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ライター石井絵里がおすすめ!

【今月のおすすめ本】村山由佳『しっぽのカルテ』川野芽生『AはアセクシュアルのA』他2編

2026.02.15

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今月の注目情報をお届け!

石井絵里さん

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石井絵里さん

ライター

寒さ極まる今の季節。猫たちがひざに乗っかってくると温かくて幸せですが、2匹で11㎏超え。重い!

『しっぽのカルテ』
村山由佳 ¥1980/集英社

動物好きは必読! 優しい文体と丁寧な描写に心揺さぶられる物語

『しっぽのカルテ』村山由佳 ¥1980/集英社

2匹の猫と一緒に暮らしている私。兄猫・クリームは陽気な暴れん坊。妹猫・アゲハは、思慮深さを秘めたお転婆で、どっちも大型ボディながら運動神経抜群! 猫を迎える前は、ウサギを11年飼っていました。そんな、いち動物好きが痛感しているのが、動物病院の先生や動物看護師さんをはじめとしたスタッフの偉大さ。言葉も通じず、性格も種類もそれぞれ異なる生き物の異変に気づき、ケアする姿を尊敬しています。

今月の一冊は、信州の木立の中に佇む動物病院を舞台にした、心温まる小説。ヒロインは26歳の女性・深雪(みゆき)。過干渉な母親の存在と窮屈な実家生活から距離をおくために、「エルザ動物クリニック」経理事務・受け付けスタッフとして働き口を見つけます。院長、動物看護師、深雪を含めて全員が女性の小さな病院に、さまざまな動物や飼い主らがやってくることに——。

凍死寸前の状態で発見され、病院へ運ばれてきた子猫、重度のケガから素晴らしい回復力を見せる犬など、生き物たちの生命力が臨場感たっぷりに描かれます。一方で、高齢化するペットと飼い主の関係など、動物だけではなく、人間の生き方を問うリアルなエピソードも。すべての命に平等に向き合う院長の言動や、ひょんなことから病院の敷地で庭作りを手伝うことになった男性・土屋の存在も、物語に奥行きを与えてくれます。動物と個性的な人間たちに囲まれるうちに、深雪が過去の職場で受けてしまった心の傷や、そのことがきっかけで陥りがちな消極的な考え方と態度も明らかに……。院長や土屋、同僚たちに見守られながら、深雪が自分自身の力でつらい過去を乗り越えていく姿には希望があふれます。

著者の村山由佳さんも、大の動物好きで知られる作家。この小説が、ただのいい話だけに終わらないのは生き物たちと徹底的に向き合ってきたからだなという、個人的な感想も。優しい文体と丁寧な心理描写に心を揺さぶられながら、気づけば読み手側もじんわりと元気になれる一冊です。

『AはアセクシュアルのA』
川野芽生 ¥2310/リトルモア

『AはアセクシュアルのA』川野芽生 ¥2310/リトルモア

他者に恋愛感情や性的欲望を持たない「アロマンティック」(無恋愛)や「アセクシュアル」(無性愛)。人に興味がなくてドライ、寂しい生き方といった受け止められ方もされがちなアロマンティック・アセクシュアルの人について、当事者の著者が思いを綴ったエッセイ。恋愛ありきで回りがちな社会や人付き合いに違和感を覚えた体験や、彼女の想いに触れることができます。



『半径5メートルの世界史』
歴史雑記ヒストリカ ¥1980/産業編集センター

『半径5メートルの世界史』歴史雑記ヒストリカ ¥1980/産業編集センター

身の回りにあるグラスやお皿、書籍や洋服など、あるのが当然として日々使っているモノの来歴って気になりませんか? 人気YouTubeチャンネル『歴史雑記ヒストリカ』が、それら当たり前に存在しているモノの歴史を、おもしろ雑学や逸話とともにわかりやすく解説してくれます。あらゆるモノに世界中の歴史が詰まっていると考えると、日用品への解像度も上がるはず!

『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』
しまおまほ ¥2200/リットーミュージック

『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』しまおまほ ¥2200/リットーミュージック

イラストや漫画、エッセイ等で活躍中の著者が、坂本美雨、UAなどミュージシャンの親を持つ子どもたちにインタビュー。著者のさまざまな質問に対する、それぞれの回答がとてもユニーク。一瞬で過ぎていく子ども時間の記録としても、貴重な一冊。自分の家庭の中で同じような質問をしてもおもしろいかも!?


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE3月号(2/6発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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