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LIFE

今だから振り返られる私の子育て

先輩ママインタビュー/内田春菊さん がん乗り越え「もう『子育て』じゃなくなっても、子供を助け続けると思う」

  • LEE編集部

2017.07.09

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生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて母になった日。
永遠に続くように感じた子育ての毎日。
そんな日々を歩いてきた先輩ママたちが振り返ります。

今だから言えること、今だから見えてきたこと。アンケートで募った、読者のお悩みにも答えていただきました。
子育て渦中のママにも、いつかこんな日がきっとくる!あなたの心に響いた部分を、ぜひ、子育ての参考にしてください。

撮影/木下 優(ロッセット) ヘア&メイク/諏訪部留美 取材・原文/石川敦子
この記事は2017年5月7日発売LEE6月号の再掲載です。


Interview 02 漫画家 内田春菊さん

PROFILE
うちだ・しゅんぎく●1984年、漫画家としてデビュー。歌手、女優としても活動。
’93年、義父からの性的虐待など自らの体験をもとにした小説『ファザーファッカー』を発表。
ベストセラーとなり、映画化もされる。近著に『私に依存するのはやめてください。』『おやこレシピ』ほか。
公式サイトはhttp://shungicu.com

ライフ&ワークヒストリー

  • 1959年 長崎県に生まれる
  • 15歳 家出し、高校退学。さまざまな仕事をして自活
  • 20歳 結婚するが、ほどなく離婚
  • 25歳 漫画家としてデビュー
  • 33歳 第1子の男の子を出産
  • 35歳 同居していた男性と入籍
  • 37歳 第2子の女の子を出産
  • 40歳 第3子の女の子を出産
  • 41歳 離婚し、同居していた男性と入籍
  • 42歳 第4子の男の子を出産
  • 47歳 離婚し、その後6年間は事実婚状態
  • 現在 『私たちは繁殖している』刊行継続中
  • 息子①24歳 娘①20歳
  • 娘②17歳 息子②15歳

育児書はまったく読まず、ボディコンで授乳する母

内田さんの『私たちは繁殖している』は、息子①くんの妊娠に始まり20年以上続く、大河子育て漫画! 1巻当時の内田さんは、ぐいと赤ちゃんを抱いてハイヒールで闊歩。育児書はまったく読まず、ときには不安になりながらも息子と自分を信じて子育て。子供を抱っこして漫画を描き、夜は居酒屋にも出かけ、ボディコンで授乳するカッコいいお母さんでした。

「30歳になった頃、このまま子供を産めるという機能を使わないのも寂しいな、産んでみたいと思ったんです。産んでみたらおもしろくて、ああ、今までもったいなかったなと。もう、かわいいだけで『ほえー』ってなりますよね。

それまで猫や魚を飼っていたから、子育ても、言葉が通じなくても何とかなるだろうと思っていました。それがちょっと違うと思ったのは、子供は泣きやまないときがある、ということですね」

息子①くんが2カ月目の頃。突然、夜、1時間おきに泣くようになりました。母乳をあげたり、あやしたり。やっと寝たと思ったら、また泣き始めます。

「どこか痛くて病気なんじゃないか、うっかり死んだらどうしよう、と心配になりました。でも今にして思えば、大人が起きてるのに子供だけ寝かすのって、なかなか難しいことだったんですね。『今のうちに洗濯物を干して』とか、寝かせたら何かしよう、とつい思ってしまうけど、それがよくなかった、とある日気がついたんです。

そこで、息子が泣き始めたら『よーし、今日は思いきり付き合ってやるぞ』とちゃんと付き合うようにしてから、コツもつかめてきて、問題は解消しました」

 

恋愛事情は親も子もオープン、だけど踏み込まない

その後もたくましく繁殖を続けた内田さん。子供が4人。遺伝子としての父親が3人。遺伝子上の父に会ったことのない子が2人……と、普通に考えたら、ちょっと複雑な事情の家庭?

「遺伝子のるつぼですね(笑)。顔がそっくりなごきょうだいを見ると、子供たちと『遺伝子が同じおうちってすごいねぇ』とか言って。性格も4人まったく違うし、同じようにだらしなく育てたのに、息子②だけ、前歯が全部虫歯になってしまった。

よく“私の育て方が悪かった”と思うお母さんがいるでしょう。気持ちはわかります。でも、男の人はそう感じないらしいですよ。女の人も、母親の責任と思いすぎないほうがいい。子供は、自分とは全然違う人間ですから。こんなこと言えるのも4人いる強みかな(笑)」

何だか肩の荷が軽くなる、心強いお言葉。どう教えればいいのかお母さんが悩みがちな性のことも、内田さん、聞かれたら普通に答えているそう。

「女の子もちゃんと性に興味を持たないと失敗する。ほかのおうちではあんまりエッチな話を平気でできないのかもしれないけど、私は漫画でも性のことを描いてますしね。娘②に『母ちゃんのおかげでうちの普通がほかの普通と違う、母ちゃんがデフォルトだから迷惑だ』と怒られたことも(笑)。

でも息子①が小さいときは、私の漫画が掲載されている漫画誌は、ちょっと分けていたんです。簡単に言うとエロ漫画誌だから、まだ早い、と思っていました。

ところが小学校3~4年生かな、息子①の部屋にその漫画誌があるのを見つけたんです。これはもう禁止するのは無理だなと。私は性描写よりも、イヤがる女も刺激すれば興奮してくるとか、男目線で女性像が描かれているのが嫌なんですね。だから『ここに描かれていることを真に受けないんだったら、もう読んでいいよ』と、ちゃんと言ってから解禁しました。

それと、夫婦生活をうっかり見せてしまうのはよくない。子供に対するハラスメントになるんですよね。だから、普段は大人の寝室も開けっぱなしだけど、『ドアが閉まってるときはラブラブ中ね』と言うようにしていました」

そんな内田家では、子供たちの恋愛事情もオープンです。

「今も娘①のボーイフレンドがうちに泊まり込んでますし、いつも子供たちの話を聞いたり、情報交換しています。恋愛のことに限らず、私だったら絶対親には話さなかった、と思うようなことまで話してくれるのは、信頼されているんだな、とうれしい。

もちろん親に話すことと話さないことは、それぞれあると思います。それはあって当たり前。探ったりはしません。子供の携帯をこっそり見るなんて話を聞くとびっくりします」

LINEの家族グループでがんの検査結果を報告

内田さんは昨年、大腸がんを患いました。

「出血するので病院に行ったら、組織検査をしますと。『がんらしいよ』と子供たちに伝えたら、最初はみんなびっくりしてました。娘②が『母ちゃん、がんでしたって言われたら、ガーンって言わなきゃダメだよ』と。いよいよ検査結果がわかった日、LINEに『がんだったよ、反応は?』と書いたら、みんな『ガーン』って(笑)」

内田さんがつくってきた家族の形が浮かぶエピソード。

「家族LINEって、やっぱり家族感がありますね。私、子供を産むのは楽しかったけど、家族というものをつくりたいと思ったことはなかったんです。

普通のいいおうちに育ってきた方は、それをモデルに家庭をつくると思うんですよね。でも私は、自分自身が育ってきた家庭がややこしい……私の母は父に暴力を受けて離婚して、そのあと義父になった人には別に家庭があって、私は義父に性的虐待を受けて。そんな、自分が育ってきたような家庭を繰り返したらまずいじゃないですか。“家族”という言葉自体も嫌いで、ずっと使わなかった。

でも子供が複数になって、私とパートナーがいるという形になってきた頃、“家族”という言葉がふと頭に思い浮かぶときがありました。そして最近は、だいぶ家族という意識ができてきました。

私は手術して人工肛門になったんですけどまだ慣れなくて、外出先から『ちょっと帰る』というときがある。そういうときも、子供たちがすごく心配してくれます」

現在、息子①くんは大学で漫画のプロデュースコースを学び終え卒業。娘①ちゃんは美大生。これはやはり遺伝子のなせる技?

「家業は影響するんでしょうね。娘②と息子②の父親は俳優で、私も副業で俳優をしているんですけど、娘②がちょこちょこ女優をやっています。息子②も演技ができて踊れるんですよ。

みんないい子に育ってくれました。大人と話すのも好きな子たちなんです。違う世代の人とも会話ができるのは大事なことだと思うので、よかったなぁと」

子育ても一段落、でしょうか?

「いやあ、そう思ったことはないです。これからもないんじゃないかな。この間、娘と一緒に免許を取りに行ったら、娘が『本籍』という言葉を知らなかった。ごめん、それはまだ教えてなかった、終わってなかったね子育て、みたいな気持ちになりました。

もう“子”じゃなくなって、“子育て”じゃなくなっても、子供を助けることは死ぬまであると思っています。逆に助けられることも。

みんなちっちゃいときお人形さんみたいにかわいかった。大きくなった今だってかわいいって思います、私。子供たち、今でも『ハグは?』って言ってきますよ。京都に住んでいる息子①も帰ってくると、みんなで『わーい』って集まってハグ。24歳の息子、照れくさそうにしてます」

本音で読者のお悩みQ&A

Under 8
まだ「人」として形づくられていない天使期。親のしつけが勝負の分かれ目?

 「ほめて育てろ、という風潮についてどう思いますか?」(カコリーヌさん・43歳・福岡県・主婦)

 私の母も小さい頃はほめ上手でした。ところが義父が「ほめるとつけあがる」という人だったので、途中からほめられなくなって、寂しかった。ほめたほうが自分もいい気持ちになるし、いいと思います。

 

 「子供に対して怒ることはしたくないけど、正しいことは教えたい。これからますます言うことを聞かなくなったら、どんな接し方をしたらいいのかな?」(マーくんなっちゃんさん・34歳・高知県・営業販売)

 私は「言うことを聞きなさい」という言葉は使っていません。これは精神科のお医者さんに教わったんですけど、「自分はこうしてほしい」「そういうことをされると私は悲しい」と、「私」を主語にして話すのがいいそうです。 「私」を主語にすると「こうしなきゃダメ」「普通こうでしょ」という、上から決めつける言い方はできなくなります。自分が思っていることもちゃんと子供に伝わるし、いいみたいですよ。

 

Under 12
自我がぐんぐん育ち始める小学校高学年。きょうだい関係にも手こずる時期

 「こちらは同じようにしているつもりなのですが、子供は『誰々ばっかりずるい!』などほかのきょうだいと比べては不満があるようです。皆さんはどのようにされていますか?」(みきさん・36歳・茨城県・パート)

 「男の子でしょ」「女の子だから」という言葉は、一度も使ったことがありません。男子がどんなに一般的に男子らしくないことをしても、それを責めないようにしています。女の子には「スカートはいてるときはパンツ見えないようにしなさい」ぐらいは言いますけど、「女の子なのにお行儀が悪い」とは言いません。「お兄ちゃんなんだから」「お姉ちゃんが我慢しなさい」なども言ったことありません。もめているときは「人生経験の少ないほうに譲ってやって」と言います。子供たちも名前で呼び合っていますね。「長男」「長女」という言葉も使いません。3度の離婚ですっかり戸籍制度を嫌いになったので。

本誌未公開Q&A
 「仕事をしてるので子供に米をといでみせたり、炊くことを教えてますが、なかなか難しいものでしょうか? 少しでも手伝ってもらえると助かるなあと思っています」(すぎちやんさん・大阪府・40歳・サービス業・息子10歳、娘8歳&2才8ヶ月)

 子供たちみんな料理が好きなので助かってます。私が癌で2週間入院したときも、交代で作っていたようです。普段は息子②が一番料理します。息子②は三度の飯より白米が好き(笑)。「あ、ご飯が足りない」というとすっ飛んでくるので、いつのまにか白米を炊くのは彼の仕事になりました。

 

Under 18
やきもきの思春期を経て、自立に向けて子育てのラストスパート!

 「進路の選択について、親が率先して考え決めてよいのか、子供の考えを最大限に尊重するべきか、皆さんの考えを教えてほしいです」(はまなすさん・40歳・東京都・主婦)
 「子供に将来の目的を持ってもらいたいのですが、進学のアドバイスや、なぜ大学に行くのかなどを説明できません」(えつこさん・48歳・山口県・アルバイト)

 娘が受験のとき、私は押しつけたつもりはなかったけど、思惑が違ってしまって、ちょっと険悪になったときはありました。でも基本、「私には関係ないことだ」ぐらいに思っています。保護者会でも、ほかのお母さんたちは子供が選択授業で何を選んでるとかよく知ってるけど、私はまったく知りません。だって私の人生じゃないもん。

 

 「慣れない子育てに疲れて早く成長してほしいと思っていましたが、気づけば長女と一緒に暮らせる期間もあと4年。高校を卒業したら家を出るだろうと思うと、今から寂しくてたまりません。子供の成長を喜ぶより、寂しく感じる感情ってありましたか?」(よしよしさん・45歳・京都府・主婦)

 息子①が京都の大学に行くことになったときは寂しかったです。きょうだいたちも同じで、息子②は「行ったらだめーっ! うわーん」と泣いちゃって。今も遠くにいるのは寂しいです。 でも本人が行きたいならしかたないですよね、彼の人生ですから。

 

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LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
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