LIFE

素敵なあの人の「ダウンサイジング」と、その後の暮らし

新居への引っ越しを機に

洋服、収納などを約半分に!「物を減らしたら人生の密度が濃くなりました」フリーランスディレクター石岡真実さん

  • @homeLEE 私らしく建てる、心地よく暮らす

2025.06.20

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不要なものを減らしたから見つかった、本当に大切なこと

選ぶ目のある人の【ダウンサイジング後の暮らし】フリーランスディレクター石岡真実さん

もの選びのセンスも素敵な人は、何を手放し、どんなアイテムを残したのか——。フリーランスディレクター石岡真実さんの〝ものとの向き合い方〞の変化を伺いました。

フリーランスディレクター石岡真実さん

石岡真実さん

フリーランスディレクター

家族構成:3人(夫、長男9歳)間取り:3LDK 広さ:約100㎡

いしおか・まみ●アパレルやライフスタイルブランドとのコラボアイテムを手がけたり、料理のレシピ撮影など、幅広く活躍。著書『母ちゃん、ていねい たまにガサツ』(双葉社)。

洋服、収納グッズなどを約半分に減

ものを手放すほど自分の好みに気づき必要なものを慎重に選べるように。人生の密度が濃くなりました

フリーランスディレクター石岡真実さんのキッチン
石岡さんが一日の中で最も長い時間を過ごすアイランドキッチン。天板の下はオープン棚にして調理道具や食器類が見えるように収納。「パンパンになったらすぐに見直しています」

コロナ禍で暮らしに興味がわき、本当の“好き”を追求

20代の頃は若者に人気のショップでアパレルの販売。プレス業務にも携わり、長年ファッションのトレンドを牽引し、持ち前の明るい性格とガッツで、常連のお客さんもついて順風満帆でした。一方で家の中はシーズンごとに増える新作服や友人の展示会でオーダーした服があふれんばかり。足の踏み場もない状態でした。

「あの頃は仕事に遊びに、外出してばかり。自宅にいる時間が少なかったんです。家というものにこだわりもなくて、散らかっていることを気にすることがなかった。むしろ“好きなものがぎゅっと集まっているこの空間が私らしい”と感じていて、ものの多さが居心地のよさにつながっていました」 

その後、結婚や出産をきっかけに、2回引っ越し。その都度持ち物を見直すものの、仕事や育児が忙しい時期でもあり、家の中は散らかるばかり。気がつくと気が荒くなっている……、そんな日々が続いていたそう。コロナ禍に突入したのは、ちょうどそんな頃。

「家にいる時間がぐっと増えて、初めてインテリアに興味がわいたんです。それまでは食器も家具も、必要に迫られて揃えていたものばかり。でも、作家ものの器の風合いやヴィンテージ家具のかっこよさに惹かれて、あれこれと長い時間をかけては吟味し、一つ一つ手に入れていったんです。それと同時に、今の自分にはなじまない服、料理を盛りつけても気分がのらない器、もう使わなくなった子どものおもちゃ……、必要がないものをごっそり手放しました。気がつくと家の中のあちこちに少しずつ余白が生まれていきました」 

フリーランスディレクター石岡真実さん
以前は食事もメイクも立ちっぱなしで落ち着いて座ることがなかったそう。「ものが減ってから、時間を効率よく使えるようになり、座って考えたり書いたりする時間が増えました」

その頃、自分らしさについて深く考えた時間が、今の暮らしの原点になっていると言います。

「アパレルの世界では毎シーズン、トレンドを重視した新しい服が出てきます。その中で自分の好きな服を探すことはしてきたけれど、長い目で見て本当に自分が求めているものはなんだろう?って。その延長で家の中も、使い続けるほど愛着がわくようなものを大事にしたい、すっきりしている空間がいいなと。考えることで自分の“好き”が明確になっていきました」 

フリーランスディレクター石岡真実さんのリビングルーム
大きな窓から光が降り注ぐ、吹き抜けのある広々したリビング。「ここは主に夫や息子の空間。このエリアにあるものの管理は彼らに任せつつ、量が増えたら相談しています」

その後、東京のマンションを離れ、夫の実家のある埼玉県に新居を建てることが決まります。何が自分たちにとって必要? どんな暮らしがしたい? コロナ禍に自問自答してきたことを一つ一つ形にしながら、約2年かけて新居が完成。90ℓのゴミ袋6個分の服、衣装ケース20個以上を手放した末に引っ越しをしました。

石岡真実さん



ものを減らしたことで「準備をする習慣」ができた

デニムパンツの棚
デニムパンツは、石岡さんにとっての偏愛服。「多いときは今の2〜3倍は持っていました。少しずつ自分に合わなくなったものを手放し、先日のフリマでさらに10本を売りました。残っているのは、はき心地がよくてシンプルなラインのもの」

家を建てた今、すっきりと片づいている状態こそが、心の穏やかさにつながっていると言います。

「昔はものが散らかっていることに無意識だったけれど、思い返せばそれが原因でイライラして家族の空気が悪くなることも多かった。一つ一つのものに対しても愛着が薄かった分、足りなければ買ってくればいい、という感覚でした」 

今の住まいは最寄駅から少し離れた住宅地。ふらっと気軽に立ち寄れる飲食店や雑貨店は近くにありません。以前は数分歩けばコンビニがありましたが、新しい生活では、それもありません。

「今は生活すべて、何をするにも“準備”が大事。買うもの、やること、スケジュール、全部忘れないようにいつでもメモを取っています。準備をする習慣が身につくと、自然と使っていないもの、不要なものが目に入ってくるんですよ。食材の買い出しリストを作っているときにこの調味料は期限切れになっているとか、人を招く支度中にこの器は出番がないから手放そうかな、とか。基本はガサツなタイプですが(笑)、段取りを考えて準備をして、ものの管理ができるようになってからは“私、ちゃんと大人になれてるな”と自己満足したりして。いらないものを家の中に置いたままにせず、好きなものだけを残したことで、今まで以上に人生の密度が上がったと思います」 

今は月に1〜2回、家じゅうを見渡す日を設けて、不要なものを間引くのが習慣に。洗濯室やキッチンなどのエリアを決めて片づけるときもあれば、今回は引き出し1段だけというときも。コロナ禍や新居への引っ越しを通じて、いる・いらないの判断も迷わなくなりました。そうした経験を経た今は、どんなものを大切に、手元に残しているのでしょうか。

「見ているだけ、触れているだけ、香りをかぐだけで、心がすっと落ち着くもの。それから心に残るストーリーが背景にあるものは手放したくないですね。特に台所道具は使う頻度が高いので、時間がたつほど、愛着が増しています」 

石岡真実さん
ボールペンがぎゅうぎゅうに詰まっていた文具用の引き出し。「使えるペンを束にして、夫の職場に持っていってもらいました。気がつくと増える文具入れは、定期的に見直します」

それでも、毎日きちんと空間を整えて、丁寧な暮らしができているわけではないと石岡さん。

「今でも仕事が忙しくなると、家の中がぐちゃぐちゃになる日もあります。でも、ちゃんと片づけができない日があってもいいと思うんです。いざというとき、片づけたいと思うときにぱっとリセットできれば十分。そしてそれが叶うのは、不要なものがなく、大事なものを元に戻せる場所があるからこそ。昔の自分が見たら驚くと思いますが、今はさっと片づけやすい家で、料理をする時間が幸せです」

石岡真実さん

ダウンサイジング後に石岡さんが大切にしているもの

服、食器、収納用品と、これまで多くのものを手放してきた中でこれは使い続けていたいと、今大事にしているものを教えてもらいました。

石岡さんが残したものの基準

・見るだけ、触れているだけで心がすっと落ち着くもの
・大切に使い続けたいと感じさせるストーリーが背景にあるもの

空間をいきいきと盛り上げる個性的な観葉植物

空間をいきいきと盛り上げる個性的な観葉植物

前の家では何度となく枯らしてしまっていた観葉植物。

「手間がかかるし、スペースも取るので手放したら生活が楽になるかも。でもやっぱりグリーンを育てるのは楽しくて、心の穏やかさにもつながります。特に葉がユニークな形をしているものに惹かれますね」

生活リズムを整えるために毎日たいているお香

生活リズムを整えるために毎日たいているお香

ものを買う前に「本当に必要?」と慎重に検討するようになった石岡さんですが、お香だけは別。

「仕事を始める前など、心を落ち着けたいときの必需品で、唯一昔から続けている習慣です。ものを減らしても、お香は引き出しにいっぱいあり、今でもこれだけは迷わず買ってOK。ただ引き出し1段分からは、はみ出さないようにしています」

一目惚れをした、食材をおいしく仕上げる2つの土鍋

土鍋

器や台所道具に興味を持つきっかけになった「本田屋食器店」の土鍋(左)。

「取っ手のない珍しい形が素敵で、手に入れるときに、作り手の方に直接教わった料理を何度も作っています。白い土鍋(右)は内田可織さんのもの。内田さんは私が陶芸を習っていた先生で、美しいフォルムがお人柄そのもの。この土鍋で料理をするだけで幸せな気持ちに」

一つで多用途に使える趣のあるトレイ

一つで多用途に使える趣のあるトレイ

お菓子をのせて出したり、アクセサリーをディスプレイしたり、場所も用途もさまざまに使えるトレイは、頻繁に活用しているアイテム。特にお気に入りなのが、木工作家である盛永省治さんのもの。

「木目や虫食いなど自然の状態を生かして削り出された美しい佇まい。見ているだけで心がウキウキして、元気に過ごす活力にもなっています」

手放すことで、ライフスタイルにも変化が

石岡真実さんが、ダウンサイジング後に新しく取り入れたこと

ものを減らすことでできた空間と心の余白には、新しい風が吹くもの。今回取材させていただいた石岡真実さんも、新しい習慣や挑戦を始めていました。

ストレッチをして、リラックスできるように

石岡真実さん

石岡真実さん ストレッチをしている

「以前は家にいる間、ずっとバタバタと慌ただしく、気持ちに余裕がありませんでした」。

ものとのつき合い方が変わってからは〝準備をする〞という習慣ができ、次第に時間が作れるように。

「最近は隙間時間を見つけてはストレッチをするように心がけています。自分で心身を整えるコントロールが上手になりました」

石岡真実さん

Staff Credit

撮影/田村昌裕(FREAKS) 取材・原文/田中理恵

こちらは2025年7月号(6/6発売)「素敵なあの人の『ダウンサイジング』と、その後の暮らし」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(2025年7月号現在)です。

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