【今月おすすめの本】氷室冴子『マイ・ディア 親愛なる物語』他3編

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石井絵里さん

ライター

わが家の猫2匹は朝4時台が一番元気。寝かせて～と思いつつ、締め切り日は心強い目覚まし役に！

『マイ・ディア 親愛なる物語』
氷室冴子　￥990／河出書房新社

レジェンド作家の読書エッセイが復刊。 少女小説への愛が止まらない！

’08年に51歳の若さで逝去された、小説家の氷室冴子さん。平安時代を舞台にしたラブコメ『なんて素敵にジャパネスク』を愛読して育った人も多いはず。私も数々の物語はもちろん、冴子先生（あえてこう呼ばせていただく）の書くエッセイが大好きで。読破したつもり、だったのですが。このたび、未読の書を発見。あたしったらなんてこと？　いや、このテキトーさが大人になり、旧作を新作気分で読める幸せを授けてくれたのだ。と思うと、大雑把ってのも悪くないんじゃないのお？と、思わず文体も似せたくなるうれしさ。少女小説をテーマにしたこの読書エッセイは、1990年の著作の復刊。今月はあふれる思いに文字数が足りるか、不安だらけ。やまみさん、COMICの文字数を、分けていただけないかなあ〜。いやだあたし、図々しい上に余計なことばかり書いて、自分の首絞めてる！

題材は『赤毛のアン』『あしながおじさん』『少女パレアナ』など、主に19世紀末〜20世紀初めに書かれた海外翻訳小説。女性の職業作家が生まれ始めた時代に、女性に向けて書かれたこれらの作品たちは、長らく「家庭小説」と呼ばれていたそう。冴子先生は「その呼び名はしっくりこない」と、「マイ・ディア（親愛なる物語）」と命名。主人公のキャラ設定に疑問を呈したり、作者の人生から作品を解釈したり。「あたし」という一人称を使いながら、読者とおしゃべりするように、持論を展開していきます。

海外の古い少女小説にははずせない“食べ物と服”への考察も。いろんな作品に登場するも謎だった、洋服の布地・モスリンとポプリンの違いがわかりました！　パンやジャム、コンポートなどの紹介にも心が華やぎます。そして何よりも、北海道に生まれ育った冴子先生の、幼少期の衣食住にまつわる体験、思春期の思い出などが、物語さながらに豊かな内容なのでした。少女小説に選ばれし方だったのだなあ。本著を含め、多くの名作を残された冴子先生は、私が何歳になろうとも、“腹心の友”です！

『噓つきは同じ顔をしている』
和田正雪　￥1870／KADOKAWA

弱小出版社に勤める編集者の山城龍彦は、社長命令で事故物件マンションへ住むことに。その建物を軸に、息子が行方不明になった父親、オカルトユーチューバーの大学生、TV番組の霊能者などの思惑が絡み合う。山城と、彼と行動をともにする学生バイト・小野寺はるかが辿り着いた真相は？　思わぬ展開の連続で、ページをめくる手が止まらなくなるホラーミステリー。

『午前三時の化粧水』
爪 切男　￥1650／集英社

40歳を過ぎた体重120キロの作家。昼夜逆転のドカ食い生活で近所の子どもたちからは「太っちょゴブリン」と呼ばれる始末。そんな彼が深夜のドン・キホーテで運命の化粧水に出会い、生活が激変するほどに美容と健康に目覚めていく過程を描いた共感必至エッセイ。美容が自分の心と体を労わる「セルフケア」であり、学びであるという彼の発見にあらためてハッとさせられる。

『決めることに疲れない　最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』
堀田秀吾　￥1650／新潮社

言語やコミュニケーションなどの研究者である著者が、世界の最先端の研究結果を例に、「決め方上手」になる考え方や習慣を伝授。〝おでこを軽くたたく〞など日常の中ですぐできるアクションはもちろん、決定や選択を間違えたと思った場合の、気持ちの上げ方も解説。脳疲労の解消に役に立つ知恵がたくさん。