LIFE

CULTURE NAVI「CINEMA」

ドキドキ&落涙必至のラブストーリー

2018.04.17

この記事をクリップする

ピュアで一途な思いは届くか!? 異色の遠隔ラブストーリー

『きみへの距離、1万キロ』

©Productions Item 7 -II Inc. 2017

賞レース絡みで意欲作が続いた初春、予期せず心にすうっと入ってきたのは、日本ではまだ無名に近いカナダの監督が撮った、懐かしさと最先端が融合した不思議で可愛らしいラブストーリー。とはいえそのキム・グエン、『魔女と呼ばれた少女』(’12年)で米アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、各国の映画賞を複数受賞した、実は気鋭の監督。本作もヴェネツィア国際映画祭で賞に輝いた。

主人公は、失恋したばかりの青年ゴードン。米・デトロイトで監視ロボットのオペレーターをする彼の目下の仕事は、地球の反対側、北アフリカの石油パイプラインを監視し、守ること。6本足のロボットを器用に遠隔操作しては、怪しげな人影や物音、温度を察知して駆けつけ、威嚇射撃して追い払う。そんなある日、カメラに映る悲しげな一人の女の子に目が吸い寄せられる。その日以降、浮かぬ表情の彼女の姿を探して観察するうち、彼女が望まぬ結婚をさせられそうなこと、恋人と命がけで国を脱出しようとしていることを知る。彼らの真剣さに胸を打たれたゴードンは、脱出に手を貸すべく、ロボットを通して彼女に接触を試みるのだが――。

アメリカの工業都市から1万㎞離れた砂漠で、古い因習に縛られ自由に生きることを許されない女の子に、キュルキュル音をさせて近づく6本足のロボット。巨大グモみたいなロボットに話しかけられギョッとするのもつかの間、どこかユニークで可愛く、瞬時通訳するそれを通して会話し、運命は大きく動き出す。過去と未来が遭遇するような技術や文化の落差に驚愕しつつ、でも同じ“今”を生きる若者らの強い思いに共感し、祈りを込めて見つめずにいられない。

彼女を救うには、なるほどその手があったかとひざを打ちつつ、古い因習側からの妨害にハラハラ手に汗握る。ゴードンの遠隔片思い、恋人との命がけの自由への脱出は、果たしてどう決着するのか。不思議な気分に陥りながら、ピュアで一途な思いの暴走と錯綜する運命にドキドキが止まらない!(新宿シネマカリテほかにて公開中)

切なさに胸がキュッと締めつけられる初恋映画

『君の名前で僕を呼んで』

©Frenesy, La Cinefacture

17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)が過ごすイタリアの避暑地に、父の助手として大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)が招かれる。言い寄る女の子たちと戯れながら、知的でたくましいオリヴァーに惹かれていくエリオ。2人は探り探り近づくが、夏の終わりが迫っていた――。
エリオの表情に胸が締めつけられ、性別うんぬんを超え、切なさに落涙必至!(4月27日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて公開)

取材・文/折田千鶴子

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる