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LIFE

映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

ナオト・インティライミ『旅歌ダイアリー2』を語る。「堰を切ったようにアイディアが溢れて来る!」  

  • 折田千鶴子

2017.11.21

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忙しい6年を駆け抜け、飽和状態になっていた

“ ドーム・コンサートチケット4万枚が1分で完売! ”という伝説を持つアーティスト、ナオト・インティライミさんの音楽ドキュメンタリー映画の第2弾『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2』が、今度は前編・後編の2部構成で、いよいよ前編が11月23日より公開されます!

自ら“旅人系シンガー”と名乗るように、ナオトさんの旅好きは広く知られていますが、人気絶頂の今、なぜまた長期の旅に出たのか、ご本人に直撃しました。

今回訪れたのは、アフリカ14か国、ルーマニア、ドイツ、スウェーデンほか全部で19か国半年にわたる旅に完全密着した本作の中で、ナオトさんはどんなことを思い、何を語り、どんな体験をされたのでしょう!?

 

8月15日 三重県生まれ、千葉県育ち。“インティライミ”は南米インカの言葉で“太陽の祭り”の意。デビュー前、世界一周42カ国を一人で渡り歩き、各地でライブを行う。帰国後、ソロ活動のほか、「Mr. Children」のツアーサポートメンバーとしてコーラス&ギターを担当。2010年にメジャーデビュー。12年に「Brave(ブレイブ)」で紅白歌合戦に初出場。13年には音楽ドキュメンタリー映画『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー』が公開される。映画『神様はバリにいる』(15)、ミュージカル『DNA-SHARAKU』(16)、ドラマ「コンノドリ2」(17)など、俳優としても活躍中。   撮影:梅村駿

――映画の冒頭でも口にされていましたが、忙しい日々が続いて、もうパンパン状態だったようですね。

「いや、音楽活動が出来ないわけでも、ネタがないわけでもないけれど、感性が詰まっている状態っていうのかな。自分が飽和状態になっているのを感じていました。今後もこのペースで活動を続けていくのは、長い目で見ると良くないな、と。そこで旅に出るという判断をしました」

――どのように撮影されていったのでしょうか? 何か決め事はありましたか?

僕と監督とカメラマンの3人で行きましたが、僕はひとりで旅をするときと何ら変わらない旅をするから、撮りたいときに好きなように撮ってOKという感じ。決め事は一切ありませんでした。撮らないで欲しいと言った瞬間など、それこそ一度もない。だから撮影時間が1,000時間になっちゃうんですよ。監督は自分で自分の首を絞めて(編集で2本の映画、約4時間弱にまとめる困難!)ましたね(笑)」

 

迷いなくアフリカに行こうと決めました

――まずアフリカに向かいましたが、今回の旅のメインにアフリカという地を選んだ理由は?

「以前に訪れたこともありましたが、アフリカはまとまった時間がないと行けない場所なので、このタイミングにしっかり廻りたいと、迷うことなく決めました。14ヵ国のチョイスは、音楽が何かしら面白い国、例えばジンバブエのムビラとか、セネガルは太鼓等々……をベースに選びました。本当はマリやナイジェリアにも行きたかったのですが、危険だということで、残念ながら行けませんでした」

――地図を見ると、日本人が名前も知らないような本当にたくさんの国がひしめきあっていますよね。

「そうなんです。しかも小国に至るまで、一国一国が、元々どの国の植民地として置かれていたかによっても、全く国の雰囲気が違います。東と西でも全く違いますし、本当に個性が豊か!」

怖いもの知らずで人懐っこい“太陽の男”ナオトさんが、地元民と触れ合い、いつの間にか音楽を一緒に奏でたり、歌ったり。その一つ一つに力強く、感嘆符付きの言葉で、色んな出会いに感動しながら旅は続きます。

カーボヴェルデ共和国のカーニバルなど、映像的にも音的にも見応えはたっぷりですよ!

 

アフリカでの音楽体験はモンスターと闘っている感じ

――いくつもの舞台で野外ライブが同時に行われている、そんな音楽祭に行ったシーンが印象的でした。興奮が伝わってきました。

タンザニア・ザンジバル島のSanti za busara(サンティ・ザ・ブサラ)という音楽フェスティバルです。アフリカ7大フェスティバルの一つで、アフリカ各国から有名なアーティストが200組くらい一堂に会し、4つの会場で演奏しまくるんです。このフェスティバルを見ただけで、もう帰ってもいい、と思えるほど色んな情報や音楽を体感できました」

――鳥肌が立つ、なんて表現では足りない?

「ずっとモンスターと闘っている感じです。ドガドガドガと音楽がやって来て、ガオ~っと襲われるような、ボスキャラとずっと闘わされているような感覚。受け止めきれないほどでした。圧倒的な音楽を体感しましたね」

 

――途中、倒れられましたよね。病院に運び込まれたシーンも驚きました!

「ボツワナの虫が飛び交う病室という、日本人からすると劣悪な医療環境なので、朦朧としながらすごく不安でした。知らずに口にした食べ物で、アレルギーと思うのですが、アナフィラキシーショックを起こして。倒れていたのは2、3日でしたが、元の状態に戻るのに一週間かかりました。無事で良かったです(笑)」

 

頭の中に音楽が溢れ出してくる状態

――今回、アフリカから、どんなものをもらったと実感していますか。

「パッと思い浮かぶのは3つ。ただただ歌いたいから歌う、ただただ叩きたいから叩く、という精神性。そのシンプルな音楽との向き合い方を目の当たりにし、すごく色んなことを思い出しました」

「2つ目は、奴隷の歴史を学んでいくにあたり、悲しい環境から沸き起こる音楽の強さを感じました。あの辛く悲しい歴史がなかったら、アメリカで色んな音楽のジャンルが起きていないし、自分の音楽もこうなっていない、と。音楽の起こりという意味での、重要な歴史やルーツを感じたのも大きかったです」

『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2』【前編】 2017年11月23日(木・祝)【後編】 2018年1月5日(金)
TOHOシネマズ 新宿ほか全国ロードショー
出演:ナオト・インティライミ 監督:加藤肇
主題歌「Sunday」含むコンセプトアルバム「旅歌ダイアリー2」2017.11.22Release!!
配給:日活 ©2017「ナオト・インティライミ冒険記2」製作委員会
公式サイト: www.naoto-tabiuta2.com

「3つ目は、アフリカの音楽そのもの。すごく巧妙なリズムとシンプルなリフレイン。直接的に、自分の音楽にも影響を受けました」

――それらの影響は、どのようにナオトさんの音楽に現れていくのでしょう?

「今年7月の復活ライブでは、開放的な気分は存分に放出できましたが、音楽としてはまだ形にはできませんでした。旅の影響が形として出てくるのは、本作のサントラから。映画公開の前日にリリースされるコンセプトアルバムは、なんと28曲入り。監督からは7,8曲のサントラを打診されましたが、作り始めたら……どれくらいアイディアが溢れていたか分かるでしょ?」

堰を切ったように溢れて来て、このコンセプトアルバムだけでは出し切れない。自分の生涯のリリース数でも足りないので、これから色んな人に楽曲提供やプロデュース業をしようと思っています。もう、僕の生涯だけじゃ捌き切れないよ~(笑)!!」

 



思いついたことをリアルタイムで形にする

とある村で、地元の子どもたちとサッカーに興じたナオトさんは、次に来るときにはサッカーボールをプレゼントすると約束します。村を去ってから、町で見つけて調達したナオトさんは、なんとその足で村に戻る、という印象深いシーンがあります。

そんな旅を通して得たナオトさんの、旅の極意と人生訓を語ってもらいました!

「サッカーボールは、僕も数年先の約束のつもりで言ったんだけど(笑)。でも、とりあえず思いついたことをリアルタイムで形にしていきたいですよ、人生

「ひたすら自分のペースで旅をしていくと、どんどん直感が冴えていく。みんな“こういうことがしたい”と思っても、結局、忙しさに負けてしまう。何かを形にする前に、ほかのことに塗り替えられていってしまうと、感性がどんどん鈍っていってしまう。だから僕は、旅のスケジュールを決めないんです」

「いや、スケジュールなんか、時にひっくり返せばいいんですよ! 自分がしたいことをする、言いたいことを言っていくと、面白いように色んな奇跡がどんどん起きていきますから

 

 

自分に何が向いているのか、探し続ける旅は終わらない

――ところでナオトさんは、どんな子供だったのですか?

圧倒的なガキ大将。常にたくさんの人がついて来てくれるけど、常に反ナオト派がいるような状況でした。それくらいお山の大将というか、野猿でしたね(笑)。みんな、森、行くぞ~、俺についてこい、というタイプでした」

――サッカーや音楽との出会いも、幼少時?

「サッカーは4歳くらいから、3つ上の兄貴にくっついて行って、近所の小6のお兄ちゃんたちとプレイしていましたね。ブラジルの子供かってくらい、毎日ボールを蹴ってました。ギターで曲を作り始めたのは中2ですが、小さな頃から歌が大好きで、歌いすぎて毎日声が枯れていました(笑)。音楽の授業、特にリコーダーとか楽器が大好きでした。今も楽器が大好きで、旅先で色んな楽器を買ってしまいます。パーカッション系だけで200~300くらい家にありますね」

――サッカー、音楽……夢はいくつも追い掛けていいですよね!?

「もし明日トランポリンをやって、トレーナーから“すごく向いている”と言われたら、明日から一度はオリンピックを目指してみる(笑)。それくらい、自分に何が眠っているかは分からないし、自分に向いているものを自分で決めちゃいけないな、と。だから今も歌だけと決めつけず、興味があるものはやってみたいんです。お芝居もその一つ。旅もサッカーも同じ。自分に何が向いているのかを探し続ける旅は、死ぬまで終わらないと思いますね」

ナオトさんの行動力に驚かされる『旅歌ダイアリー2』で、ぜひパワーをもらってください!

 

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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