Vol. #
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この10年、その被害は増すばかりの特殊詐欺。その入り口となるのが電話機です。高齢者を詐欺から守ろうと2015年から防犯機能を搭載した電話機を作り続けているシャープが開催したプレス向けの「防犯電話機セミナー」の様子をお届けします。
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「アポ電」に出ないことが詐欺被害を防ぐ最大のポイント
シャープによれば、2024年3月現在の固定電話の回線契約数5000万(内、住宅用は3500万)で、携帯電話の2億2200万と比較すると1/4ほどになります。私自身も家の固定電話をずいぶん前になくしてしまい、各自の携帯電話(スマホ)だけで暮らしています。固定電話の購入者(利用者)はどんどん高齢化していて、それはつまり、特殊詐欺被害者の年齢層と固定電話購入者の年齢層とが一致するという結果にもなっているのですね。

特殊詐欺被害は過去10年で最悪を更新し、その被害は全国に及んでいるとのこと。被害の数だけでなく、その金額も急増しているといいますから、高齢の親御さんを持つ人は本当に心配になっていることでしょう。気になるその手口も巧妙化していて、詐欺のカモを探す「アポ電」が増加しているのも注意ポイント。アポ電とは、電話の相手に対して、家族構成や資産状況、利用金融機関などの個人情報を探るもので、自動音声アナウンスなどを利用したものが多いようです。
そのほかにも、総務省の職員を名乗ったり、警察官を名乗ったり、次の電話に転送されたりと、とにかく巧妙な仕掛けが張りめぐされているので、アポ電かもしれない見知らぬ番号の電話に出ないことが詐欺被害を防ぐ最大のポイントだと言います。
今は特殊詐欺の入り口もスマホや固定電話、メールやSNS、ウェブサイトのポップアップ表示と多様化していますが、約6割は固定電話だといいますから、対策をするにこしたことはありませんよね。
2015年から続けている「高齢者を詐欺から守る電話機づくり」
シャープが防犯電話機の第1弾モデルを投入したのは、2015年3月ですからちょうど10年前。警察や消費者庁、自治体などのヒアリングをもとに詐欺対策を強化したJD-AT80シリーズを発売したのです。

その機能としては、呼出音が鳴る前に相手に警告する「自動着信前警告」、出る前に名前を確認できる「自動聞いてから応答」など。鳴る前に相手に「この通話は防犯のために録音されます」と警告し、受け手が出る前に「あなたのお名前をおっしゃってください」と確認をするということを自動音声でしてくれるのですから心強いですよね。これは、「警察庁犯罪抑止対策本部」や「大阪府警察特殊詐欺対策室」のアドバイスを受けて開発した機能とのこと。さすがです。

それに加え、あやしい電話に出ないようにするために、ランプの色でお知らせする「あんしんフラッシュランプ」も。ナンバー・ディスプレイ契約が必要ではありますが、「鳴ったから慌てて何も確認しないで出てしまう」という心配がなく、目で見てわかるのはかなり安心感があります。

そのほかにも、受話器を取ったら自動で録音を開始する機能や、通話後に心配になったときにはワンタッチで登録先へ連絡できる「あんしん相談ボタン」など多岐にわたった配慮がされています。
受話器を持たないで電話が聞ける「てぶらスピーカーてもたん」
今回の防犯電話機セミナーでいちばん心に響いたのが、「てぶらスピーカーてもたん」の説明の中にあった『受話器で聞くと自分事になりやすく、だまされやすい』ということ。耳元(受話器)の会話はとても密接距離となり、距離感が親密な家族レベルになるため、相手により感情を揺さぶられてしまうのだそう。その結果が「オレオレ詐欺」のようなものに結びつきやすいのだそうです。

そこで生まれたのが「てぶらスピーカーてもたん」。スピーカーで聞くことで安心な距離感が生まれ、冷静に判断ができるのだといいます。2021年秋に発売の機種(JD-ATM1C)から採用された手ぶらスピーカーホン、今回初めて知ったのですが、防犯電話機も進化しているのですね。

自治体によっては防犯電話機の補助金制度もあるようなので、お住まいの自治体の取り組みをチェックしてみるのもよさそうです。
「緊急呼出ボタン」があれば見守り機能も万全
もう1つ、別売にはなりますが2017年から取り組みを始めているのが「緊急呼出ボタン」です。これは手のひらにちょうど収まるほどの機器で、自宅内で何か困ったことがあった場合、このボタンを押すと家じゅうの電話(固定電話や子機など)が鳴って在宅の家族を呼び、誰もいない(出ない)時には外線電話に発信して、最大3件登録可能な家族へ自動でつながるような仕組みになっています。


寝室やお風呂、トイレなどに設置したり、自宅内で高齢者が持ち歩くようにしておけば、もしもの緊急事態のときも安心ですよね。
スマートフォンAQUOSにも特殊詐欺対策がバッチリ!
ここまで読んでくださった方は、たぶん「防犯電話機=固定電話」と思われたかもしれませんね。でも、近年、携帯による特殊詐欺が急増しているのは周知の事実。スマートフォンでも特殊詐欺対策が急務だとして、シャープではスマートフォンAQUOSの最新機能で「あやしい電話対策」を強化しています。

あやしい電話に万が一出てしまったときには「不審な会話のお知らせ」機能がありますし、おかしいなと思って出たくないときには「伝言アシスタント」機能があるのです。
「不審な会話のお知らせ」とは、通話開始で自動録音を開始し、AIがその通話内容を解析します。これは実際の詐欺電話音声のデータベースを使用しているそうで、詐欺電話と判断すると画面上には『特殊詐欺などが疑われる不信な会話を検知しました』と表示され、ピピピと警告音がなって知らせてくれます。ここで「迷惑ストップボタン」を押せば、自動音声でお断りをしてくれるというわけ。これはすごいですよね。


電話に出ないようにしたいけれど、どんな内容なのかは知りたいというときには『代わりに聞いときます』ボタンが便利。伝言アシスタントがその内容を文字にしてくれるので、伝言を聞き返すことなく内容が把握でき、「要約表示」ボタンを押すことで要約表示までくれるのです。デバイス上の生成AIなのでプライバシーも安心とのこと。元々は留守番電話の進化版を開発したつもりだったそうですが、あやしい電話対策にもなり、評判は上々のようです。



最近は高齢者だけでなく若い世代でも特殊詐欺の被害にあうことが増えているので、こんなスマートフォンがあればとても心強いですよね。それにしても「代わりに聞いときます」ボタンとは、ちょっとクスッとしてしまうネーミングで、シャープらしいなあと思いました。
今回はプレス向けセミナーの内容をご紹介しましたが、防犯電話機の現状など少しでも参考になれば幸いです。

製品DATA
- ブランド:シャープ
- 商品名:防犯電話機 JD-ATM1
「神原サリーの愛しの家電語り」は、毎月2回更新。次回もお楽しみに!
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