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映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

風間俊介さんとMEGUMIさんが「セックスレスの悩み」に超実践的アドバイス!【『劇場版 それでも俺は、妻としたい』爆笑対談】 

  • 折田千鶴子

2025.05.28

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大ヒットドラマに共感の声が続々!

ドラマのTVer総再生数1,500万突破! 最終回はTVer総合ランキング・ドラマ部門1位を獲得した大ヒットドラマを元にした『劇場版 それでも俺は、妻としたい』が公開に。ドラマの未公開シーンを追加して、劇場公開用に編集したディレクターズカット版です。

足立紳監督が2019年に発表した同名小説(ほぼ“自伝”)をもとに、どこまでいってもダメダメな夫・豪太と、それを舌鋒鋭く罵倒するデキる鬼嫁・チカのリアルな夫婦“性”活に、噴き出すやら、呆れるやら(←豪太に)、感心するやら(←チカに)。 でも、そんな豪太が愛すべきなのも、鬼嫁チカが強い共感を覚えさせるのも、演じた風間俊介さんとMEGUMIさんが、絶妙に醸す人間味ゆえ。果たしてどんな撮影現場だったのか、お2人に振り返っていただきました!

右:風間俊介 
1983年6月17日、東京都出身。1998年にドラマ初出演。「3年B組金八先生」(99)で高く評価される。近年の主な出演作に舞台『モンスター』(24)、映画『先生の白い嘘』(24)、ドラマ「初恋、ざらり」(23)、放送中の大河ドラマ「べらぼう」(25)など。朝の情報番組「ZIP!」の月曜パーソナリティ、「フクチッチ」の司会、パラリンピック番組解説なども務める。映画『ふつうの子ども』(25)が9月5日に公開予定。

左:MEGUMI
1981年9月25日、岡山県出身。2001年デビュー。近年の主な出演作に映画『台風家族』(19)、『ひとよ』(19)、ドラマ「東京タワー」(24)、『映画 おいハンサム!!』(24)、『かくかくしかじか』(25)など。プロデューサーとしてドラマ「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」、映画『零落』(23)ほかを手掛ける。カフェ経営、美容本「キレイはこれでつくれます」の出版も。映画『蔵のある街』(25)が8月22日に公開予定。

まずはドラマが高視聴率をマークした時の反響や手応えを教えてください。

風間 周囲にいる多くの方から「見てるよ。面白いよ」と、確かによく声を掛けられました。実はドラマの放映開始前は、結構ドキドキしていたんです。本来のドラマは起承転結があり、主人公が明確に成長していったり、ちゃんと変化していくものが多い。でも本作は、ほぼドキュメンタリータッチと言うか、本当に日々の生活を撮っていくスタイルだったので、視聴者にどう捉えられるか少し不安でした。でも好評をいただけて本当に安心しました。

MEGUMI 同時に私はかなりたくさんの方々から、「うち(自分の家)を見てるようだ」とも言われたんです。“そんなに多くの方が、こんな風に日常生活を送っているのか”とドラマを通して知りました。しかも旦那さんも奥さんも、それぞれ1人で見て、互いに「うちと同じだな。うちも頑張ろう」と日々を送っている、と。それが意外でもあり、嬉しくもりましたね。

風間 実は世の中、みんな結構大変な状態の中で頑張っているんだな、と思わされました。

『劇場版 それでも俺は、妻としたい』ってこんな映画

🄫「それでも俺は、妻としたい」製作委員会

42歳の柳田豪太(風間俊介)は売れない脚本家で収入もなく、浮気する勇気も風俗に行くお金もない。どうにか妻のチカ(MEGUMI)に“今日こそさせて欲しい”とお願いするが、毎度けんもほろろで玉砕。仕事が忙しいチカにかわって不登校気味の息子(嶋田鉄太)の面倒を見ているとアピールするが、「当たり前だろうが!」と一蹴される。そんなある日、久々に仕事の依頼が舞い込んだことを餌に、どうにかセックスの約束を取り付けるが、いざその瞬間チカの逆鱗に触れる言動をとってしまい……。「したい」夫と「したくない」妻の攻防戦の結末は――。

チカに共感する女性はメチャクチャ多いと思いましたが、豪太に共感する男性ってどれくらいいるのかと、つい考えてしまいました。

風間 僕も全く同意見です。時々取材で「豪太との共通点を教えてください」と聞かれるのですが、こんなに困ったことはない(笑)! ただ、本作はほぼ実話、つまり監督=豪太なんですよね。言うまでもなく豪太って相当ダメダメですが、監督がこうして今ちゃんと仕事をされているので、本当に良かったなぁ……と心の底から思いながら(豪太を)演じていました(笑)。(*足立紳監督は、『百円の恋』『嘘八百』シリーズ、近年は朝ドラ『ブギウギ』などの脚本を手掛け、『雑魚どもよ、大志を抱け!』他を監督)

MEGUMI でも監督は現場で、「豪太は本当にいい男だな」って何度もおっしゃっていたんですよ!

風間 そうそう(爆笑)! すごいんですよ、こんなにもダメな豪太に対して、そう言えてしまう。

MEGUMI しかも「こんな幸せな嫁、いないだろう」とか「こんなにも愛してくれている」とか言うんですよ。豪太に対して監督は、狂気味を帯びた愛があるんですよ。面白いな、男の人って、そんな風に観るのかと驚きました。でも、もしかしたら視聴者の中にも、そんな風に観る方もいらっしゃるかもしれないですよね。

風間 でも僕、何度か現場で監督に確認したことがあって。「まさか本当にこんなこと(セリフにある)言ったんですか?」って。そうしたら「本当に言ったな」とおっしゃるので、本当にビックリしました。

“クズ祭り”状態の豪太を、風間さんがチャーミングに演じる

確かに劇中「それはクソ過ぎるだろ!」という豪太のセリフが一杯ありますよね(笑)。

MEGUMI 実際に、あんなことを妻に言うなんて、本当にスゴイ。

風間 また、そういうシーンで、監督がモニターを本当に嬉しそうに見ているんですよ。

MEGUMI そうそう! 私(チカ)が怒れば怒るほど監督が笑って見ているから、「どういうマインドしてるんだろう?」って(笑)。もはや理解を越えた何かだな、と思っていました。

またそんな時も風間さんの演技が絶妙で、妙に情けない感じを出すので、豪太にイラっとしながら、どこかちょっと可愛くて笑っちゃったりするんですよね。

MEGUMI そうなんですよ!

風間 本当? だったら良かったです!

MEGUMI 風間さんが演じた豪太には、憎み切れない感じが漂っているんですよ。きっと観ている方もそう思うんだろうな。どこか可愛らしいんですよ、全然悪人じゃなくて。それが風間さんならではの表現だな、と思って見ていました。

風間 これまで悪い役やダメな役、俗に“クズ”と言われる役も色々とやってきましたが、豪太は全然別種というか、次元が全く違いましたね。

MEGUMI クズのレベルが高いんですよ。予想をはるかに超えてくる。毎度、毎度、超えてくるから、「あ、こんなクズっぽいんだ」とか「こんな角度からのクズってあるんだ」とか、とにかく新しい“クズ”をたくさん見せていただきました。もう“クズ祭り”みたいな。

風間 “クズ”に対する新しい発見があるかもしれないね(笑)。

MEGUMI だから豪太に対して“何なのよっ!!”というリアクションさえ取れないというか。なんかもう(クズ過ぎて)声が出ないっていうか。それが毎度、やっていて本当に面白かったですね。それを風間さんが、毎度とてもチャーミングにやられていて、本当に素晴らしかったです。

“ダメ”vs“罵倒”その掛け合いの妙はどう生まれた?

チカがどんなに豪太を罵倒しても、可哀想にならないというか、噴き出してしまえるのも、お2人が生み出すケミストリーゆえだと思います。現場で互いに匙加減を探り合ったりしましたか。

MEGUMI それこそ受け身が上手いと格闘技やアクションが上手く回るのと同じで、風間さんの受けの演技のお陰です。豪太がシリアスに落ち込んでいってしまうと、ただの強い鬼嫁の「言葉の暴力」になってしまいますが、豪太が笑っていて、さらに素っ頓狂なことを言い返す、そのトーンにリアリティがあるので、それによって救われた部分がありますね。

風間 チカのキレっぷりがまた国宝クラスだからですよ。スパッと斬れ味が良すぎると血も出ない、みたいな。チカが綺麗にスパッと斬ってくれるから、治りも早い。よく取材で「あんなに罵声を浴びていて、撮影中は辛くなったか」と聞かれるのですが、それどころか本気で惚れ惚れしながら見ていました。まさに名刀です。

MEGUMI また、2人が輝いていた頃の回想シーンが時々挿入され、それがボディブロウのようにジワジワと効いていた、というのもありますよね。



ダメ夫を見限らない理由は!?

それにしても、あそこまでクズな夫を見捨てないことに感心しました。

MEGUMI チカは自分が豪太をこんなダメ夫にしちゃったと思っているんです。彼が絶好調だった時に「大好き」と自分から押して付き合い始めたけれど、豪太の才能を活かせなかった、という後悔があるんです。もう少し何か出来たんじゃないか、と。

風間 自分が豪太を甘やかしてしまった、とか思っていますよね。

MEGUMI 息子も小学校に登校できない状況だし、自分に別のやりようがあったのではないか、なにか出来たんじゃないか、という後悔がずっとあると感じました。豪太に酷いことを言うけれど、だから別れは選ばない。本当に嫌いだったら「無」になりますよね。でもチカは、滅茶苦茶ちゃんと豪太に向き合っている。きっと豪太のことを大好きとは言えないけれど、自分がヘタしただけで、この人はまだ行けるんじゃないか、という希望を持っているんだと思います。

風間 とはいえ、やっぱりチカは本当に偉いですよ!

お葬式からチカが出て行って豪太が追いかけるシーンは、ただ黙々と歩き続けるだけですが、とても印象に残っています。

風間 日が暮れそうだったので、実は別のシーンを撮る予定だったのを前倒しにして先に撮ったんです。だから色んな準備をせず、「すぐに回す(カメラを)よ~!」というエネルギーだけで撮りましたが、逆にそれが良かったんじゃないかな。

MEGUMI 確かにみんなの集中力がギュっと詰め込まれた状態でしたね。2人がやり合って言葉を応酬するシーンが多い中、2人の気持ちが錯綜しながらも言葉がないからこそ強い印象を残せた、何かを感じてもらえたのかもしれない。上手くいきましたね!

あの時、黙々と歩くチカの心中は、本当はワーッと叫びたいくらいですよね。

MEGUMI 怒りの炎の色的には、かなり濃かったですね。チカは豪太のお母さんに対して、元々苦手意識がある中で、あんな形でそれが現れてチカが爆発し、周りの親戚も何もかも嫌になっている状態で。それなのに自分を助けない豪太も嫌だし、誰かに何か言っても始まらない、絶望みたいな感覚でした。

風間 普通のドラマなら豪太が追いかけず、観ている人たちが「追いかけろよ!」というシーンですよね。だからそこで豪太がチカを追いかけるのも、完全に間違っている(笑)。追いかけたとて、状況を悪化させているだけという、その作り方が斬新だと思いました。

あり得ないほど辛かったシーン

一方で、お笑いのオーディションシーンは、観ていても辛かったです。

風間 あれは本当に大変でしたね。

MEGUMI 本当に辛かった!! だって(お笑いの)プロの方が目の前にいる状況で演じるわけですから。完全にあの時のチカと豪太の心情に重なっていて、私も演じるのが本気でイヤでした。ただ逆にシーンとしては、「やりたくない」と本気で思いながら演じたのが、すごく良く出たと思います。

豪太としては、風間さんはただもう冷や汗……という状態でしたか?

風間 正直な話、「うわぁ、MEGUMIさんスゲエ~。偉いな~」と思ったまま呆けた顔をしていました(笑)。しかも(あの場面を)何度も撮っているんです。それはもう、なかなか(厳しい状況)でしたよ。

MEGUMI なかなかでしたね~。でも風間さんが横で「よくやってますよ!」と応援して支えてくれたから、どうにか乗り越えられました。

風間 隣で「スゴイ。本当にスゴイよ!」と声を掛けていて(笑)。

MEGUMI セコンドからの痺れる激励をいただき、どうにか自分を奮い立たせて撮影をやり切りました。他のシーンも含めて、お互いに励まし合い、大変な撮影を乗り越えた現場でしたね。

風間 それが、本当にありがたかったです。

いい夫婦ってどんな夫婦!?

豪太とチカを演じたからこそ、夫婦にとって必要なもの、素敵な夫婦でいるための秘訣は何か見えてきましたか?

風間 夫婦って本当に千差万別。しかも人って相手によって変わるから、夫婦の形も互いによって変わっていく。豪太とチカは、傍から見たらトンデもないかもしれませんが、でも2人の形はコレだと思うんです。きっと本作を観て、“自分たちはコレじゃない。自分たちの形はどんなだろう”と考えるんじゃないかな。もしかしたら気づいていなかっただけで、今の形が皆さんの理想なのかもしれない。理想自体、人によって違いますからね。早い話、本作を観て「この人たちよりマシだな」と思ってくれたらいいかな(笑)。2人で試行錯誤してみても良し、「うわ、同じだ、イヤだ」と思って新たな1歩を踏み出しても良し。個人的には、そんな風に思っています。

MEGUMI 私は結婚って、やっぱり歩幅を合わせていく、お互いの努力の積み重ねの中にあるものだと思うんです。だからこの強烈な夫婦や家族を見て、「ここん家も頑張ってるな。じゃ、うちも頑張ってみよう」と思ってもらえたら1番いい。風間さんがおっしゃる通り、全家庭がそれぞれすべて違うし、言うなれば、どこのうちも変かもしれない。そういうことが分かるだけでも、多分楽になると思います。結婚を描く作品って、最終的には美しくまとまるものが多いですが、これはマジのやつを出してきた感じ(笑)。だからこそ「だよね」と安心してもらいたいし、こんな2人でも夫婦やってるなら、うちも頑張れる、そんな新しいリファレンスになる気がしますね。

風間 だって普通のドラマは、もう少し煌(きら)めきがありますからね。でもこの映画は、なかなか煌めかない。

MEGUMI 全く煌めかない。「安心してください。こんなもんですよ」って映画(笑)。

夫婦のセックスレスは解消できるのか!?

タイトル通り、豪太はどうしても妻とセックスがしたいわけですが、夫婦生活において、セックスって不可欠だと思いますか?

風間 本作は夫が妻を求めているのに出来ないという形ですが、変な話、その逆も世の中にはたくさんありますよね。ただ僕は、別にセックスレスであることに、互いに不満がないのなら別にそれでいいと思っています。必ずしもずっと(セックスを)していることが“仲良し”というわけでもないと思うので。ただ、どちらかが不満を持っていると、どこかに綻(ほころ)びが出来そうなので、何かいいきっかけがあるといいな、と思います。そのきっかけも、話し合いだけで(解決するもので)もないと思うんですよ。正直、性に関する問題って、話せば話すほどダメになる時もあると思いますし。そういう意味でも、この作品が夫婦生活の何かのきっかけになったらいいな、と思います。

MEGUMI いずれにしても、あまりシリアスになっちゃうとダメになると思います。だから真剣に話し合うというより、気軽な感じで(本音を)言い合えるといいですよね。誰がなんと言っても、したい人はしたいし、したくない人はしたくない。それはどうしようもないからこそ、そういう状況をいかに苦しまずに乗り越えていくか。時間が経てば人の気持ちも変わるものだし、そういうことをライトに話せないと、どんどん距離が広がってしまう。こと性の問題は話が重くなると、余計にネガティブな方に向かいそうで。「人生ギャグ化計画」というと変ですが、セックスに限らず、例えば教育方針にしても、出来るだけ面白くライトに努力してくことが、何事においても大事だと思います。とにかく言い方も、受ける側も、ライトにギャグ化していけたら、いい方向に行く気がしますね。

『劇場版 それでも俺は、妻としたい』

2025年/日本/129分/配給:東映ビデオ/©「それでも俺は、妻としたい」製作委員会
原作・脚本・監督:足立紳
出演:風間俊介 MEGUMI / 嶋田鉄太 吉本実憂 熊谷真実 近藤芳正


Staff Credit

撮影/菅原有希子

風間俊介:ヘア&メイク/清家いずみ スタイリスト/手塚陽介
MEGUMI:ヘア&メイク/エノモトマサノリ スタイリスト/ミク

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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