お芝居の方向性などの土台を作っていった感じでしたが、その世界観が現場で完成されてくると俳優部にも余裕が出て来て遊びたくなってしまうので、ちょっと危険でした (笑)。でも、そこを遊ばせない感じが、ずっと(監督に)ありました」
GACKT「最初は、これは狙わないといけない作品なのかなって思ったけれど、武内監督がずっと言ってた、“狙わないでくれ”って。“こんな台詞だけれど、こんな感じの真面目なシーンです”と、シリアスな大作映画を例として挙げるから。そういうシーンを目指して、ボクらは大真面目にシリアスに演じた」
二階堂「だから現場では“本当に面白くなっているのかな?”と不安になる瞬間がたくさんありました。監督だけはゲラゲラ笑っているけれど、役者はみんな大真面目にやっていて」
GACKT「武内さんがゲラゲラ笑っている意味が分からないことも結構あった。でも“オッケー!”って言葉で信じるしか無いと」
二階堂「たまに肩甲骨を伸ばしていて見てなかったのに、“オッケー、よし面白い!”と言う時もあって(笑)。“俺は空気で分かるから”と。監督のそういうちょっとバブルな感じというか、ちまちましていない勢いのある空気感が気持ち良くて、安心して身を任せられる感覚でした」
ふみちゃんは「風と共に去りぬ」(笑)
――GACKTさんは“美学の塊”というイメージがあります。対して二階堂さんはこだわりの演技派というイメージを勝手に抱いているのですが、実際、ご一緒された感想を教えてください。
GACKT「外見からそう思われている方が多いと思うけれども、いたって普通だよ、ボクは。フツーだから。本当に」
二階堂「普通ではないですが(笑)、非常にまともな方です。元々ビジュアルは完璧ですし、周りが勝手に“何か持っていて欲しい”と思ってしまう。私も小さな頃から観て来て“GACKTさんってホントに生きている人間なのかな”って感じでしたが、あ、本当に生きてらっしゃったな、と(笑)」
GACKT「ひどすぎる……(笑)」
二階堂「もちろん、そういうイメージを裏切らない面もありますが、すごく優しくて人をちゃんと知ろうとして下さる方です。色んなことを知っていらっしゃるし、とてもスマート。人生の後輩として、どうしたらそんな説得力のある生き方ができるんだろうと思っていたので、色々お話して下さって嬉しかったです」
GACKT「ふみちゃんはホワッとしていそうで、強烈な芯がある。細やかな気配りがあるかと思うと、ドタドタ男っぽい性格のところもあるし。どういうバランスで生きているのか不思議で、しょっちゅうボクからふみちゃんに色んなことを聞いていた。それに対して忌憚なく答えてくれるんだけど、最後の一番大切な答えを言わずに消えていく。そこで消えるんかい~って。ボクのふみちゃんのイメージは、「風と共に去りぬ」」
2人にとって東京とは?
――劇中、“東京”は埼玉県人が憧れて止まない存在ですが、お2人は東京に対して、どんなことを感じますか。
二階堂「東京って選択できる街だな、と思います。会いたい人には会えるし、会いたくなければ会わない選択もできる。静かな場所に住みたければ、それも叶う。すべてが選択できる街だからこそ、自分の中に選択がないと飲まれてしまう街だとも思います。私は逆に東京に出て来て生きやすくなったので、東京が好きです」
GACKT「ボクが東京に出て来た頃は、東京のエネルギーの強さがヤバい、という印象だった。京都で音楽活動をしていた時は、別に東京に出なくても日本で一番になれるだろうと思っていたけれど、東京でプレイしてみたら、レベルの高低ではなく、スケール感が全く違っていて。当時は東京に日本のエネルギーが集約されていた。今はだいぶ流れが変わったけれど、世界的に見ても面白い街であることは間違いない」
――その東京のど真ん中、都庁での4車線を封鎖して撮ったという、クライマックスシーンはすごい迫力でした!
二階堂「完成した作品を見て、ハリウッド超大作みたいだな、と思いました」
GACKT「よくやったな、と(笑)。本来、日本もこうあるべきだと思うんだけど、ロケにも内容にも規制が多すぎる。勿体ない。アメリカのプロパガンダがあんなに上手く行くのもハリウッド映画の影響が大きいし、韓国経済が伸びたのも韓流の映像作品や音楽が世界に足を伸ばしたことが大きい。やっぱり文化にパワーがある時に国力が上がるし、文化の上に経済が成り立つと分かっている国は、文化に惜しみなく力を注ぐ。日本はやたら堅いものだけを文化だと思っている節があって、エンターテインメントと呼ばれるものに対する寛容さがない。日本の良さが世界に届きにくいこの状況は勿体ない」
おっしゃる通り! と映画製作陣はみんな膝を打っていると思います。その規制をどう切り開いたのか不思議なくらいの、怒涛のクライマックスまで大いにクスクス笑って楽しんでいただきたい本作。埼玉ディスと言いつつ、そこに多大なリスペクトが施されている上、互いの名産地や誇れるモノを言い合う埼玉vs千葉の闘いも、愛が感じられるからこそ大爆笑必至です!!
ぜひ劇場で、大スペクタクルな笑いを体験してください!!
この連載コラムの新着記事
-
サステナブルな「Öffen(オッフェン)」のシューズを3足ご褒美買いしました!/高橋夏果
2024.12.17
-
南米から2年ぶりに帰国後びっくりした3つのこと/世界中の人が旅したい「日本」のすごさって?
2024.12.08
-
無印良品の「蒸篭(せいろ)」が最高におすすめ!実際に作った料理から洗い方まで徹底解説
2024.12.04
-
【神戸】2泊3日の家族旅行へ行ってきました!ネイチャーライブ六甲、神戸須磨シーワールド…おすすめスポットをご紹介【2024年】
2024.11.17
-
【40代ママライターが試して実感】汗冷え・ムレ・におい…冬の汗悩みは、あったかインナー「ファイヤーアセドロン」で解消!
2024.11.08
折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。