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佐々木はる菜

防災が不安だった私が出会った「続けられる備え」/”いつも”と”もしも”を切り離さないヒント

  • 佐々木はる菜

2026.02.22

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不安だった防災対策を前向きにしてくれた一冊

今年も、まもなく3月11日を迎え、東日本大震災から15年が経ちます。

我が家でも非常食や水、防災バッグを用意し、定期的に少しずつ中身を見直しています。
でも、「いざ何かが起きたら、本当に自分はちゃんと動けるのだろうか」という漠然とした不安は、ずっと心のどこかに残ったまま……。
そんな時に出会ったのが、今回ご紹介する『ラクして備える ながら防災 フェーズフリーな暮らし方』という本でした。

『ラクして備える ながら防災 フェーズフリーな暮らし方』

著者であるCAMMOC(キャンモック)の皆さんの暮らしには、さまざまな災害に備えるヒントやアイデアが満載! それらを生活の中でどんなふうに実践されているかが、具体的にわかりやすく描かれています。

最初はノウハウを求めて読み始めました。
ただページをめくるうちに感じたのが「役に立つ」だけでなく、なぜか「ワクワクする」という感覚。
温かい文章に加えて写真やイラストも多く、その暮らしぶりが、おしゃれで楽しそうに見えたことも、大きな理由のひとつだったと思います。

でも、私の心を一番大きく動かしたのは、「暮らしの中で自然に続けられる防災のヒント」が散りばめられていたことでした。
そこで今回、CAMMOCの創設メンバーのひとりである三沢真実さんにインタビュー。
日常生活の延長線上で無理なくできる防災について、お話を伺いました!

お話を伺ったのは……

三沢 真実さん

MAMI MISAWA

合同会社CAMMOC(キャンモック)代表
キャンプコーディネーター/空間コーディネーター/防災士

「キャンプのある暮らし」をテーマに、アウトドアスタイルを軸とした空間コーディネートや、メディア向けの撮影スタイリングなどを手がける。
近年は「ながら防災」を提唱し、自分に合った暮らしや防災のかたちを探りながら、キャンプを通して日常の延長で続けられる防災のあり方を発信している。
テレビ・ラジオ出演、執筆、イベント登壇など、幅広く活躍中。

不安になるのは、ちゃんと向き合っている証拠

「防災について不安があるのは当たり前のこと。むしろ不安や心配があるということは、防災を意識し、ちゃんと一歩踏み出せている証拠だと思います」(三沢さん)

まずそんな言葉をかけてくれました。
その上で、「それを解消するには、試験勉強と同じでやはり『傾向と対策』が大切」と続けます。

「ハザードマップなどをもとに、自分が住んでいる地域でどんな災害が起こりうるのかを知り、自分の家族には何が必要かを整理していく。正直、少し面倒な作業ではありますが(笑)、これはやっぱり大切なステップ。すべてはまず『知ること』から始まります」(三沢さん)

三沢真実さんと息子さん
一児の母、一人のクリエーターとして、息子さんとの日々を大切にしながら好きなことを仕事にしている三沢さん

「目まぐるしい“いつも”の中で、いつ起こるかわからない“もしも”を考えながら暮らすのは、難しくて当然だと思います。それに、『できていない』という心配は、次にやることが見えている、ということでもありますよね」(三沢さん)

そして教えてくれたのが、”いつも”と”もしも”を切り離さずに考えるという、暮らしの視点でした。

“いつも”の延長に、“もしも”がある暮らし

三沢さんたちの暮らしのベースにある「フェーズフリー」。
これは日常(平常時)と非常(災害時)のフェーズを隔てる壁を越えて、〝いつも〟の暮らしを豊かにするものが、〝もしも〟の時も役立ち支えてくれるという考え方だといいます。

三沢真実さん愛用のランタン

「例えば我が家には、いつもランタンが置かれています。もし停電したとしてもそのまま使うことができるので、『防災対策』のひとつになっています。
 ただ私は災害時のために用意したのではなく、ランタンがあることで日常の生活が心地よくなるから置いています。
 形が可愛くてインテリアとしてもお気に入りでテンションが上がるし、よくキャンプに行くので、いつでもすぐ使えるように充電しながら飾っておけば、出発前に慌てなくて良い。そうやって、自分の日常をより良くするアイデアが備えになると考えれば、防災は『わざわざ取り組むもの』ではなくなっていくんですよね」
(三沢さん)

その話を伺い、「防災のため何かを足す」だけではなく、「今の暮らしを、別の角度から見てみる」という向き合い方もあるのかもしれないと気づきました。



これも防災だったんだ!という「宝探し」が、行動を増やしていく

実は三沢さんが「フェーズフリー」という言葉を知ったのは、この本の出版がきっかけだったそう。

「防災×キャンプ」という切り口で、フリーペーパー『BOUSAI BOOK』の制作や、企業・自治体・学校での講演、イベントなどを通して「ながら防災」の活動を広げてきたCAMMOC。
その活動や発信が多くの共感を集め、一冊の本にまとめることになった際、編集者の方から投げかけられたのが「日常の中で防災を実践しているCAMMOCの暮らし方は、まさに『フェーズフリー』ですよね」という言葉でした。

2020年、CAMMOCが作ったフリーペーパー『BOUSAI BOOK』。「SDGs防災キャンプ」の活動の指標が詰まっています

「この言葉を知ったことは、自分たちの暮らしを新鮮な気持ちで見直す良い機会になりました。すると次々と『これも防災につながっていたんだ』という発見があり、当初はまるで宝探しをしているみたいな感覚! そうやって楽しんでいると、自然とさらにアイデアが浮かび、行動も増えていくんですよね」(三沢さん)

実際、本の中に登場するアイデアは、日々の暮らしを少し心地良くしてくれるものばかり。
例えば、普段の食卓でも活躍するローリングストックの考え方やレシピや、「見せる収納」と「落ちない・倒れない工夫」を両立させた収納アイデア。快適さを保ちながら、万一のことも考えた浴室のレイアウト。どれも防災に繋がりながらも、「特別な準備」として日常から切り離されていないことが印象的でした。

“もしも”を、ちょっとだけ体験してみる

では、自分なりに防災対策をしつつも不安を感じている私のような人が、次にできることは何なのでしょうか。

「その不安の大きな理由は、例えば防災バッグの中身について『これは実際、どうやって使うんだろう?』といった感覚があるからなのではないかと思います。
 きっと多くの方は、災害が起きたときに初めて『こういうふうに役立つんだ』と実感するはずなんですよね」
(三沢さん)

そこでおすすめなのが、「ライフラインのない状態を楽しく体験してみる」こと。

「一番わかりやすいのは、やっぱりキャンプです。
 でもそれはちょっと大変だなという方は、例えばお休みの日に近所の公園でお昼を食べる。その時に、お湯を入れた水筒とインスタントスープとカップを持って行ってみる。外で食べるピクニックのご飯に温かいメニューがプラスされることは、きっと心地良く楽しい体験ですよね。 そしてそれは自然に、いつもより少しだけ『非日常』を取り入れている経験にもなっています。」
(三沢さん)

そんなお話を伺って思い出したのが、子どもたちが小さい頃にしていた、”非常食夕ご飯”です。
我が家では毎年夏休みに防災セットを見直しており、その際、期限が近づいた非常食を夕食として出し、ランタンの明かりだけで食べていました。(その様子は以前、LEEでも記事を書かせていただきました)
当時の子どもたちは、いつもと違う雰囲気の中、いつもと違うご飯を食べることを楽しみにしていました。

ランタンを付けて非常食を食べる子どもたち
この頃、長男は小学校1年生、長女は年中でした

その話をすると、三沢さんは「すごくいいですね!」と、にっこり。

「そうやって実際にやってみた経験があるだけで、もしもの時の安心感は全然ちがいます。『あ、これ前にやったことがある』って思えるだけで、人は落ち着いて動けるんですよね。」(三沢さん)

私の暮らしの中にもあった、”いつも”と”もしも”

この本の中で語られていた、私の防災に対する捉え方を変えてくれた視点があります。
それは、例えば子どもの頃に親から言われていたような「玄関で靴を揃える」という何気ない習慣や、「家を整え、動きやすい生活導線を作っておく」という毎日の繰り返しのようなことも、防災につながる行動なのだという考えです。

私は毎朝、玄関をさっと片付け掃除すると気持ちが落ち着くので、習慣にしています。
それを聞いた三沢さんに「それも立派な防災ですよ」と言われたことは、自分も小さな「宝探し」ができた瞬間でもあり、なんだかとても嬉しくなりました。
そして、私の中の「防災」は、ようやく現実の暮らしとつながり始めました。

三沢真実さん宅のローリングストックの様子
私が真似したい!と思った、三沢さんのおうちのローリングストック。普段も食べているものが並んでいます。収納しているのは昔ながらの奥行きある押し入れ。DIYで可動棚を設置されたそう

もし今の準備に不安を感じている方がいたら、この本の巻末にある「防災レベルを知ろう」というワークもオススメです。
今の自分に必要なことを考える指針となり、「自分の暮らしにあった防災」と向き合う大切さを改めて実感できる内容で、今後も定期的にチェックしたいと思っています。

自分の心地良さを大切にすることが、「続く防災」に繋がっていく

「本に書いたことは、あくまでヒント。
 それぞれが、自分にとって心地良い方法――好き、便利、気分が上がる、そんな視点で見つけたやり方こそが、無理なく続けられる防災だと思っています」
(三沢さん)

本を読んでから、私自身も「次にこれをやってみたい」と思うことが次々と浮かんでいます。
手始めに、クローゼットにしまい込んでいたランタンを出して、すぐ手に取れる場所に置いてみました。
そして今は、わざわざ部屋に出しておきたくなるようなソーラー充電式のライトを探したり、地域で定期的に開催される防災イベントへの参加方法を調べたりしています。

三沢さん愛用のソーラー充電式ライト
この本で紹介されていたライトが可愛らしかったためネットで探し始めたところ、素敵なデザインのソーラー充電式ライトがたくさんありました!

最後に、三沢さんはこんな言葉もかけてくれました。

「忙しい毎日の中で、防災の記事を最後まで読むだけでも、すごいこと。まずはここまで目を通したご自身を褒めてあげて欲しいです(笑)
 『防災』というと、不安や恐ろしさ、もしくはきちんとした備えをしなきゃというイメージを持ちやすいですよね。 でも、楽しむ中から生まれるものも、絶対にあると思っています。
 前向きな気持ちで取り組んだことは、もしもの時に『楽しい記憶』と一緒によみがえって、きっと自分の支えになってくれるはずです」
(三沢さん)

「防災のために頑張る」のではなく、「暮らしが少し心地良くなる」選択を重ねていくこと。
その延長線上に、結果として”もしも”への備えがある。

必要なことはきちんと調べ、定期的に見直しながらも、「これなら楽しめそう」「続けられそう」という視点も大切にしていきたい――そう思えたことが、私にとっては大きな一歩でした。
そしてそんな考え方を知ったことで、これまで不安の延長線上にしかなかった「防災」が、自分の暮らしと共にあり、明るく未来を照らす存在に少しずつ変化しています。

完璧でなくてもいい。
今の暮らしの中で、できることを少しずつ。
その積み重ねが、きっとこれからの安心につながっていくのだと思います。

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い2022年からの2年間をブラジル、アルゼンチンで過ごす。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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