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【9月のおすすめ映画】“私だけの宝物”にしたい感動作『私たちは、ちょうどいい。』吉岡里帆&奈緒W主演『シャドウワーク』他2本

2026.09.17

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イラスト 折田千鶴子さん

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折田千鶴子さん

映画ライター

双子の弟のインハイ応援で琵琶湖へ。それでついに部活も終了。今後は兄の受験が佳境に……トホホ(泣)。

『私たちは、ちょうどいい。』

『私たちは、ちょうどいい。』
©2024 CHOSEN FAMILY, LLC All Rights Reserved.

各国の映画祭で観客賞を受賞! “私だけの宝物”にしたい感動作

今、こんな優しい映画が観たかった! 欲しいのは、ささやかな優しさと共感。誰かや何かの評価を気にした言動でなく、ただ人と人として向き合うこと。きっと自分と同じように、同じ加減で、そう願う誰かがいる。作風も内容も完全に異なるが、どこか『急に具合が悪くなる』とも通じる〝つながれる喜び〟に満ちた本作。思わずこみ上げる涙の後、心が潤っているのを感じるはずだ。

主人公は、病気をもつ友人宅に住み込み、介助して暮らすリリー・トレヴィノ。幼い頃に母が家を出ていき、父と2人で暮らしてきた。しかし父はリリーにまるで無関心で、数カ月に一度は会って食事をするが、自分の近況——複数の恋人候補の女性の話を一方的にまくしたて、リリーの話には耳も貸さない。そんなある日の会食で、リリーは父の機嫌を損ねてしまう。父は怒り狂い、絶縁を宣言。リリーは必死で謝るが、電話もメールも不通に。連絡が取れないリリーはSNSで父の名を検索し、友達申請を送る。ところがそれは同姓同名のまったくの別人で、建設会社に勤めるまじめな中年男性だった。会社でも家庭でも相手を優先し、自分を後回しにする優しいボブは、訝りながらも返信。やがて間違いに気づくが、2人は「いいね!」を送り合い、やりとりを続ける。そしてひょんなことから直接、顔を合わせた2人は、互いについて話し、耳を傾け、特別な友情が芽生えていく。

最初こそリリーがなぜ実の父にそんなに気を使うのか疑問に思うが、幼少期の話を知るにつれ「なるほど」と胸が痛くなる。親がまるで自分を見てくれない寂しさ、悲しさ、徒労感。そこから始まるリリーの自己評価の低さは、話を聞く研修中のセラピストが、あろうことか泣き出してしまうほどだ。リリーがのどから手が出るほど欲しかった労わりの言葉や心の交流を、年の離れた友人ボブは当たり前のような自然さで与えてくれる。一方で実はボブも、家族を巡るつらい過去を抱えていた……。

2人がどんな話に共感し、どんなことをするのか、興奮してすべて明かしたくなるが、新鮮に味わうために我慢して控える。ただ一つ「犬」というキーワードは漏らしてしまおう。そこには涙を堪えきれない感動が待ち受ける。さらに本作は人間関係の呪縛に囚われている人を、そっと解放してくれる。たとえ家族でも友人でも、互いを尊重し合えない不均衡な関係は、無理に続ける必要はない。勇気と覚悟は要するが、自分を最優先して大切にするのは、決して自分勝手なことではないのだ、と。

本作が初監督作のトレイシー・レイモンの、なんと実体験が元になっているというから、より愛しさがこみ上げる。友人ボブを演じるのは、同日公開『オデュッセイア』にも出演する個性派ジョン・レグイザモ。全身からにじみ出る温かさが観る者をも包み込む。SNSが拡散する悪意ばかりが目につく今、こんな優しい出会いや奇跡を生むものでもあると、現代の利器をもう一度信じたくなる。

9月11日より全国順次公開

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『シャドウワーク』

『シャドウワーク』
©佐野広実/講談社 ©2026「シャドウワーク」製作委員会

罪は罪だけど……彼女たちの苦悩と叫びに動揺&共鳴必至の問題作

夫のDVで病院に運ばれた紀子(吉岡里帆)は、看護師の路子(美保純)の紹介で、ある日本家屋のシェルターで暮らすことに。似た境遇の女性が細かなルールのもと、穏やかな共同生活を送るその場所で、紀子は自分を取り戻していく。しかし、そのシェルターが行ってきた、ある犯罪に気づく。一方、刑事の薫(奈緒)はある事件を追う中で、シェルターの存在を知る。風吹ジュン、酒井若菜らのほか、北村匠海が衝撃的な役を熱演。社会的倫理観と、自分の中の正義や価値観、生理的本能がせめぎ合い、鼓動が爆速に! 佐野広実の同名小説を『君は永遠にそいつらより若い』の𠮷野竜平が映画化。

9月25日より全国順次公開

公式サイト



『ラブ・ライズ』

『ラブ・ライズ』
©2024 Head Office Film Limited All Rights Reserved.

久々に飛び出した香港発ラブコメ
香港&台湾で多数ノミネート!

定職につけず高額バイトに応募したZ世代のジョー(MCチョン・ティンフー)は、詐欺集団の打ち子に採用される。55歳のフランス人アランになりすまし、25歳・香港人看護師とSNSでやり取りを開始。しかし本当の彼女は離婚協議中に夫を亡くし、やりきれなさを抱える52歳の医師(サンドラ・ン)だった。彼女は新たな出会いに救いを感じ、信じ、乞われるがままアランに送金。ジョーは次第に罪悪感を覚え始める――。普段は知的で冷静な彼女もだまされる、ロマンス詐欺の不思議と罪深さ! けれどそこに〝愛や救い〞がなかったとも言い切れず、どこか悩ましい。双方の孤独や愚かさにも思わず共感! 

全国で順次公開中

公式サイト

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配信 CINEMA&DRAMA

『サルセド・クエロ・イ・ブーガルー』

『サルセド・クエロ・イ・ブーガルー』

コロンビア発のドラマでサルサを堪能!

ごく普通の青年マルティン・サルセドは、訪れたサルサクラブでトラブル客を意外な腕っぷしで撃退。アフロヘアの美女ベロニカに一目置かれ、その口利きでクラブの用心棒に雇われる。ベロニカに信用された彼はやがて、ドラッグの密売にも一枚噛むことに。ところが気を大きくした彼は、にぎやかな夜のクラブに身を浸すうち、数々の誘惑に足をすくわれていく。「やっぱそうなるか」と思いつつも、魅惑のリズムに乗せられてハラハラ、ノリノリで一気見必至。6分程度×12話なので、一日の終わりのお口直しに最適!

Netflixシリーズ「サルセド・クエロ・イ・ブーガルー」独占配信中

公式サイト


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE10月号(9/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。

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