敷金ゼロの物件が増えている

年が明けて、いよいよ引っ越しシーズン。まさに部屋物件探しの真っ最中という人もいそうです。
賃貸契約の際に必要となるのが、初期費用である「敷金・礼金」。かつてはいずれも家賃の2ケ月分相当が必要と、かなりの金額にのぼったものですが、最近では事情が変わってきているのだとか。
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」が、2024年5月に公開したレポートによると、ここ数年、敷金ゼロ物件の割合が増えているというのです。
敷金は家賃の不払い時などに備えて徴収されるお金。原則、賃貸契約終了時には返金されますが、借りていた部屋の「原状回復」にも使われます。
貸主にとって必要なお金のはずなのに、敷金を取らないとはどういうことなのでしょう。
とりわけ敷金ゼロ物件は賃料が安い物件で増えているそうで、賃料10万円未満の物件では2023年には53.2%と半数以上もあったとか。
賃料20万円以上の家賃高めの物件でも、2018年は1.52ヶ月分だったのに対し、2023年では1.18ヶ月分と減少しているといいます。
原状回復用の「クリーニング代」は基準があいまい

一見、借り手にとってはいいことのように感じますが、そうとも言い切れません。
その背景にあるのは「敷金トラブル」だというのです。
国民生活センターによると、借りた側が退去の際ハウスクリーニングやクロス張替え等の原状回復費用となって返金されない、敷金を上回る金額を請求されたという相談が増加しており、賃貸住宅に関する相談のうち約4割を占めているといいます。
物件の貸し手にとって、今や敷金は厄介なお金になっているのかもしれません。そのため、敷金ではなく、”クリーニング代”として賃貸物件退去時の費用を求めるケースが急増しているのだそう。
しかし、クリーニング代には敷金のような基準がなく、場合によっては敷金よりも高額になりかねません。
本来「原状回復の義務」とは、借主が故意や過失によって生じたキズや汚れなどを元に戻すことを指すもの。しかし、借主の責任によるものではない損傷や、普通に使っていて生じた損耗(通常損耗)、経年変化まで費用を請求されたというケースが増え、トラブルになっているのだとか。
敷金ゼロ物件が増えて、借り手の負担が減って借りやすくなったのはメリットかもしれませんが、退去時に「こんなはずではなかった…」ということがないように、借りる前にはクリーニング代を含め契約内容をじっくり確認するようにしましょう。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。
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