【弁護士に聞く離婚とお金】慰謝料、養育費、費用や準備は?知識がないと損をする!
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LEE編集部
2020.09.12 更新日:2024.10.31
3組に1組は離婚を選択する昨今。決して人ごとではなく「私も離婚がしたい」と考えたことがある人も多いのでは?
もし本当に離婚をしなかったとしても、いざというときのために、正確な知識や情報を持つことは大切。
離婚で最も問題となる「お金」について、一緒に学びましょう!
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号の再掲載です。アンケート実施:2020年3月11~18日まで。LEEweb会員455人が回答
離婚を多く手がける弁護士がレクチャー
離婚にまつわるお金の話
養育費や慰謝料など言葉は聞いたことがあっても、意外にその本質はわからないもの。離婚とお金にまつわるさまざまな疑問を、弁護士 太田啓子さんに教えてもらいました。
弁護士 太田啓子さん
弁護士。セクシャルハラスメント案件、相続案件のほか、財産分与、養育費、親権等が問題になる離婚の案件を多く取り扱う。共著に『憲法カフェへようこそ』(かもがわ出版)『これでわかった! 超訳 特定秘密保護法』(岩波書店)。
読者455人にアンケート
夫と離婚をしたいと思ったことはありますか?
離婚したいと思ったことがある人は約6割!
浮気や暴力などの明確な理由だけでなく「出産後、夫の育児への関心の低さに失望」「言葉のモラハラがひどい」「家計や教育のことなど大事なことをきちんと話し合えない」なども多いよう。
今後離婚をするとしたら、不安なことは何ですか?
お金の問題がダントツ!
夫の収入のほうが多く、出産後は育児と両立できる範囲で仕事をしている人が大半。また、家計の管理も夫に任せている人が意外に多く、離婚してやっていけるかが不安要素に。
「離婚の経済学」を知るための5つのキーワード
離婚のお金を考える際に、必ず知っておきたい基礎知識。
5つのキーワードについて、弁護士 太田啓子さんがわかりやすく解説します。
離婚のお金キーワード 1
離婚費用
調停で家裁を利用するのみなら数千円弁護士費用は個別に相談を
自分で調停をする費用は家裁利用料のみで数千円。弁護士を依頼する場合は事務所ごとに異なるが、着手金約20万~40万、離婚報酬金約30万~60万、財産分与報酬別途など100万円以上かかることも。
●調停離婚
家裁での話し合いで成立する離婚。弁護士を依頼する人も。依頼しなければ数千円程度。
●裁判離婚
家裁での裁判で成立する離婚。弁護士費用は個別に相談を。
離婚のお金キーワード 2
婚姻費用
別居中でも婚姻関係にあれば夫に生活費を請求できる
食費、医療費、子どもにかかるお金など、結婚生活で必要となる生活費のこと。婚姻関係が継続している間は、婚姻費用を夫婦で分担する義務があり、離婚後の養育費と異なり配偶者の生活費も請求できます。
金額は、婚姻費用算定表があり、夫と妻のそれぞれの収入をグラフで突き合わせて決定。2019年12月に15年ぶりに金額の見直しが。
離婚のお金キーワード 3
財産分与
貯金は別居日などを基準日にしてその日までの金額で分け合う
夫婦でともに築いた財産を分け合うこと。名義にかかわらず、「定期預金」「積立型の保険」「会社の財形貯蓄」「株式」「家」「車」など、すべての財産が対象に。
貯金は日々増減するので、別居日などに基準日を定め、その日までの金額で分与をします。夫の財形貯蓄など、妻が知らない財産もあるので普段から確認を。
離婚のお金キーワード 4
養育費
子どもの年齢でも条件が変わる。支払いが滞れば強制執行も
子どもを育て、教育するために必要な費用。養育費の取り決めは養育費算定表に応じ、夫と妻の収入、子どもの人数で決定。
また、子どもが14歳以下と15歳以上で表が分かれています。もし公正証書、調停証書、判決などの書類があるのに支払われない場合は、相手の財産から強制的に取ることができる強制執行も可能です。
離婚のお金キーワード 5
慰謝料
不倫や暴力などがある場合のみ事例によるが200万〜300万円ほど
離婚したら常に請求できるわけではなく、不倫、暴力など相手に違法性のある行為があった場合に請求します。
事案により金額は異なるものの、通常は200万〜300万円ほど。金額の決定に相手の収入は関係なく、また、期待するほど高額にならないことも多いので、慰謝料で離婚後の生活を成り立たせることはできません。
不倫の場合、不倫相手への請求も可能です。
日本は協議離婚が9割。知識がなく損をしている人も
日本では、離婚時に女性側がお金の取り決めについて、納得していないケースも多いと言います。
「日本は、夫婦が離婚を了解して役所に届けを出すだけで離婚できますが、これは世界的には珍しいです。
この裁判所がかかわらない“協議離婚”が全離婚の約9割。一定期間の別居なども条件にならず、養育費などを決めなくても離婚できるという意味では“離婚しやすい”制度ですが、決めたほうがいいことを決めないままでも離婚できてしまうという難点も。
養育費など本当は決めたいことがあるのに夫に強く言えず、不満な離婚に応じる女性がかなりいる背景はこれです。
財産分与も養育費も受け取る権利があるのに、すごくもったいないことをしている可能性も。
そもそも財産がないからと諦める人もいますが、100万円でも家庭の貯金があれば、名義にかかわらず50万円はもらう権利があるんです。
離婚についての話し合いで納得ができないなら、諦めず家庭裁判所利用の検討を。調停では養育費や財産分与などの話し合いができます。
相手が調停に応じない場合でも、裁判を起こせば最後は判決で養育費等離婚条件についての判断もされます。
また、例えば、夫が不倫をしていたなど“有責配偶者”である場合、夫からの離婚請求は判決では原則認められませんので、理不尽な離婚要求に応じる必要はありません。
相手に収入があるなら家庭裁判所で手続きをとれば、養育費は必ず決められます。法律上の権利があるのに初めから諦めてしまっている方も多いのですが、我慢せず家庭裁判所を利用する選択肢を考えてほしいです」(弁護士 太田啓子さん)
また“婚姻費用”をきちんと受け取ることも重要。
「考え始めてすぐに離婚が合意することもありますが、一般的には別居期間を経て、離婚の条件を話し合っていくことがほとんど。別居していても婚姻関係があれば、子どものほか配偶者を扶養する義務があるので、別居中の生活費を夫に請求できます。
多くの人は離婚後のことは気にするものの、離婚までの生活は見落としがち。
もし相手に婚姻費用の支払いを拒否された、そもそも離婚に応じないなどで調停、裁判を起こす場合は、別居中の婚姻費用の支払い請求と離婚請求の2本を同時に起こすことは定番です。
こういった情報も得られるので、離婚を考えたら一度は弁護士の法律相談に行くことをおすすめします。
法律相談の費用は通常1時間で1万円ほど。その後に依頼をしなくても問題ないですし、法律相談でのアドバイスをもとに自分で協議離婚、調停離婚をする方もいます。
自治体でも無料の法律相談や離婚にまつわるセミナーなどを行うところも。何も知らないと損をしてしまうかもしれないので、ぜひ正しい情報を得てほしいですね」(弁護士 太田啓子さん)
イラストレーション/朝倉千夏 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年5月7日発売LEE6・7月合併号『知っておいて損はなし!離婚の経済学』の再掲載です。
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