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【よしながふみさんインタビュー】最新作『Talentータレントー』は芸能界が舞台。人間の才能や成長を追いかけたい。

2026.02.20

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『きのう何食べた?』、『大奥』、『環と周』など、LEE世代に刺さる数々の作品を生み出し続けているよしながふみさん。最新刊『Talent―タレント―』は、芸能界を舞台に、4人の男女が「才能とは何か?」ともがきながら成長していく物語。作品が生まれた背景を聞きました!

マーガレットコミックス「Talent―タレント― 1」よしながふみ/集英社 書影(帯あり)
マーガレットコミックス『Talent―タレント―』1 🄫よしながふみ/集英社

Profile よしながふみ●『西洋骨董洋菓子店』『大奥』『きのう何食べた?』など代表作多数。映像化作品も多い。『大奥』は手塚治虫文化賞マンガ大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞をはじめ数多くの賞を受賞。『環と周』が「このマンガがすごい!2025」(宝島社)オンナ編第1位に。『Talent―タレント』を「ココハナ」で連載中。

長年愛し続けるドラマの世界。役者たちの才能を追いかけたいと思うように。

『Talent―タレント』は、涼平、一慧(いっけい)という男性俳優と、ミコト、華蓮(かれん)という女性俳優、4人の物語。舞台を芸能界に、そして「群像劇」にしたきっかけは何だったのでしょうか?

マーガレットコミックス「Talent―タレント― 1」よしながふみ/集英社 書影(帯あり)場面写真1コマ🄫よしながふみ/集英社 第一話扉4人
🄫よしながふみ/集英社

「私自身が大のドラマ好きで、芸能界を舞台にした作品はずっと描いてみたいと思っていました。ドラマって出演者の成長ぶりを目の当たりにしたり、“当たり役”を得た方がワンステージ上がっていく姿を目撃することがありますよね。役者さんが花開く瞬間の感動や、その奥にある“才能って何だろう?”という気持ちも含めて、漫画にしてみたいと思いました

物語は2000年代のはじめからスタート。4人の俳優たちは「才能の原石」として登場します。現代ではなくて、あえて「四半世紀前の芸能界」から、話を始めた理由とは?

『きのう何食べた?』や『大奥』でもそうなのですが、私は年齢を重ねた人間に魅力を感じるんですよね。中年・老年が大好きなんです(笑)。だから『Talent―タレント―』も、4人の登場人物たちが時間と経験を重ね、成熟する過程を追いたくて。現代から逆算し、彼らが若かった頃の2000年から、物語をスタートさせることにしました」

年齢に応じて経験値は増えるけれど、だからと言って「若いから未熟」ではない

1話、2話と進むうちに、4人それぞれがお芝居の世界に足を踏み入れた過程が分かってくるのも読みどころのひとつ。特にLEE世代としては、祖母と同居していた涼平や、家族に心配されながら雑誌モデルの世界に足を踏み入れたミコトをはじめとした、主人公とその周りの人たちとの交流も、興味深く読んでしまいます。本作に限らず、よしながさんが、様々な世代の生き方や、価値観について、フラットに描くことができるのはなぜでしょうか?

「そんなに描けてはいないと思いますが……少なくとも、幼い人・若い人に対して『幼くて未熟』、『若いから愚か』みたいな気持ちは、持っていません。年齢に応じて経験値が増えていくとは思いますが、『年齢を重ねた人間の判断は、絶対に正しい』とも思ってはいませんし」

実の親とは、大ゲンカしたっていい!

LEE世代は、親という“年齢を重ねた人”との関係性についても、悩み多き年ごろです。しかも最近は、義実家でなく、実の親との接した方が難しい、という戸惑いも……。

「そうなのかもしれませんね。配偶者の親とは、他人という線引きがあるから、お互いに配慮を持とう、という今の時代の流れみたいなものは感じます。対して実の親となると、やっぱり遠慮がなくなりがちですよね。ただし私は、実の親子だったら、別に気にせずに意見をぶつけあってもいいんじゃない? と思っていて

マーガレットコミックス「Talent―タレント― 1」よしながふみ/集英社 書影(帯あり)場面写真1コマ🄫よしながふみ/集英社
🄫よしながふみ/集英社

確かに、作中の中でミコトは両親から芸能界入りを「絶対反対!!」と言われ、兄からはかなり辛辣なことを言われるも、ちゃんと自分の意思を伝えています。

「彼女は家族からの価値観の押しつけに屈することもないですし、自分が芸能界に入りたい理由も話していますよね。ミコトの家族は“頭が固すぎる人たち”というわけではないので、作品の中ではバトルはしていませんが、価値観が違い過ぎる家族とは、大ゲンカしたっていいと思います。特に親に対して『嫌な気持ちにさせないように~』とか身構え過ぎずに。家族という事実は消えないんですから。お互いに言いたいことを言っていいんじゃないでしょうか」



「子どもにズケズケ言い過ぎ?」と気になる人は、もっと自分を認めてあげていい

またLEE世代は、ライフスタイルや働き方、パートナーシップも含めて、常識や環境が目まぐるしく変わる中で成長してきた人たち。「親から、旧世代の価値観を押しつけられてイヤ」と思う反面、実際の子育てでは、よしながさんが『愛すべき娘たち』や、『環と周』で描いてきた母親たちのように、「多数派でいて欲しい」、「人生の中で傷つかないで欲しいから、先回りしてズケズケ言ってしまう」と、結局は旧世代の親と同じく、価値観の押しつけをしているのではないかという心配も――。

『子に価値観を押しつけていないか?』、『ズケズケものを言っていないか?』と、内省できる方は、お子さんに理不尽なことはしていないと思いますよ。自信を持ってください(笑)

これは私の主観ですが、最近の子どもって、健やかに育っているお子さんが多いように感じます。私が幼かった頃は、子どもに対する接し方や愛し方って、まだどの親も自己流で。子育てにまつわる情報も、今ほど出回っていなかったと思います。それゆえに『親とはみんなうっすらひどいもので、子どもはみんなうっすらと傷ついていた』みたいな印象があります。そういう親の理不尽さやズケズケ感を知っているLEE世代は、次世代に対して、自分で思うほどの押しつけは、していないのでは?

マーガレットコミックス「Talent―タレント― 1」よしながふみ/集英社 書影(帯あり)場面🄫よしながふみ/集英社
🄫よしながふみ/集英社

『Talent―タレント』の中で気になってしまうのが、ルックスに華があるだけではなく明るく無邪気な、涼平の存在。他者への思いやりも深い彼だけに、今後、芸能界でどうなっていくのか――。

「2世俳優で業界の裏も表も知っている華蓮。女友達とのつきあいで苦労し、目立つことのデメリットを知っているミコト。そして演技派で年齢のわりに狡猾な部分もある一慧(いっけい)に比べると、涼平は素直ですよね。でも4人がみんな、今の性格や価値観のまま、年齢を重ねていくわけじゃない。お互いの言動が、救いや呪いになる場面も出てくるかもしれません。でもそれも含めて、人間の才能や成長を描いていけたらいいなと思っています

マーガレットコミックス「Talent―タレント― 1」よしながふみ/集英社 書影(帯なし)
マーガレットコミックス『Talent―タレント―』1 🄫よしながふみ/集英社

『Talentータレントー』


「ココハナ」(集英社)で連載中。コミックス1巻が発売中(2026年2月20日発売)

【あらすじ】時は2000年6月。麻生涼平、柘植一慧(いっけい)、ミコト、高屋敷華蓮の4人の新人俳優は、あるドラマの撮影現場で共演する。輝かしい未来を信じて疑わない彼らの先にあるのは……? 激動の芸能界を舞台に“才能とは何か”を描く、よしながふみさんの最新作!


Staff Credit

取材・文/石井絵里 

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