”書けば自分を癒し、満たせる。”
【昼田祥子さんの書くことを続ける理由】新しい感動や発見が!「理想の自分にも近づけました」
2025.02.24
書いてわかった、自分のこと――話題の本の著者に聞く
私が“書く”ことを続ける理由
自分らしく思ったことを表現する……それを実践し、道を切り拓いた人の発見とは? あなただけの言葉を記す意味とヒントが、ここにあります。今回は、昼田祥子さんにインタビューしました。
INTERVIEW
書けば自分を癒し、満たせる。理想の自分にも近づけました
昼田祥子さん


昼田祥子さん
ファッションエディター
出版社勤務を経てフリーランスとなり、数々のファッション誌の現場に参加。「服捨て」で体得した手放す生き方をライフスタイルにも広げ、コラム執筆のほか、2023年からは瞑想インストラクターとしても活動中。
好きな服を着て、もっと素敵な人になりたい。なのに、なぜか毎日が息苦しい。葛藤をする中で、クローゼットにあふれかえる服を1枚、また1枚と処分し始め、ついに1000枚の服を手放したら人生が一変、生きづらさから解放された――奇跡のような実体験を著書にまとめたファッションエディターの昼田祥子さん。もともと文章を書くのは苦手だったという彼女は、長きにわたる「服捨て」を通して自身の葛藤と変身の記録を綴る中で、あらためて書くことの効能に気づかされたといいます。
「服を捨てられない自分と、その姿を『どうして捨てられないの?』と客観的に見ている自分とが頭の中で対話することで、自信がなく、足りない何かをおしゃれで埋めようと必死になって、いつの間にか服に支配されていた自分の姿が見えたんです。そして、捨て終えて『これって、別の場面でも応用できるんじゃないかな?』と気づいた。人間関係や日常生活で感じるモヤモヤを、『服捨て』と同じ方法で解決できるんじゃないかって」
書くたびに、自分の「トリセツ」ができていく
昼田さんが編み出した方法は、日々、ネガティブな感情が生まれるたびに「感情吐き出しノート」を書くこと。真っ白なページに向かい、まずは心に浮かぶ感情をすべて言葉にして書き出します。
「例えば、嫌な感じの人に出会ってしまったときには、『嫌だ』『ムカつく』『嫌い』など、思っていることをバーッと書き出す。誰にも見せないものなので、遠慮はいりません(笑)。そうしてから『どうした? 何で怒ってるの』『あの人のどこが嫌い?』と、もうひとりの客観的な自分と、やはり言葉を書き出しながら対話する。そうすると、『あの人、自分を大事にしてくれなかったから』『ラクをしてそうで腹が立つ』というふうに、何らかの理由が見えてくるんです。ああ、だからイライラしてたのかと」
すべての感情には理由がある。さらに、昼田さんはその先にある自分の「思い込み」までを言葉で解明します。
「服捨てをしているとき、『高い服はもったいなくて捨てられない』と思う私の心の奥を掘っていくと、『高価な服を身につけていることこそが私の価値である』という思い込みが見つかった。そこで、自分を縛っているその思い込みを『服が私の価値を決めるわけではない』という新しいものに書き換えたんです。頭の中でもできますが、文字にすると確実に外に出せている感がありますね」
服を捨ててクローゼットを整頓したのと同じく、これは「自分の中のわだかまりを捨て、常に心地いい状態にしておくためのプロセス」と昼田さん。
「心がザワつく、こうしたいけどできなくて苦しいなど、不快な感情が生まれたときにはすかさず。思い込みを書き換えないと、似た出来事に遭遇するたびにモヤモヤするんですよ。家だけでなく、仕事の合間にカフェなどに立ち寄って10分、15分でやることも。書いてスッキリしたら、そのページはいらないので破って捨てて、おしまい。簡単でしょう?」
実はこの手法、服を捨て終わった頃、昼田さんがプライベートである問題に向き合ったのをきっかけに、「外界の出来事に動揺しない自分になりたい」と始めた瞑想がもとになっているといいます。
「服を捨てる前は服に振り回されない私になりたいと思っていたし、これからは起こることにいちいち心を持っていかれない、そんな人間になりたくて……。大事なのは、書くことでどうなりたいか、ゴールを明確に設定すること。私の場合は、ラクになりたい、心地よさを取り戻して明日をきれいに迎えたいというイメージでした。今は、書くたびに自分の取り扱い説明書ができていくような安心感がありますね。『何があっても、吐き出しノートが受け止めてくれる』と思えば、ケーキを買ったり飲みに行ったりしなくていいし(笑)。自分を癒し、満たせる方法をやっと見つけられたんだなぁと」
取り繕う必要、なし。私は、いつだって私だから
感情を吐き出し、自分を縛る思い込みから自由になれたら、あとはもう上っていくだけ。昼田さんがもうひとつ書いている「日々の気づきのノート」には、仕事や生活の中で「これっていいな」「人に伝えたい」と感じたことや、心の中にふと生まれてきた思い、それに触発されて思いついた「次はこれをやろう」という目標がぎっしりと書き込まれています。
「吐き出しノートに書いている内容がネガティブなら、こちらにはニュートラルからポジティブなものを。書き留めたことはコラムの原稿やセミナーなどでお話しするときのネタにもなりますね。服捨てと同じで、心の中にため込んだものを排出してできたスペースに、新しい感動や発見がどんどん入ってくる感じ」
自分のマイナスもプラスも、すべてをさらけ出せる2つのノートは「心のサードプレイス」だと、昼田さん。そこでは、自分らしさすら意識しないといいます。
「自分らしく書こう、と考えたことはないかも……らしくありたいと思う時点で、どこか他人と比べたり、差別化されることを望んでいたりする気がするので。書くことは自分を大事にするツールだから、そこには本音しかいらないし、いいことを書いたり、うまく書く必要もない。自分らしさって、本当は探さなくてもいいものなんじゃないでしょうか」
どんなことをどうやって書いてますか?

1
書き出しては捨てる! 感情吐き出しノート
このネガティブな思いはどこから来るのだろう? 浮かぶがままに言葉を吐き出し、チャートなども使いながら心を整理する。紙の手触りや書いている感触が好きなので、入力はアナログ一辺倒。書いては破って捨てるため「こちらはノート自体にはまったくこだわりなし。100円ショップの落書き帳を愛用してます」
2
発見やアイデアは、お気に入りの特別なノートに

対照的に「日々の気づきのノート」は、好きな紙質の市販のノートに名前のロゴを入れるなど丁寧に装丁をほどこしたものを愛用。心を動かした言葉や浮かんだアイデアは右ページ、これからやりたいことを左ページに。「分けて記入すると、後で読み返しやすいですよ」

帰りぎわ、「そうそう……」と昼田さんがバッグから取り出したのは、一年に一度作る分厚い「ビジョンノート」。気づきのノートの左ページの目標をビジュアル付きにした未来予想図で、ここに描かれた事柄が次々と実現しているという
まだまだこれも知りたい!
三日坊主にならないためには?
何も感じない日はないはず。発見を習慣化して
何を書けばいいかわからないときは?
心のどこかで「書いても無駄」と決めつけていませんか? まず、その思い込みを捨てましょう
書いたことで振り返りますか?
振り返ることで、自分の世界観が見えてきます
書くことでどんないいことが?
心の中にため込んだものを排出することで、新しい感動や発見が入ってきます
Staff Credit
撮影/砂原 文 取材・原文/大谷道子
こちらは2025年LEE3月号(2/7発売)「なりたい自分をつくる”書く”力」に掲載の記事です。
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