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折田千鶴子

映画ライター/映画評論家の折田千鶴子さんが確かな審美眼でセレクト!

【2025年公開映画 】本当に面白かったのはコレだ!“偏愛気味” ベスト10【洋画編】

  • 折田千鶴子

2025.12.20

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早いもので、2025年も残すところあとわずか。振り返ってみると、今年も面白い映画がごまんと公開されました。とりわけ今年は豪華な――いつも何年か待ちのハリウッド超大作シリーズ『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』や『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の公開年だったり、ハリウッドの今やベテラン俳優の2トップ、レオとブラピ(レオナルド・ディカプリオ&ブラッド・ピット)主演作がそれぞれあったりと、かなり豪華なラインナップだったように思えます。

とはいえ日本における近年の西高東低ならぬ「東高西低」人気は今年も増し増しで続き、日本映画の大ヒット作が映画業界に旋風を巻き起こし、すべての話題をかっさらっていった印象が強く残ります。世界にはバリエーションに富んだ優れた作品や面白い作品が挙げきれないほどあるので、そんな状況は嬉しくもありつつ、ちょっと残念でもあったりします。

そこで今回は、実感として本当に面白いと唸らされた見逃し厳禁の<洋画ベスト10(アジア映画除き)を、少々偏愛気味に勝手に選んでみました。洋画の中では何と言っても大きな話題は、米アカデミー賞で作品賞・監督賞ほかを受賞した『ANORA アノーラ』でしょうか。インディーズ・ムービーが超大作を凌いでの受賞に大喝采が起きました。他にも同賞最有力候補と目されていた『ブルータリスト』など、強力な秀作がズラリ。そんな状況下でも個人的に「コレしかない!」と断言できるのが、観終えた瞬間に感動で全身を貫かれた圧倒的な傑作と断言したい第1位のこの作品です!

2025 Best Movie #

1

あまりに深い感銘に目が醒めるような感覚

『教皇選挙』

(アメリカ・イギリス/120分/配給:キノフィルムズ)

教皇選挙
監督:エドワード・ベルガー 『西部戦線異状なし』
出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニほか
©2024 Conclave Distribution, LLC.

まさに格の違いを見せつけられ、目が醒めるような感覚を覚えた必見作。カトリック教会の最高指導者ローマ教皇が急逝、次期教皇を選出するための“選挙=コンクラーベ”をめぐる知的なミステリー。詳細はLEE本誌記事で。

観終えた後、暫し言葉を失い、あまりの深い感銘に打ちのめされるような状態になってしまいました。実は教皇選挙を題材にした作品はこれまでも少なからず存在し、面白い作品も多々ありましたが、やっぱり本作は別格。映像に漲る格調高さや品、芸術性を兼ね備えつつ、誰もが興味を禁じ得ない宗教界の最高権力者たちの間で繰り広げられるドロドロとした人間臭い権力争いという、興味深さとハラハラを孕(はら)んだ展開が続きます。

理念と現実、どんな人が真の教皇になるべきかなど、私たちとは別世界で繰り広げられる物語なのに、観ながら鼓動を速めずにいられないほどリアルに迫って来るのです。さらにラストに仕込まれた最後の一捻りの驚きも含めて、一気見必至の面白さです。

映画の公開直前に現実世界でもローマ教皇が急逝し、それも更なる大きな話題を呼び、この手の宗教映画では異例とも言える大ヒットを記録しました。第97回アカデミー賞で作品賞・主演男優賞、助演女優賞、脚色賞ほか計8部門でノミネートされ、うち脚色賞を受賞しました。

2025 Best Movie #

2

鋭い社会批判をはらんだサバイバル・ホラー

『罪人たち』

(アメリカ/137分/配給:ワーナー・ブラザーズ映画)

監督:ライアン・クーグラー『フルートベール駅で』『ブラックパンサー』シリーズ
出演:マイケル・B・ジョーダン、ヘイリー・スタインフェルド、ジャック・オコンネル、デルロイ・リンドーほか

禁酒法時代の30年代アメリカ南部を舞台に、酒と音楽を売りにしたダンスホールを開いた黒人兄弟の前に立ちはだかる、予期せぬ敵との闘いを描くサバイバル・ホラー。

LEEでは滅多に紹介することのないホラー系の作品ですが、これがどうして度肝を抜く面白さです。まさに今年一番、頭をガツンとヤラれて痺れた、驚きと衝撃と興奮に満ちた異色作です。徹頭徹尾、物語がどこへ向かっていくのか分からない、ヒヤヒヤ&ゾクゾクの連続です。 

ホラーというジャンル映画はB級の装いをしながら、その実、社会批判や世相を映し込み、“今”の私たちが生きる世界の現実にも繋がってくる、第一級の“社会派映画”に成り得ることを実感・納得させられます。

そして本作の最大の魅力は、なんと言っても全篇を彩る音楽。ブルース、ゴスペル、ジャズからケルト(アイリッシュ)音楽も入り込んで、魂そのものが響き渡るリズムや歌声が下っ腹にドンと響いて思わず高揚・興奮させられます。と同時に、それが物語と直接的に響き合って、音楽の持つ恐ろしいほどの“魔力”とも言うべき力を体感させるのです。まさに鳥肌が立つ、驚きに満ちた魅惑の一作。

『フルートベール駅で』や『ブラックパンサー』シリーズで監督とタッグを組んで来た、マイケル・B・ジョーダンが1人2役を担って兄弟を演じているのも必見です。現在、ゴールデングローブ賞(2026年)にもノミネートされ、これからの賞レースを賑わせそう。そちらも是非、注目を!

2025 Best Movie #

3

血が逆流しそうなほどハラハラ!女子選手の不屈の闘い

『TATAMI』

(アメリカ・ジョージア/103分/配給:ミモザフィルムズ)

『TATAMI』
監督:ガイ・ナッティブ、ザーラ・アミール
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミールほか
©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

息をするのも忘れる没入感、一気見必至の衝撃作にして社会派ドラマです。女子世界柔道選手権を舞台に、スポーツ界への政治介入、イラン社会における女性に対するいびつな抑圧など、理不尽な力に対するアスリートたちの不屈の戦いが描かれます。なんと実話ベースというから驚きです。(詳細はLEE記事で)

イラン代表の女子選手が勝ち進む中、敵対するイスラエルの選手との対戦を避けるよう、棄権を強要される前半から一気に鼓動がバクバク激走しはじます。イラン本国に残して来た愛する家族――夫や幼い息子、年老いた親などの運命も絡めながら、彼女の決断と試合の行方から目が離せません。シンプルな音楽、和太鼓のリズムがただならぬ空気をさらに生み出し、一瞬たりとも目が離せません。たった103分という尺もいいですよね! 白黒映画に苦手意識がある方もいるかと思いますが、本作はそのモノクロームの映像が醸す奥行や雰囲気、その質感にも引き込まれるハズです。

「何と」と言うべきか案の定というべきか、本国イランでは上映禁止。さらに製作に参加したイラン出身者は全員亡命という、まさに命懸けで作られた作品です。映画史上初めてイスラエルとイランにルーツをもつクリエイターが協働し、第80回ヴェネツィア国際映画祭でブライアン賞を受賞。第36回東京国際映画祭で審査委員特別賞&最優秀女優賞(ザーラ・アミール)をW受賞しました。

2025 Beest Moviw #

4

後からじわじわ染みてくるロードムービー

『リアル・ペイン ~心の旅~』

(アメリカ/90分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)

『リアル・ペイン ~心の旅』
監督:ジェシー・アイゼンバーグ『僕らの世界が交わるまで』
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、キーラン・カルキン、ウィル・シャープ、ジェニファー・グレイほか
©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

少し時間が経った後からジワジワ来る、噛めば噛むほど旨味が増してくる胸に染みる系の感動作。ちょっと疎遠になっていたユダヤ人の従兄弟同士が、大好きな亡き祖母の故郷ポーランドを訪れるロードムービー。なんと監督は、『ソーシャル・ネットワーク』『グランド・イリュージョン』などの個性派俳優のジェシー・アイゼンバーグです。

主人公の従兄弟を演じるのが、監督のジェシー・アイゼンバーグと、キーラン・カルキン(マコーレ・カルキンの弟なので顔が似ています)。<真面目で神経質>と<自由奔放で無軌道>と、2人はまるで正反対。それが随所で効いていて、笑えるやら共感するやら。ジェシー演じる真面目青年が、キーラン演じる自由過ぎる従弟に振り回され、迷惑を掛けられるたびに呆れたり嫌悪したりしつつ、同時に嫉妬も覚えてしまう(キーランがピアノを弾くシーンが忘れ難い!)という複雑な心境も、なんかとっても分かるのです。

「祖母の故郷ポーランドを訪ねる旅」とは、ご想像どおり、祖母が体験したホロコーストを改めて知る旅でもあるのです。2人それぞれ別の形で表出してくる葛藤や苦しみ、日頃感じる生きづらさなどが絡み合いながら旅は続いていきます。

第97回アカデミー賞で脚本賞と助演男優賞にノミネート、キーラン・カルキンが助演男優賞受賞。第82回ゴールデングローブ賞でも助演男優賞(キーラン)を受賞。

2025 Best Movie#

5

ブラジルの黒歴史を描きながら瑞々しい感性が随所に!

『アイム・スティル・ヒア』

(ブラジル・フランス/137分/配給:クロックワークス)

監督:ウォルター・サレス『セントラル・ステーション』『モーターサイクル・ダイアリーズ』
出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ

待ちに待ったウォルター・サレスの12年ぶりの作品は、この題材にして、やはりサレスならではの透明感や瑞々しさに満ちていました。  

70年代、軍事独裁政権下のブラジルで実際に起きた “存在ごと消された多数の行方不明者” という歴史的事件が、ある家族の視線で描き出されます。序盤に映し出される一家の暮らし――陽光に溢れた浜辺の邸宅での様子が、羨望を誘うくらいに楽しく優雅に感じられるだけに、突然の転調――夫/父親がいきなり軍部に連れ去られ、そのまま行方不明に、という展開が衝撃です。

ただし本作は、そんな軍部の蛮行も、残された家族の悲嘆も、必要以上に大袈裟に映すことはしません。それらは、むしろ最小限に留められ、不安な中でも家族が寄り添って結束し、日々の生活を送る様子が映し出されます。時に、家族が笑い合う姿も。それなのに、いや、だからこそか家族全員の胸には、常に夫/父親の不在が大きく居座っていることがひしひしと伝わってくるのです。それが素晴らしい。

とりわけ妻/母が、何年経とうとも夫の無事を信じ、決して諦めず、なかったことにはさせないと静かに行動し続ける姿が胸を打ちます。

彼女の静かな闘いが遂に過去の歴史を認めさせることに繋がった、サレス監督の知人家族の実話がベースの物語です。ヴェネツィア国際映画祭で脚本賞、米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞(作品賞、主演女優賞と3部門でノミネート)。ゴールデングローブ賞では見事、主演女優賞を受賞。

2025 Best Movie #

6

77分に面白さ凝縮。他人事でない事態に没入感MAX!

『入国審査』

(スペイン/77分/配給:松竹)

『入国審査』
監督:アレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケス
出演:アルベルト・アンマンがディエゴ、ブルーナ・クッシ
©2022 ZABRISKIE FILMS SL, BASQUE FILM SERVICES SL, SYGNATIA SL, UPON ENTRY AIE

今や誰もが他人事では済まされない、まさか、まさかの事態に息も絶え絶え! 没入感MAXで事の成り行きを見守ることに! アメリカに移住するためNYの空港に降り立ったカップルが、予想外の疑いを掛けられて尋問される、入国審査の模様を映し出した心理スリラーです。

ベネズエラ出身の2人の共同監督の実体験をもとに、わずか17日で撮り上げたというから驚きです。異例の低予算にもかかわらず、本国スペインで大ヒットを記録しました。

LEE本誌でも書いたとおり、2人が尋問される様子を見ている私たちが、自分たちの中にある偏見や思い込みを逆に突かれるような秀逸さです。たった数時間以内に2人の過去や交友関係の調べがつくというのも、現代の怖さを見せつけられます。その中から、いかにも“怪しいこと”やカップルの相手には秘密にしていたことを尋問口調で問いただされたら、誰でも驚いて思わず挙動不審になってしまうかもしれない。それでも、「怪しい。テロリストなのか?」と安易に疑いたくなってしまうのです。人間って愚か……。

たった77分という尺の中に、面白さが凝縮されているのもスゴイ。そして今や、誰もが他人事と高を括っていられない状況だからこそ、怖さが自分事として感じられると思います。これまた没入感Maxの必見作です。

2025 Best Movie #

7

暴君化していく父/夫との闘いと家族崩壊そして連帯

『聖なるイチジクの種』

(ドイツ・フランス・イラン/167分/配給:ギャガ)

『聖なるイチジクの種』
監督:モハマド・ラスロフ 『悪は存在せず』
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキほか
©Films Boutique

良き夫/父が、次第に暴君に……。息を詰めて見守る中、アッと驚くラストに絶句!『TATAMI』と同様に、イラン本国で上映禁止になったそうです。監督は逮捕される危険をかいくぐって国外に脱出し、カンヌ国際映画祭にたどり着いたことでも話題になりました。なるほど本作が描き出す“いびつな家父長制の支配的な家族空間”は、そのまま国家の姿に重ねずにはいられません。そんな、イランの内実を炙り出した衝撃作です。(詳細レビューは本誌記事で)

家庭内で消えた一丁の銃(国家から与えられたため失くしたら大変!)をめぐり、家族が互いに疑心暗鬼に。それまでは家族仲が良かったであろうこと、良き夫・良き父であっただろうことがうかがえるだけに、段々と暴君化していく夫/父の急激な変化に驚かずにいられません。そんな彼を支配しているのもまた、忠誠を誓って来た国家への“恐怖”にほかならないのです。そうして益々力や脅しで家族を支配しようと、彼の行動は常軌を逸していきます。でも皮肉なことに、そんな姿を目の当たりにした長女も次女はもちろんのこと、夫に従順だった妻までもが、それまで強いられて来た力による理不尽に気づいてしまうのです。

まずは難しいことを考えず、身近な家族ドラマとして観ることをおススメします。兎にも角にも心臓バクバクの、あっという間の167分。その先の衝撃のラストを見届けてください。

2025 Best Movie #

8

尊厳死をアルモドバルが描くとこうなる秀作!

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』

(スペイン/107分/配給:ワーナー・ブラザーズ映画)

『リアル・ペイン ~心の旅~
監督:ペドロ・アルモドバル『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥー・ハー』
出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニボラほか
©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. ©El Deseo. Photo by Iglesias Más.

毎年、心待ちにしてしまう大好きなアルモドバル監督。一時期、マンネリ化してきたかなぁなんて思った短期間がありましたが、今や益々意欲的に色んなテーマに挑んでいる充実と余裕、彼の円熟味をたっぷり感じさせられる逸品です。

かつての親友が重い病に侵されていると知った女性が、その親友から安楽死を見守ってくれるように頼まれて……。暫く疎遠にしてきた2人の、再会してからのかけがえのない数日間が描かれます。

どんな風に“最期の時を過ごすのか”、“親友をどう見送るか(見送って欲しいか)”という、その方法や舞台設定一つ一つに「なるほど」と思わずにいられません。一見、重そうなテーマに感じられますが、そこはアルモドバル。テーマは深くして、親密かつなぜか軽やかな心くすぐる語り口です。世界は美しさに満ちている……なんて思いが去来します。お涙頂戴に陥らないその語り口、アルモドバルらしいビビッドな色彩設計、映像美、画作りにも魅せられます。

と同時に親友の願いか、倫理観か。終始、自分ならどうするだろうかと問わずにいられません。病を抱える女性にティルダ・スウィントン、彼女から安楽死の見守りを頼まれる女性にジュリアン・ムーアという2人の名女優が本当に素晴らしいです。ベネツィア国際映画祭 金獅子賞受賞。

2025 Best Movie #

9

全ジャンル盛り盛りで満腹感ハンパない超大作

『ワン・バトル・アフター・アナザー』

(アメリカ/162分/配給:ワーナー・ブラザーズ映画)

監督:ポール・トーマス・アンダーソン 『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
出演:レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホールほか

現在、賞レースのトップを快走している、PTAことポール・トーマス・アンダーソンによる、さすがと唸らされる超力作。来年度の米アカデミー賞に向け頭ひとつ抜き出た本命と目されています。予測不能のめくるめく展開に嫌でも食らいつかせる吸引力とスピード感がハンパなく、どっぷりハマること必至です!

過激な革命グループの一員だった主人公(ディカプリオ)が、娘の誕生を機に隠居し、名を変え、身を隠して暮らして16年。遂に、彼らを取り逃がしたことを恨み続ける軍の指揮官(ペン)が父娘の居場所を突き止め……。

ここから怒涛の追跡劇に突入するのですが、とりわけ終盤の、道路がぐにゃっと見えて何度も宙に浮きそうになるカーチェイスシーンは、まさに白眉! 一方で、レオが演じる元革命家は今やすっかり腑抜けたオヤジになっていて(レオが最高!)、そんなオヤジの言うことなんてティーンの娘が信じるわけない……という、「お願い、どうでもいいから早く逃げて!!」というハラハラの中に、父娘の関係性の変化やユーモアなど、全方向から観飽きません。一方で、彼らを執拗に追い回すかなり変態な軍人を、かのショーン・ペンが演じているからもう、悲鳴を上げずにいられません。また大した役ではないのに、ベニチオ・デル・トロもいい味で!

アクション、家族ドラマ、社会風刺、悲喜劇もごちゃまぜで、もはや全ジャンル網羅の本作は、ラストまで読めない「これぞ映画!」を堪能させてくれます。

2025 best Movie #

10

アドレナリン大噴出! ついでに萌えキュンも。

『F1/エフワン』

(アメリカ/155分/配給:ワーナー・ブラザーズ映画)

監督:ジョセフ・コシンスキー 『トロン:レガシー』『トップガン マーヴェリック』
出演:ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデムほか

最後にハリウッド大作を2本入れました! 色々と思い返しながら選んでいると、やっぱり超大作は満腹感がハンパないなぁと思わされるものがあります。個人的にはレオよりブラピ派ですが、そうでなくとも本作のブラピは本当にカッコ良かった! この年にしてキュンキュンさせるなんて、やっぱり腐ってもブラピです(腐ってませんが)。

カー・レース映画は興味ないという方もいるかもしれませんが、こと本作はそんな女性にこそ楽しんで欲しい胸キュン映画。しかも実際にレース・シーンをブラピ自身が運転して撮影していた、なんて聞くと余計に黄色い歓声を上げずにはいられません。

そんなブラピが演じるのは、元花形レーサーです。若かりし日にF1のレース中に重傷を負い、そこでキャリアは終了。それでも引退せず、各地を転々としてレースに出場し続けています。そんな彼に、現在F1で低迷しているチームのオーナーで元チームメイトから、“最後の賭け”として声が掛かり、再びF1レースに参戦することになるのです。

現在のチームを率いる若きレーサーとの確執と信頼(2人の関係や信頼感がレースに反映されていく展開も熱くて泣ける!)や、そのチームを技術的に支えるディレクターの女性と芽生える仄かな恋など、物語的にも見どころ満載。技術系の部署のチーフが女性というのも、今の時代を感じさせます。さらにメインとなるレース・シーンは臨場感がハンパなく、これはもう誰が観てもアドレナリンが噴出するハズ。ブラピの硬軟の魅力(カッケ~と唸る&ウットリ~な溜息と)を満喫できて、満足しきりの必見作です。

頑張って10本選んではみたけれど……

もう3~10位は、順位を何度も入れ替えては、また入れ替えて…を繰り返したほど、甲乙つけがたい面白さです。いえ、その前の段階で、悩みに悩んだ『ジュリーは沈黙したままで』『エミリア・ペレス』『愛はステロイド』『Playground/校庭』『ドマーニ/愛のことづて』『Flow』(アニメーション)、『蝶の渡り』『あの歌を憶えている』『秋が来るとき』『カーテンコールの灯』『顔を捨てた男』など、どれも捨てがたい作品ばかりで本当に悩みました。『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』も大好きでした!

そうして選んだ作品を観ていてフと気づいたのが、現在、身売り話でニュースを賑わせているワーナー・ブラザーズ映画が10本中4本も入っているということ。これには思わず改めて驚きました。どんな業界でも栄枯盛衰。色んな事情が絡み合い、それもまた仕方のないことなのでしょうが、寂しさを覚えずにいられません。

さて、次回は日本映画を含めた<アジア圏映画のベスト10>をお送りいたします。

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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