ライター石井絵里がおすすめ!
【今月のおすすめ本】蝉谷めぐ実『見えるか保己一(ほきいち)』鳥飼 茜『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』他2編
2026.04.22
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石井絵里さん
ライター
公園のベンチに座って読書したいと思う春。花粉症なので、今年も「憧れるだけ」で終わりかも?
『見えるか保己一(ほきいち)』
蝉谷めぐ実 ¥2035/KADOKAWA
江戸時代に実在した盲目の国学者。「見えない」の先にある風景は?

実は“右目だけ”にコンタクトレンズを装着している私。裸眼だと左目が遠視(1・5以上)、右目が近視(0・1ぐらい)と、視力にそれなりの左右差が。日常生活に支障はないものの、コンタクトレンズをつけていないときは、遠近感がつかみづらくてドキドキすることも。近視の人の「遠くがぼやける」悩みも、遠視の人の「近くを見ると目が疲れる」感覚も味わっています。それゆえに「ほかの人はどんな感じで世界が見えているのだろう?」と気になることもしばしば。では、視力にまったく頼れない人の世界とは? というのが今月の1冊。
『見えるか保己一(ほきいち)』は、江戸時代に実在した盲目の国学者・塙 保己一(はなわ ほきいち)の生き様に迫った時代小説。農家の息子に生まれた保己一は、病気が原因で視力が弱っていき、7歳で完全に失明してしまう。ところが記憶力や洞察力に優れており、彼が暮らす村の人たちから「優秀な子」と、大切にされる。青年期を迎え、江戸で盲人の専門職へ就いた保己一。「見えない者」と「見える者」との違いに悩みながら、最終的には学術の才を発揮していくことに——。
嗅覚や聴覚を駆使し、想像力を働かせて鋭い発言を繰り返す保己一に、周囲のものは「ほかの人にはわからない本当のものが“見えて”いるのでは?」と驚く。一方で、学問以外の部分では鈍感な彼に、失望を抱く人間も少なくない。そして彼の学者としての能力に「全盲なのに」と勝手な憧れや嫉妬を抱く者も……。「視力があることはすごい」のか、「視力がないからすごい」のか。老年までの保己一の姿を追いかけながら、いろんな思いが湧き上がってくるはず。
晩年、江戸幕府もその存在を認める国学者になった保己一。彼のように視力を持たず保己一と縁のあった人たちや、視力を持っている身近な妻や弟子との、ヒリヒリするやり取りにも感じ入ることは多いはず。タイトルは、彼にかかわった人たちの心の叫びでもあり、自身が、生涯をかけて問い続けるテーマにも。圧巻の人間ドラマ、ぜひ最後まで見届けて!
『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』
鳥飼 茜 ¥1760/文藝春秋

『先生の白い噓』などの作品で知られる漫画家が、日本の婚姻制度について考察。2度の結婚と離婚を経験し、3回目の結婚に踏み切ろうとする彼女が、夫婦や家族の定義に感じる違和感や、望むこととは——。自身の体験や思いが真摯に綴られており、読みごたえ十分。世間の当たり前を見つめる精度も高めてくれる。
『それでも息子を日本の小学校に通わせたい』
山崎エマ ¥990/新潮社

イギリスと日本をルーツに持ち、日本の公立小学校、インターナショナルスクール、アメリカの大学で教育を受けてきた著者。ドキュメンタリー映画の監督として評価を得ている彼女が、生い立ちを振り返りつつ、日本の学校教育のよい部分、不足している部分を、他国の文化と比較しながら考える。わが子の教育方針に迷いを感じている人には、ひとつの参考になりそう。
『学習まんが 世界の伝記NEXT いわさきちひろ』
まんが:春野まこと シナリオ:堀ノ内雅一 監修:ちひろ美術館 ¥1320/集英社

『ゆきのひのたんじょうび』『あめのひのおるすばん』など、やさしい色彩と印象的な子どもの絵で多くの人たちを魅了した絵本作家・いわさきちひろさんの伝記。1918年~1974年まで、子どもの幸せと平和を願い活動を続けた激動の生涯をまんがでたどる。すべてふりがな付きで、子どもと一緒に楽しめます。
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE5月号(4/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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