美術館というと「静かにアートを鑑賞する場所」というイメージが一般的ですが、この夏、東京都現代美術館で開催されている「あそびのじかん」は違います。
巨大な作品に迷い込んだり、ゲームのように参加できる作品があったりと、様々な体験ができる「遊び」がテーマの展覧会は、夏休みのおでかけにもぴったり!7歳4歳の兄妹と訪れた体験談を通し、子どもから大人まで思い切り楽しむことができる「あそびのじかん」の魅力をお伝えします。
見て、触れて、撮影して楽しむ!まるでテーマパークのような、体験型の展覧会
我が子と一緒に展覧会を楽しむ中で感じた一番の魅力は、会場の至る所に子どもの興味を引く様々な仕掛けがあり、作品ごとに全く異なる体験ができるということでした。
遊び心あふれる6組のアーティストの皆さんが、「遊び」をテーマに創りだした作品。
その多くは触って楽しむことができ、中には参加者自らが何かを作ることのできる展示もあります。
いつもは静かな美術館ですが、この展覧会ではおしゃべりもOK。作品を通して遊びながら家族や友人と会話し、そして自分自身と対話することも鑑賞のポイントとして掲げられています。
また個人で楽しむ目的であれば写真撮影も可能で、SNSなどへの投稿も自由とのこと。思わず写真を撮りたくなるスポットが数多くあるからこそ盛り上がりを見せており、美術館を出たあとまで楽しむことができるスタイルも、この時代ならではの形だと感じました。
実際に子どもたちは、目の前に作品が現れるたびに思わず走り寄り、夢中で触って楽しんでいました!
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器に入ったたくさんのボタンを始め、広々とした空間に日常で使う様々なものが置かれている「笑う祭壇」は、台座に向かってボタンを投げて載せるという参加型の作品。
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様々なメンバーが参加するオンライングループで、SNSのグループチャットのやりとりを元に作品づくりを行うハンバーグ隊による、言葉をテーマにした斬新な作品。館内放送を利用した作品など、こちらの展示室以外にも作品が隠れているそうです。
作家さんと関わることもできる、贅沢な時間
今回の展覧会で子どもたちが一番長く時間を過ごしていたのが、タノタイガさんの作品でした。
壁一面にタノタイガさんの顔をかたどったお面がずらりと並ぶ展示室内。中央には布や毛糸、ハサミやペンなどが用意され、参加者はそれらを使いお面を好きなようにデコレーションすることができます。(会場内混雑ため現在は整理券制に。詳しくはこちら)
工作道具が気になって仕方ない子どもたちは、その周りをうろうろ…すると、タノタイガさんが話しかけにいらしてくださいました。そしてなんとご本人に向かって「同じのがいっぱいで気持ち悪いね」と言い放った4歳娘!
「そうだよね~気持ち悪いよね!これ全部、僕の顔なんだけど、わかる?また来てくれたら、お面にヒゲをつけたり、お化粧したりできるよ。また来てくれる?」
デコレーションに使う布などを見せてくれながら優しく子どもたちに話しかけてくださり、娘は一瞬で懐いて展示室から離れなくなってしまいました。「僕、お子さんと遊んでいるので、取材されてきてください!」とまでおっしゃってくださり、温かな言葉に嬉しいやら恐縮するやらでしたが、子ども達のおかげでご本人から作品の楽しみ方について色々と伺うことができ、贅沢な時間を過ごさせていただきました。
「会期中もこんな風にここで、子ども達と一緒にたくさんの時間を過ごすと思います。
子どもたちって、ハサミとか見るだけでテンション上がりますよね(笑)でも実際にお面に飾りつけをする段になると、お母さんの方が夢中になることも多くて、まつ毛をバチバチにしてくれたり、リップをきれいにつけてくれたり…最後は子どもたちの方が飽きて『もう行こうよ~』なんて言っている光景もよく見かけます。」
子どもたちは、目の前で話しかけてくれる方が素晴らしい作家さんだということが、良い意味でわかっていません。緊張も遠慮もせず、隣で私が恐縮するくらい積極的に話しかけ、「これは何?」などと次々に質問をします。
それらを温かく受け止めて同じ目線で返事をしてくださり、作品についても子どもがわかる言葉できちんと説明してくださる姿勢に深く感動し、その一言ひとことが大変心に残りました。
子どもたちが壁に登ってもハサミを触っても、つい「危ない!」「壊さないでね」など制止してばかりの私。だからこそアーティストの皆さんが本当に“作品に触れて楽しんで欲しい”と考えていらっしゃることがとても印象に残り、そこからはあまり口を出しすぎず、子どもたちの自由に任せるように意識しました。
美術館という非日常の空間だからこそ、大人も「遊び」に没頭できる
「遊んでいないで〇〇しなさい!」と、「勉強」や「お手伝い」にジャマされがちな遊びの時間。しかし日常のルールや常識が通用しない自由な「遊び」は、新しい価値やアイディアが生まれるきっかけになることもあります。
展覧会を通じて、そんなメッセージ投げかけてくれている「あそびのじかん」。
私の場合、何か好きなことに没頭する機会は年齢と共に減ってしまっていると感じますが、美術館という日常とは違う場所に足を運び、普段触れる機会のないものに触れながら作品を体験するからこそ、いつもは後回しにしがちな「遊び」に集中することができました。
また、タノタイガさん始めアーティストの方々との触れ合いをきっかけに改めて感じたのが、子どもたちが持つ「楽しいこと」を見つけるアンテナ感度の高さです。気になるものを探して会場内を動き回り、頭と心と身体全てを使って作品を思い切り楽しむ子どもたちの様子を見ているだけで、「何かに夢中になる」という感覚が呼び起こされるようでした。
子連れで楽しみやすい工夫や配慮も
我が家の子どもたちはじっとしていられないタイプで子連れおでかけには苦労したことも多かったため、子どもたちがストレスなく楽しめるように様々な工夫がされていたことも心に残りました。
一休みやリフレッシュができるよう休憩スペースが用意されていたり、おむつ替えや授乳ができるよう再入場可能だったりと、子連れでも無理なくゆっくり鑑賞できるだけでなく、各展示の入り口には、作品の解説の他に「かならずよんでね」というパネルが設置され、子どもでもわかるように作品の楽しみ方が書かれていました。
子どもも大人も思わず夢中になる楽しい作品が溢れており、我が子たちは帰ってからも「楽しかった~!」と何度も展覧会の話をしていましたが、展示そのもの以外のそういった配慮のおかげもあると感じています。また小学生以下は無料だということも、やはり嬉しいポイント。子どもたちやその親への想いが様々な部分から伝わってきて、温かな気持ちになりました。
自分自身の好奇心や遊び心が刺激されることは、美術館を出た後もそれぞれの日常を豊かにしてくれると実感した「あそびのじかん」。会期中も、作家さんによるパフォーマンスや朗読、「オトナのための遊び講座」など様々な関連プログラムが開催されています。アーティストの皆さんと関われることは素晴らしい機会だと感じたので、イベントなどに併せて足を運ぶこともオススメです!
大人も子どもも自分たちの興味の赴くまま、ぜひ親子一緒に「あそびのじかん」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
あそびのじかん | 展覧会 | 東京都現代美術館
(会期:2019年7月20日(土)- 10月20日(日))
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。