台風10号で大きな被害にあわれた地域の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。安否のわからない方たちのご無事を祈るばかりです。
こうした被害はここ数年繰り返されています。昨年9月にも、記録的大雨で鬼怒川が決壊し、多くの家屋が流されていく様子が実況中継されたことを覚えている人は多いと思います。真新しい家が濁流に飲み込 まれていく映像に、私も大きなショックを受けました。
30年、35年のローンを組んで、ようやく手に入 れた我が家に大きな災害が降りかかり、破壊される様は考えたくないものです。しかし、家はあくまで個人の資産という扱いなので、国や自治体が税金を使ってまるごと直してくれることは ありません。自分で備えるほかはないのです。
家に対する火事や洪水などの被害に備えるのは火災保険。家を買う時には必ず契約する必要があります。というの も、たとえ隣家からのもらい火で自宅が燃えたとしても、その被害を隣家に請求することはできないことになっているから。万が一家を失ったら、数千万円単位 の損害になるわけですから、これこそ保険で備えなければ間に合わないケースと言えます。
都会の住宅でも「水災」の被害を受けるかも
最初に書いた家屋の流出だけでなく、今回大きな被害をもたらした台風10号のような、大雨による床上浸水、高潮、土砂崩れ、土石流などの被害は、火災保険の「水災」の契約をしていれば補償の対象になります。この水災は基本契約に含まれていないことが多いため、マンションの上階だったり、川や海から離れた立地なので不要と判断して、保険料節約のためつけていないケースも。
しかし、近年の雨の降り方を見ると、たとえ都市型の住宅でもそうは言いきれないことも。一戸建てでも一階地面より低い半地下にガレージや玄関を作ってある家や、周囲の土地より低く水が溜まりやすい立地の家は、ゲリラ豪雨や台風の記録的大雨で浸水の危険があります。郊外によくある山の斜面を削って造成した立地のマンションも水害の可能性がないとはいえません。
2014年、広島市安佐北区・安佐南区で起きた大規模な土石流災害は、局地的な大雨により住宅地後背の山が崩れたことが原因でした。私自身、広島のマツダスタジアムに野球の試合を見に行ったとき、観客のいるスタンドからも山の中腹までびっしり住宅が立ち並んでいる光景が見え、「土砂崩れと言っても、なにも山深い場所で起きるわけじゃないんだな」と感じたものです。
そう考えると、たとえ都市型の立地であっても水災の契約が不要とは言い切れない時代です。現在「水災」をつけていないお宅も、自治体が出しているハザードマップを見て自宅の浸水危険度を調べ、背後の立地や家の構造も確認して、判断した方がいいかもしれません。どちらにしても、現在の補償内容や、どんな時に保険金が出るかなどの細かい条件は確認しておいた方がいいでしょう。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。