先輩ママインタビュー/コラムニスト河崎環さん「悩んであがいた、子育て暗黒時代。一番めんどくさいのはいつも自分でした」
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LEE編集部
2017.07.22
生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて母になった日。
永遠に続くように感じた子育ての毎日。
そんな日々を歩いてきた先輩ママたちが振り返ります。
今だから言えること、今だから見えてきたこと。アンケートで募った、読者のお悩みにも答えていただきました。
子育て渦中のママにも、いつかこんな日がきっとくる!あなたの心に響いた部分を、ぜひ、子育ての参考にしてください。
撮影/木下 優(ロッセット) ヘア&メイク/諏訪部留美 取材・原文/石川敦子
この記事は2017年5月7日発売LEE6月号の再掲載です。
Interview 04 コラムニスト 河崎 環さん
PROFILE
かわさき・たまき●フリーライター、コラムニスト。
海外遊学、予備校・学習塾での指導経験を経て、2000年より「All About」で子育ての記事を執筆。
その後、さまざまなメディアで活動を広げる。テレビ・ラジオへの出演ほか、政府広報誌や行政白書の作成にも参加。
ライフ&ワークヒストリー
- 1973年 京都府に生まれ、神奈川県で育つ
- 22歳 大学在学中に妊娠、結婚、第1子の女の子を出産
- 23歳 大学を卒業し、専業主婦に
- 27歳 この頃、ライターとして執筆活動をスタート
- 28歳 有名塾の講師に
- 31歳 講師を退職。第2子の男の子を出産
- 35歳 夫の海外赴任に伴い、スイスへ
- 37歳 夫の赴任に伴い、イギリスへ
- 39歳 日本に帰国
- 現在 初の著書を出版
- 娘21歳 息子12歳
自分と社会が何万光年も離れているような孤独感
名門女子進学校の桜蔭学園から慶應義塾大学へ。研究者の道に進もうか、アメリカでも学んでみたい。そんな前途を思い描いていた22歳の河崎さんに「妊娠」という転機が訪れます。大学4年の5月に結婚、7月に出産。義父母のサポートで子育てをしながら通学し、夫は翌年3月に卒業、就職。河崎さんも3カ月遅れて6月に卒業、専業主婦に。そこからドロドロの葛藤が始まりました。
「肩書が何もない自分になったのは初めてでした。それまでは学内に広がるLANの中で、世界中と自分がつながっている感覚があった。学生というステータスで子供を産むことにも私は抵抗がなかったし、子育てしながらの通学も、けっこう楽しんでいたんです。
ところが卒業したとたん、自分が何者かわからなくなってしまった。本当に“無”なんです。夫はりっぱな社会人。早朝に出勤して、帰宅は深夜。家には娘と私しかいない。外とつながる窓は、リビングの窓しかない。朝起きて、おっぱいあげて、窓を開けると公園が見える。でもそこにいるお母さんたちはひと世代上の人ばかりで、入っていけませんでした。
友達もみんな入社1年目。メールすると『すごくつらくて、毎日エンヤを聞きながら満員電車に乗ってるの』なんて言うけど、私からしたらうらやましくて
しょうがない。自分と友達が、自分と社会が、何万光年も離れているような孤独を感じました。みじめでした。暗黒の時代でしたね」
このままじゃいけない。半年ほど過ぎた頃、河崎さんはCPA(米国公認会計士)を受けようと、虎ノ門アカウンティングスクールに入学します。子供を預ける場所も、まだまだ少ない時代でした。
「義父母の家に近い駒場のプリスクールに娘を入れて、週3回、神奈川県の自宅から娘を車に乗せて、東京都目黒区の駒場で預け、夫の実家に車を置いて、港区虎ノ門に通う。そんな生活を1年間続けました。その間に2回、シカゴまで受験に行ったのですが、結局、手が届かなかったんです。すごく悔しかった。子供を育てながら集中して勉強することが私にはできなかった。あぁ私はもうアカデミックな世界は諦めなくてはダメだ、子供が生まれた私にはもうその芽はないんだ、とさらにコンプレックスを深く掘り込んでしまったんです」
挫折感に打ちひしがれた河崎さん、ここで「娘の教育」にスイッチオン。自身も通ったお受験幼稚園に、娘を入園させます。
「そこから、いきなりコマダム化。娘にワンピースを着せて、エルメスを片腕にかけて『私、卒園生なんです』と、ひと回り上のママたちの中にガシガシ入っていきました。自分を認めてほしかった。我ながら思い込みが強いというか、難儀なやつですね(笑)。タイムマシンがあったらあの頃に戻って、自分の頭をスリッパでシバいてやりたい。『もっとほかにいろいろ方法はあっただろう!』と(笑)。しかも私は年上のお姉さんたちに甘えてかわいがってもらう、という妹マインドが全然なかった。あるママにすごく嫌われて、またもや大きな挫折感を味わいました」
このままでは、また自分がダメになる。河崎さんは、今度は塾の講師として働き始めます。
「週2~3日、夜の仕事でした。幼稚園の延長保育の後はベビーシッターさんにすべて預けて、自分は夜10時に帰宅。これを3~4年続けました。これまた『なぜデイタイムの仕事にしない!』と、あの頃の自分に問いたい(笑)。そうまでしてなぜ働くの?という世間のプレッシャーも、新たな心の苦難になりました。結局、私はいつも自分に悩んでた。一番めんどくさいやつは自分でした」
息子が生まれて、初めて自由になった
一方、友達に声をかけられて始めたライターの仕事。二足のわらじで続けていましたが、その活動が軌道に乗ってきた頃、第2子を授かり、塾講師は退職します。
「それまで子育ては大変だなんて思ってたけど、第2子にして初めて本当の大変さを思い知りました。息子は自分にそっくりの、扱いにくい性格。どこに行っても自分中心で、自分の思いを押し通す。できることとできないことの落差も激しい。
娘のほうは、どんな状況に置かれても淡々と受け入れて、周りにも愛される子なんです。こんなにちっちゃいのに、どれだけ人格者なんだ、どれだけ私を助けてきてくれたんだ、と。自分のことで頭がいっぱいで、家族を振り回してきた私が、ようやく娘に感謝しました(笑)。
同時に、息子が生まれて初めて、私は自由になったんです。考え方が楽になった。息子を見てると、恵まれてるなコイツ、私が男だったらこの子になりたい、と思う。その息子は、遺伝子として半分、私。自分が男に生まれ変わったような、息子を育てながら自分が生き直しているような気持ちになるんです。意識したことはなかったけど、私には“男になりたかった”という思いがあったのかもしれない、と気がつきました」
どんなに今がつらくてもいつかすべて帳尻が合う
その後、夫の赴任で海外へ。子供たちはそれぞれ、2つの文化の間での葛藤を経験することになります。3歳で海外に渡った息子さんは、現在、小学6年生。帰国した今も父親とペラペラ英語でしゃべっています。その姿はカッコいいけど、漢字を初めとして、日本の学校での苦労は避けられません。
一方、10代で海外に渡った娘さんも、言葉やコミュニケーションの壁を経験。そんな体験を糧かてに、これから歩む道を模索しています。今年、成人式を迎えました。
「20歳の誕生日に、娘の生まれ年のシャンパンをあけました。娘はひと口しか飲めず、親だけ泣きながら飲みましたけど(笑)。写真館で撮った振袖の写真を眺めていると、感無量。今、子育ての渦中にいる方に『こういう日がくるんだよ。こんなふうに大きくなるんだよ』と言ってあげたい。今、ぐっとんぐっとんになってても、20歳が過ぎたらすべての帳尻が合うから安心して、と」
今、河崎さんの仕事は、教育や女性の生き方など、社会学的な分野で広がっています。紆余曲折を経て「もともとやりたかった、望んでいた形に戻ってきた」と感じているそう。昨年、初の著書も出版。担当編集者は中高時代、一緒に演劇部で活動した先輩です。
「再会したのは、娘が大学に合格して一段落、ずいぶん楽になったときでした。一方、先輩は子供はなく、仕事を突き詰めてきた人。あの頃、同じ学び舎にいた仲間が、いろんな違う道を通って、今、同じテーブルについている。おもしろいなぁ、と感じた瞬間でした。
女って回遊する動物。専業主婦になったり、ワーママになったり、結婚しない人もいたり、いろんな人生があるけど、また一緒にごはんを食べられたりするんですよね。みんな悩んで『もしあのとき、結婚してたら』『もしあのとき子供を産まなかったら』と、歩まなかった『IF』の道を考えることもある。
でも、その人たちの人生、全部肯定されるべきじゃないですか?歩んできた道は違っても、すべての女子に、私は愛しか感じない。みんな頑張ってる。
私が書く言葉はずっと、暗黒時代の自分が聞きたかった言葉なんです。もしもあのとき、この言葉を誰かが言ってくれたら、あそこまで落ち込まなかったかもしれない。あそこまで悩まなくてよかったのかもしれない。そんな言葉を、あの頃の自分に言い聞かせるように書き続けているんだと思います」
本音で読者のお悩みQ&A
Under 8
まだ「人」として形づくられていない天使期。親のしつけが勝負の分かれ目?
Q 「現代社会はスマホの普及で、どんな情報も閲覧でき、子供部屋にこもってしまうと何を見ているのかわかりません。スマホはリビングだけというルールをつくりましたが、LINEやSNSに規制をかけるのも難しいです」(spamaniaさん・43歳・岩手県・自営業)
Q 「ネット社会にどう対応させていけばいいか知りたい」(ぴちちさん・37歳・福岡県・企画開発)
A ITのリテラシーに関してはすごく気をつけています。何が危険か必ず最初に教えて、全部一緒にブロックをかけます。ペアレンタルコントロールみたいな設定も一緒に見ながら、子供も納得のうえで「じゃあこれはオンにするよ、これはオフにするよ。これは月曜日の何時から何時までしかオンにできないようにするね」と。
人のパスワードは絶対に見ない、ということも教えているので、私がパスワードをかける間は「向こう向いてなさい」。「お母さん、こういうゲームをインストールしたいんだけど、年齢制限にひっかかるんだよね」とか言ってきたときは「どういう内容かプレゼンしてごらん」と内容を聞いて、「R–15はちょっと高いな、たぶんエロが入ってるね、もうちょっと待とう」というふうに話しています。
Q 「主人の転勤についていくために仕事を辞め、現在はパートとして働いてます。パート先で同じ大学出身で同い年の女性が正社員として責任のある仕事を任されているのを見ると、自分で決めたことですが心のどこかでうらやましく思います。鬱屈した思いの乗り越え方を教えてほしい」(たむはるさん・34歳・京都府・パート)
A 正社員になりましょう。その道を探してみましょう。 鬱屈があるのは、自分の中にやりたいことの芽がふいている証拠。やってみて、うまくいったらおめでとう! どこかでつまずいて何か取りこぼしたら、そこで自分のキャパを知ることもできます。そのときは、どれか諦めて荷物をおろせばいい。具体的な一歩を踏めば、いつか納得できると思います。
Q 「最近ネットで『ママ友いらない』最強説(?)がはびこっている影響なのか、ほかのママさんたちのそっけなさが気になります。みんなビクビクしながら付き合っている雰囲気で、極端な世の中だなぁと思います。〝ママ友付き合い離れ〟、どう思いますか?」(青い羽根さん・41歳・神奈川県・主婦)
A 青い羽根さんはきっと、友達が欲しいんですね。話を聞いてもらったり、悩みを相談できる友人はやっぱり必要ですよね。そういう人を見つけてください。ママ友でもいいし、ママ友じゃなくてもいいと思います。
Under 12
自我がぐんぐん育ち始める小学校高学年。きょうだい関係にも手こずる時期
Q 「こちらは同じようにしているつもりなのですが、子供は『誰々ばっかりずるい!』などほかのきょうだいと比べては不満があるようです。皆さんはどのようにされていますか?」(みきさん・36歳・茨城県・パート)
A 娘に「女だから」「女なのに」「女らしくない」とかは絶対言わないようにしました。彼女に、女であることを足かせに思ってほしくなかったんです。個人としての魅力と、性別としての魅力は、ちょっと分けて考えるといいんじゃないかと思っています。息子にも「男らしさ」みたいなことは言いません。
本誌未公開Q&A
Q 「仕事をしてるので子供に米をといでみせたり、炊くことを教えてますが、なかなか難しいものでしょうか? 少しでも手伝ってもらえると助かるなあと思っています」(すぎちやんさん・大阪府・40歳・サービス業・息子10歳、娘8歳&2才8ヶ月)
A 私は昔から料理するとき、子供を呼んで「とりあえず隣で見ておくだけでいいから」と料理する姿を見せながら、私の話し相手にしています。そして「ほらできたろう、今度自分でもやってみたまえ」と次の機会に再生させます。お米とぐのだって楽しいじゃないですか、粘土遊びみたいで。「ざらざらっとして気持ちいいんだよね」とか言いながらやってると「俺にもやらせろ」と子供のほうから手を出したがります。2~3歳から自然にしていました。
Under 18
やきもきの思春期を経て、自立に向けて子育てのラストスパート!
Q 「進路の選択について、親が率先して考え決めてよいのか、子供の考えを最大限に尊重するべきか、皆さんの考えを教えてほしいです」(はまなすさん・40歳・東京都・主婦)
Q 「子供に将来の目的を持ってもらいたいのですが、進学のアドバイスや、なぜ大学に行くのかなどを説明できません」(えつこさん・48歳・山口県・アルバイト)
A うちは中学受験と大学受験は必ずやるというカルチャーなので、やらないという選択肢はない、と初めに言ってあります。 まずそこに疑いは持たんでおこう、と(笑)。「12歳と18歳、この2 つを押さえて集中的にぎゅっと勉強しておくと、ほかのときはめっちゃ遊べるよ。そこそこの学校に受かれば、もうみんな手放しだよ、ずっとゲームやってても研究だと思ってくれるよ」と説明しています(笑)。
Q 「成長するにつれて娘の恋愛関係が難しい」(ちゃまさん・46歳・石川県・主婦)
Q 「子供の交友関係や恋愛関係など、どのくらい親がかかわっていいのでしょうか」(kuro1818さん・40歳・東京都・主婦)
A 娘と一緒に下着屋さんに行って、新作とか出てると 「これどう? この花柄どう?」って上下セットで買い与えてるんですけど、全然使ってる痕跡がないし、すごい嫌な顔をされます。差し出がましいことをして申し訳ございません……。
本誌未公開Q&A
Q 「海外赴任中に、海外の子育てと日本の子育ての大きな違いなど感じましたか?」(furaha mamaさん・33歳・福岡県・主婦・息子6歳&1歳)
A 家族社会学で「親ペナルティ」という言葉があります。親であることがペナルティとなって、その人の幸福度を下げること。日本は親ペナルティが高い文化ですし、実はアメリカも高い。親が自由を得るためにはかなりの経済力が必要です。日本は経済力も必要だし、社会的な習慣という問題もある。「母親が夜お酒なんか飲んでちゃだめ」というような世間の目ですね。
一方、ヨーロッパは親ペナルティが非常に低い。公的な支援も充実していますし、社会に子供がいることが当たり前と見なされています。トラムにも大きなベビーカーを乗せるスペースがあるし、そういう部分ではとても子育てしやすい環境です。
ただ、海外は子供の安全が確保されていません。たとえばロンドンでは11歳になるまで子供をひとりで歩かせてはいけないので、仕事を持っている親が送り迎えをアレンジするのは本当にたいへんです。実際、子供の事件や事故も多い。その点、日本では小学生だけで集団登校するし、ひとりで電車に乗っている小学生もいる。ときには痛ましい事件もありますが、日本のセキュリティはかなり高いと感じます。
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おしゃれも暮らしも自分らしく!
1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
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